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俺たちの青春に明るさはなかった  作者: あるば
住良木祭
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住良木高校文化祭(6)

 凌の足が止まった。目の前にあったのは灰色の磨りガラス扉と、その上に『物理準備室』の文字。図書準備室と何が違うんだよ。いや違うけど、結局引きこもるんじゃねぇか。

「入れない、、、わね」

疲れた顔でそう口にする。

そりゃそうだ、そのための鍵だろ。ましてや文化祭なんて部外者いらっしゃいだぞ。実験道具とか高いんだから。盗む人とか出てくるでしょ?······全国の文化祭回ろっかな。

「諦めねぇな」

人混みと階段の障害物競争をしてきたんだ。何より俺も疲れた。体育祭じゃないよね?

「あら、、、まだ、、、いたのね」

そんな息切らして言われても皮肉になってねぇよ。

「そんなに休みたいならクラス展示とか行けばいいだろ。人気ねぇだろああいうの」

こいつがこれで納得するとは思えんが気休め程度に提案してみる。

「受付で約2人、貴方みたいなすることのないぼっちが約3人ほど居るわ。人気がないというのは貴方みたいなぼっちには利用価値が有るでしょう?」

こいつ......わかってんな。


 美術部展示。クラス展示とは違い受付が居ない為、ここが選ばれた。しかし凌は、『誰かがいたら勘違いされるでしょう。私の3メートル以内に近づかないようにして入ってきてちょうだい』などと警戒心強めにおっしゃってきたので、言うとおりにした。美術室には誰一人もおらず、凌は1番奥の作品を見ていた。

「でけぇー」

そう言うと凌は『あなたまるで何も分かっていないわねちょっと黙っててくれるかしら』的な冷たい視線を向けてきたので黙ることにした。しかし絵を見ている時の凌はとても見ていられなかった。いまにも泣き出しそうな。そんな顔だった。

 何分か経過して、凌の顔が落ち着いてきたのでまた話しかけてみる。大丈夫かなぁ、怒られたりしないかなぁ。

「水か?これ。泡みたいなのあるけど」

そう言ってから題名を見ると『夜明けの水中』と書かれていた。シンプルでいい名前だと思う。分かりやすいし。

「俺には『深海』にしか見えんが」

俺に見えるのは、黒と藍色が混ざった薄暗い海と、黒と藍色が混ざった薄暗い空と、それを分ける海面だけだった

「奇遇ね、私もよ。でも説明読んでいないでしょう」

そう言って凌は、美術室入り口にあったという1枚の紙を渡してきた。

「えーと、『日光が当たるとちりばめられガラスが光ってまるで今夜が明けたかのような現象が起きます。なので先生に頼んで、日が一番当たる奥に置かせていただきました。朝日方向なので8時あたりから光ります。自信作なので是非ご覧ください!』か。どおりで見えない訳だ」

「······見たかった?」

 凌はか細い声でそう聞いてきたので、返答に困る。だが、凌のせいで見れない訳ではない。むしろ凌は約10年、朝日を見ていないのだ。ここで『見たい』などと無神経に答えれば、彼女はかなり傷つくだろう。なので、

「この暗闇も、悪くないだろ」

今は格好をつけておく。

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