兄義妹
「ただいまー」
家に帰ってきた。妹の「おかえり」の声はない。いつもどおりのことだし、俺も挨拶なんてと思った時期があったのでせめない。彼女には彼女なりの理由があるのだ。むしろ最近、ちょっとずつ学校のことなどを話してくれるようになった。授業参観の話とか、面談とか、いや確かに学校の話だけどなんかちがくない?「今日友達がさー」とか、「カラオケ行ってくる」とか、そう言うのじゃないの?知らないけど。
ドンッ ドン。
ドアを叩いた。
「音琴いるか?晩飯の時間だ。寝てるなら起きろ」
ドアが開いた。
「おけおけ」
目をこすっている、これが妹だ。最初に言っておこう、引きこもりではない。
青みがかった白髪で、『本当に妹かよ』などとよく聞かれるが、まあ義理になる。頭のてっぺんの寝癖に付いてるアジサイの花の髪飾りは気にするな。季節ごとに変わる。
「今日はカレーだ」
「サラダは?」
か細い声で訪ねてくる。
「あるぞ、先座ってろ」
そうして妹は、ダイニングのテーブルへ向かっていった。
カレーの辛さに汗をかきながら、こんな話をする。
「授業参観だけど、いつだったっけ?」
妹が手を止めずに、首を横にふる。恐らく「覚えてない」という意味だろう。
「わかった。暇だし行くわ」
「面倒なら別に来なくていい」
「面倒だが、そうもいかんのだよ。親御さんとか、色々な」
まあ、妹の学校での姿も見たいという9割の理由もある。
「わかった。でも、絶対に学校では私にあわせてね」
どういう意味だよ。普段から合ってないのに合わせようがねえだろ。
カレーを食べ進めるが、会話はあまり進まない。あれだな。沈黙の気まずさは結婚式で元カノが乗り込んできたのと同じくらいだな。少なくとも俺の中では。
「なっ、なあ、妹よ人間が光を目で感じなくなることってあるか?それも特定の」
まずい、言っちゃダメだったかな?ま、凌のことは言わないからいいか。
「目がおかしいなら救急車を呼ぼうか?」
どこでそんな悪口を覚えた?
「いやちがくて、、、何となくそう思っただけ」
ふーん。と何かわかったような顔をする。
「目じゃなくて脳かもね」
あれ、妹って天才タイプなの?まあいい。話を進めよう。
「どういうことだ?」
「私は兄さんのお助けキャラじゃないから」
そう言って妹は立ち上がり、食器をかたずける。
「ごちそうさま」
部屋に戻ってしまった。
羽後も部屋に戻り、ベッドに座った。少しだけ睡眠を取るつもりだったが、つい寝入ってしまい、起きたのは十時半だった。風呂に入ろうとドアを出て、右に曲がる。そこで、
「トュルル、」
電話がなった、家の電話だ。この電話にかけてくるのは限られている。夜中にかかってくる電話はラブコメの場合、「ごめん寝てた?」から始まる典型的なパターン。しかし俺はそんなものが現実で起こりうるとは思えない。なのでここは、
「親か」
と呟いておく。
「こんにちは。羽後くん?」
「はい。そうですけど、どちら様ですか?」
「実のでは無いにしても、親の声を忘れるなんて、、、」
この声は義母か。
「そんな前降りはいいから、何です?」
「音琴との生活にも慣れたかい?」
「まあ、なんとか」
「仲良くはできてます」
「そうかそうか、それは何よりだよ。では本題に、そろそろ羽後くんにも話しておこうと思ってね」
「となりのタンスの一番上の引き出しの裏にある封筒野中を見てくれるかしら?」
えっと、このたんすの一番上ね
肩で受話器を挟みながら、引き出しを探った。
「茶色のやつですか?張り付いてる」
「そうそうそれ、驚かないでね」
封筒の中には一枚の紙が入っていた。それを見ると
「な、なんですかこれ!」
羽後は思わず、後ろに転んでしまった。
そこには小さい頃の音琴が写っていた。ただ、
「なんで、なんで傷とアザだらけなんですか!」
傷とアザだらけでうつむいていた。
その時外では大雨が降っていた。
ありがとうございました。こめんとなどなどうけつけておる
きょーのめーげん
「女子中学生なんてこんなもんだよ、互いが互いの事嫌ってて、そのくせおっきいイベントがあったら仲良くなったふりをしあう。だから、女子中学生どうしが仲良くするのはじゃんけんで勝つより簡単なんだよ。でも、高校生になったらみんなちょっと大人になる。心から仲のいい友達ができる。互いが互いの事探らなくなる。根拠はいまだ不明」
by 戸羽 音琴
「お前はあれだな。頭のネジ締めすぎな」
by 戸羽 羽後




