文化祭の憂鬱はもう始まっていた
クラスの集中が俺に集まる。ここはあまり反論出来そうにない立場にある。というのも、先程まで会話に参加していなかった奴が急に奇声をあげ、更には「何でもないです」等という、人生の何秒かを損させるという行為まで働く。勿論、冷静に考えればそんな人生の何秒かなんて、悪魔の取引で、「ちょっと壱万円あげるから、お前の人生数秒くれ」などと言われて、くれてやってもいい秒数だ。しかし、時は文化祭準備。一生の内の数秒と、一大イベントの内の数秒では重みが違う。まだ準備ではないかとそう言う奴も居るが陰キャ諸君。青春を謳歌しているものからすると、『文化祭は準備が楽しい』らしい。
「委員長ーセルフでよくね?」
それは誰しもが思っているだろう。しかし、委員長がわざわざ『受付を二人配置しろ』などというからにはそれ相応の理由があるからなのだ。
「決定したことなんだ。仕方がないよ」
委員長がそう言ってしまえば、誰も反論できまい。
「じゃあ誰が受付をするかだけど、交代でいいよね?」
委員長の提案には、反論できまい。別に委員長がクラスカースト的に上な訳ではなく、ここで、「これがいいと思いまーす」なんて言い出せる奴はそういない。普段目立ちたい陽キャの方々も、こういう場面で目立ちたい訳じゃないだろう。
「私、交代制だとサボる人出てくると思いまーす」
何故かクラスの視線がまたこちらに集中する。なに?俺人気者なの?高い声でハハッって言えばいいの?いやしかし、しかしだよ?元々文化祭なんて、楽しめた試しが無いじゃないか。それなら誰も来ない展示の受付で一人ボーッとしていればいいだけの話。交代制になると次の人呼ぶだの面倒だし。
「やりたい人とか、いないよね?」
委員長が困っていた。俺は自分から「やりたいです」なんて言えない。どこのクラスに自分から「一生受付やってます!」なんて妙なプライド持った奴がいるんだ。お前はMなのか?と少し心配されるぞ。
「くじ引きで決めましょう」
委員長が提案するのにかかった時間は1秒もなかったという。
しかし、くじ引きとなると完全に運だ。まあ引けなかったら引けなかったで、一人で落ち着けるスペースを当日に見つけるからそれはそれで良いのだが、何があるか分からない文化祭。初めから落ち着けるスペースを取っておくというのは、当日いかに楽にできるかという陰キャのプライドにかかっている。俺は陰キャに関してはプライドが高い。




