紅茶の味も女心も俺にはわからない
午後の紅茶を邪魔される訳にもいかないが、俺だって人間だ。知り合いの悩みくらい聞いてやらんでもない。しかしいつも一人だったところを異性と過ごすというのは健全な陰キャ男子高校生には辛いものが······
と、言うとでも。俺はこいつと、加賀美と毎日登校しているのだ。もうあの二人の女子限定で免疫はついたはず。
そんなことを考えつつ、思い出す。登下校の際、二人の数メートル後ろを歩いているだけだという事を。そのお陰で途中、はぐれることさえ多々あるということを。
「ちょっと、相談というか、聞きたいこと」
と言って東雲は顔を俺の耳に近づけてくる。
ええ!何?耳打ち?それはだから陰キャ男子高校生には辛いものが、その前に周りの視線が気になってしょうがない。
俺が童貞的発想をしているにも関わらず、冷静に東雲はその内容を告げる。
その内容は、『二人を別れさせたい』という、意外すぎる内容だった。何故だかは分からないが、1つだけ言える。
「東雲、それは俺には出来ない」
という結論。そして、
「まあ糸佳徒なら大丈夫だろ」
という無責任。
「そういう問題じゃ」
珍しく東雲が他人を意識しているようだ。表情はいつも通りだが。
「まあ、安心しろって」
もし御風先輩が本気の恋だった場合、それを邪魔する権利は俺には無いが、東雲ならあるのかもしれん。御風先輩の『学校一の嫌われものに優しく接する私』というのもまだ決定的では無いしな。
午後の紅茶を楽しんだ後、教室に戻る途中廊下で壁を見て突っ立っている生徒を見かける。
「よう、木原」
今思えば、自分から女子に話しかけれるようになったのもあいつらのおかげかもしれん。感謝はしていない。俺の努力だ。
「ああ、戸羽君」
手をふる木原。少し顔を赤くする俺。
「何見てたんだ?」
冷静モード。閑話休題ならぬ感情休日
「これ」
そう言い、壁の貼り紙を差す。
「ああ。もうすぐか、文化祭」
楽しみでも何でもない。
文化祭なんて一部が盛り上がってそれで終わりのイベント。それに、盛り上がれない我々も雑用に参加せねばならないとなると、ノーリターン労働ではないか。まあ文化祭に限ったことではないが。
「木原は楽しみなのか?」
嫌みっぽく聞いてみた。
「うーん、まあ楽しみかな。て言うか楽しみじゃないの?」
文化祭自体別に何でもない。だが、前日までの準備だったり、陽キャの盛り上がり様を見ていると『俺はコイツらのために働いているのか』などという汚い考えが自然と浮かんでくる。
今思うと、『二人を別れさせたい』の前には、『文化祭の前までに』が着いていたのかもしれない。




