ある夏の昼の追憶
夏が嫌いだった。理由もなく嫌いだった。俺は毎年夏の始まりにそんなことを考えるのだが、今年は少し違った。高校二年の夏。青春なんて滅べばいいと考えていた俺も、少しだけ青春への興味と言うものが芽生えたのだ。むしろ、仲のいい友達と林間学校イベントやプールイベント。これを青春的得点として見ないのはそれこそ陰キャの敵に該当してしまうだろう。「いや俺全然青春してないよー」とか言うリア充に中指を立て続けていた俺だが、俺もそのリア充になって夏を楽しんでいたのかもしれない。いや待て、結論を出すのは義務ではないし、「戸羽羽後は陽キャリア充だと思いますか?」と聞かれたら、「いいえ」と今でも答えるだろう。俺は焦っているのか?こんな俺にも青春という二文字への憧れは存在するのか?。そんな自問無答を繰り返す夏の終わりだった。
市民プールのバイトは昨日で終了し、給料も貰った。直下は
「夏の終わりに凰磨たちとキャンプでもしようかと。え、ああ。勿論男だけだよ男だけ」
「いや、どうでもいいだろ」
という会話があったので、今頃山だろう。よほど林間学校が楽しかったのか、よくもまあ同じ夏に二度もキャンプなんて出来るな。そう思った。
「兄さんおはよー」
妹が珍しく休みの日の朝に起きてきた。
「おはよ。早いな、用事か?」
そう訪ねると、目を擦り終え、向日葵の髪飾りを装着し、口をひらく。
「この夏、兄さん忙しかったから一緒に過ごせるのは今日だけ。ということで今からその金で花火買ってきて」
話の前と後で違いが生まれているのは気のせいだろうか。
「おい、妹よ。一緒に過ごしたいならおつかいを頼まなくてもいいんじゃないか?」
「一袋じゃ少ないから、何袋か買ってきて」
「俺から発せられる空気振動は微弱なのか。まあいい。コンビニに売ってるかなぁ」
すると、今度は上手く伝わったようで。
「コンビニには売ってない。いつも登校に使ってるバス停までいった先に、スーパーがあるから、そこで買うと良い」
にしても。
「それなりに買ったな。5袋くらい?バイト代が······」
と言いつつも、まだそれなりに残ってはいる。
「あ、」
かなり聞き慣れた声が後方から。
「加賀美、木原。と、谷崎」
「面白い子じゃん!!何いっぱい持ってるの?」
テンション高い加賀美の友人。谷崎花三。そんなことより。え、何?三人知り合ったの?
「木原とは、スイミングスクールが一緒だったんだー。小学校の頃だけど」
「つまり知り合いだったと」
「私は凌ちゃんと花三ちゃんが知り合いだったことに驚いたなー」
と、木原が笑顔で話す。
俺もその笑顔に驚いたなー。
「世間って、本当に狭いのね」
それは共感せざるを得ない。
「何、皆買い出し?朝早くから」
「皆偶然そこで会って、私と水菜は買い出しで······」
「私は······散歩よ」
こんなに朝早くからですか?と皆思ったが、ここはスルーしよう。彼女の事情だろうからわざわざ触れなくてもいい。
「戸羽君こそ、その袋は?」
「妹におつかいを頼まれてな」
「そ、そうなのね」
なにか隠している。触れ······ないでおこう。
「私と水菜、こっちだから。というか隣のマンションだから。じゃあ」
「また今度」
と言って二人は横断歩道を渡る。
「さようなら」
「じゃあな」
「「······」」
沈黙は気まずい。
「じゃあ俺もこれで、」
そうこの場から立ち去ろうとする。
「ちょ、ちょっと」
え?
「何だ?」
「そこの公園。寄ってかない?」




