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俺たちの青春に明るさはなかった  作者: あるば
糸佳徒相馬の夏休み
58/80

花火の残灯。。。

 「ふぅ」

暑い夏が続いている。そのせいで僕はこの夏、何年ぶりかというくらいになる努力の汗をながしている。それもかなりの労働量の。まるで土木作業だ。

「おい坊主、あっちから4本持ってきてくれ」

「はぁい」

よっ、と立ち上がり、向こうに集まっている鉄パイプの山へ向かう。どうやら休憩所になるらしい。

「手伝う」

と、東雲がやって来た。こいつは朝からここにいるんだよな、僕より労働者の位が高いのか。それならば、

「ありがとうございます」

感謝の気持ちである。

「何で敬語」

無表情でつっこまれると、怒ってるみたいだな。

「まあ、その、あれです。気にしない方が身のためってやつです」

にこやかスマイルで返しておいた。勿論ひきつっているが、しっかりとした苦笑いだ。

「私より笑顔下手だね」

「は?」

それは、全力のrealy?だった。

否定ではないが、疑問を持った。笑顔が下手と言われた事については同意件だが、僕はお前より下手じゃない。

すると東雲は少しうつむき、

「持ってこ」

と言って鉄パイプ2本を担ぐ。

「はぁ」

対して僕はため息という幸福を吐き出す作業を済ませてから、鉄パイプを担ぐ。

「ため息すると死ぬわよ」

ため息はそんな儀式ではない。

「私だって、昔は笑えた」


 休憩所が出来上がり、周りを見渡すとほとんどの屋台が出来上がっていた。

「準備なら昨日済ませておいた方が良かったんじゃ」

これをお偉いさんの前。準備を取り締まる桐下父親の前で口に出す僕もなかなか肝が座っていると思うのだが。まあ僕は小さい頃近所から『あそこの子供は肝が座っている』と呼ばれていた程だし問題ない。

「ああ。祭りは2日間あるからな。花火は今夜だけだが」

色々大変そうだな。

「ほとんどの屋台が2日間とも夜しか開かないから大丈夫だし」

何故2日間あるのかが謎だな。


 日も暮れ、提灯や屋台に明かりが灯ってきた。僕は奥に神社があるというので向かっている。山を登るということもあり、途中人に会うことはなかった。

「あ、」

登り終えた所にベンチがあり、人が座っていた。

「東雲」

東雲だった。表情はいつもと変わらず、笑っていない。

「お疲れ様です」

もう敬語はいいや。

「うん。おつかれ」

その彼女の声は、遠くで鳴く蝉の声にも劣るような弱々しい声だった。頭上には淡い月が輝いており、東雲はそれに見とれているようだった。

「こんなところで何をしてるんだ」

思いっきり自分に跳ね返って来る言葉だが、返ってこないことを祈る。

「小さい頃の思い出の場所なの。そっちこそ1人で」

カウンターッ

「ネットが繋がる場所を探していたんだよ」

唐突に思い付いた言葉がこれだった。僕が普段外に出歩いてする事と言えばWi-Fi環境を見つけることだ。

「神社まで?」

「今の神社は無線LANがあるからな」

「······」

流石に無理があったか。


「小さい頃、ここら辺に住んでたのか?」

思い出の場所と言うくらいだし、この神社には通っていたのだろう。

「うん。桐下家に小学校3年生くらいから」

へぇ。

「その頃辺りから笑う事を忘れていたわ」

「······」

その辺りに東雲に何があったのか。彼女に聞かなくても解っていた。ただ、それを確かめるのは流石に気が引ける。何故ならば、彼女の心に傷を負わせてしまうようなあまりにも残酷な過去だから。

「笑顔なんて、出来なくてもいいと思うぞ」

彼女がこちらを向く。

「少なくとも僕が見てきた中での笑顔は、ほとんどが愛想笑いだった」

「笑顔だけじゃない。泣いたり、怒ったり、喜んだりも出来ないの」

さっきよりも声が大きくなる。その主張は自分に言い聞かせているようでもあった。

「むしろこの世の中には、泣きたくない人や怒ってしまう自分が嫌な人も居るくらいだ」

こんなことが言いたいんじゃない。周りと比較しても彼女は異常だ。それを隠すようじゃ、彼女を否定し、彼女に嘘を憑くことになる。

「······いや、違うな。そうではなくて、僕が言いたいのは」

彼女自身の事で、

「心は笑えてると思うぞ」

「······」

「お前は笑えてる。冗談も一応通じるし、顔に出なくても行動や言葉にはででる」

「だからさ、僕が伝えたいのは······」

ヒューーーーンと音が遠くの空で鳴り響き、


ドンッ


黒い空に、大きな花が描かれる。

次、また次と、色鮮やかな花が咲いては消えてゆく。

「綺麗······」

思わず口に出したのは東雲だった。

対して僕は労働と先程の演説による疲れと恥ずかしさが混ざり、

「あぁぁー」

倒れてしまった。どうやら目眩らしい。

「大丈夫!?」

心配なのか、声を掛けてくれる。

「ごめん。僕の顔を見ないでくれ、暑くて顔が赤くなってるから」

勿論、暑さなどではなく何分か前の自分への怒りと恥ずかしさである。

「うん」

東雲は倒れる僕を無視して花火を見る。僕にはその横顔が心なしか笑っているように見えた。

「ありがとね」

こちらを向き、感謝を述べるのだった。

その顔は、やはり無表情だったが普通に可愛く、花火の灯りに照らされ、それが原因なのかわからないがいつもより少し子供っぽく見えた。

「何もしてない」


ありがとうございました。


クリスマスなんて、だいっきらいだーーーーーー

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