花火の残灯。
楽だ。
宿に残り働いている僕はそう感じた。いや、今の時間体だと『向こう』も楽だろうな。
『向こう』というのは、祭りの会場まで行って屋台の手伝いをするチーム。今は東雲と加賀美が行っている。
僕はというと、特になにもしていない。宿の仕事といっても、素人の僕が色々出来るわけでもないので、廊下の乾拭きと、窓の掃除をして縁側で一旦休憩している。
風が吹くと風鈴が鳴り、わかっていたにしてもやはり『まだ日本にこんなところがあったのだな』と自然に思ってしまう。更に言えば、『風鈴の音を聴くと涼しく感じる』という日本の文化は感じられなかった。これは僕がおかしいのだろうか。まあ勘違いというのはとても危険で、このように『風鈴の音を聴くと涼しく感じる』というと、本当に体温が下がるという結果も出ている。
「何サボってるんですか?」
おっと、しっかりもののお姉さんキャラの登場だ。
「さぼっているのではなく、寝転がりながら縁側を掃除しているんだ」
このくらいの嘘を、この年の女の子は見抜けるのだろうか、ちょっとした興味だ。
「わかった。じゃあずっと縁側に這いつくばってなさい」
「ごめんなさい」
一体どこでそんな言葉覚えたの?誰ようちの子にこんなこと教えたの。なんて話はよく聞く世間話オチだが、答えは『友達』『テレビ』『ネットの人』くらいだろう。『お母さんがこの前言ってたよ』なんてオチもありそうだな。まて、それだと認知症オチで医療番組だ。
「とりあえず、糸佳徒さんはお兄ちゃんと一緒に中庭の手入れです」
中庭か。まあ一回見たが、それほど汚いというわけでもなかったし、箒で落ち葉をささっと。
「あ、相馬君。じゃあ軍手つけて」
和馬に軍手を渡される。とても年期がはいっており、所々破れていた。それを手に取り、穴が空いている部分を手の甲に向けはめた。
「それから、落ち葉はあそこに集めて」
といって、和馬は向こうの落ち葉の山を指差す。
「木とかの間に挟まってる落ち葉も全部拾ってくれ」
なるほど。
「じゃあ。始めて」
「え?」
「あのー箒とかは?」
箒がないと、非効率適に思えるが。
「箒だと庭を傷つけちゃうからね。この庭は祖父の代からなんだけど、あまり傷つけたくないんだ」
まあ、そうだな。芝だし。熊手も怖いよな。うん。...いや、めんどくせー。熊手でいいだろ。芝も大丈夫だって。
まあ、ここなりの作法というか、一つ一つ丁寧に。みたいなのがあるのだろう。否定はしない。馬鹿だとは思うけど。
「あっちー」
「まあ慣れれば苦じゃないよ」
この『慣れ』というのがわからない。引きこもりの僕に外の掃除の慣れを必要とされても困る。
······あいつら、忙しいかな。




