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俺たちの青春に明るさはなかった  作者: あるば
糸佳徒相馬の夏休み
52/80

彼女、東雲成惠は笑わない

東雲成惠が笑ったところを、見たことがない。

 田舎。もうどこまで来たかわからないほど、周りは山だらけだった。僕としては人が多い都会よりも、人が少なくて穏やかな田舎の方が好きではあった。が、電車は二時間に一本。スマホは圏外。おまけに駅から歩いて一時間半という低スペック旅は、この夏引きこもっていた僕にとって地獄だった。まだまだ若い女子高生2人は、そこの自販機の隣のベンチに座ってお茶タイムだ。······ベンチ壊れそうだな。

「おい、東雲。ここに何の用で来たんだ?」

花火大会なら一人で良いだろ。

「祭り中の店の手伝い」

なるほど······おい、今手伝いって言ったか?

「東雲さん。あなた一人暮らしだったわよね?親戚か何かかしら?」

そこじゃないよ加賀美!手伝いって聞いてないぞ!

「うん。叔父さんの宿。あれ、旅館?」

「どっちでもいいし、僕手伝いって聞いてないんだが」

「あら、戸羽君から聞いてない?」

アイツだったか。帰ったらただじゃおかねえ。あいつのスマホのパスワード破って、やりこんでそうなゲームアプリ消してやる。

「バイト代は、旅費と、宿代とご飯で0だよ」

しかもタダ働きじゃねぇか。


 「わざわざ遠いところからどうも」

「おねえちゃんおかえりー」

「おねえちゃん元気だった?」

「やあ、久しぶり」

一通り向こうの自己紹介が終わった。叔父は出掛けていて、今は叔母の桐下(きりもと)和恵(かずえ)さん、成惠のいとこにあたる末っ子の和美。その姉の沙惠。長男の和也と、三兄弟だ。

「叔母さん、久しぶり。みんな元気そう。こちらは、」

「加賀美凌です。東雲さんとは、と、友達です」

おお、いつの間にこいつ友達作った。戸羽、負けてるぞ。

「糸佳徒相馬です。よろしくお願いします」

「まあ、ご丁寧に。さあさあ上がって。疲れてるでしょう」

しっかりとした、これは旅館だな。

「温泉ありますよ」

おお!


部屋に入り、荷物を投げる。中から洗面用具を取りだし、

「おんせんへちょっこー」

襖を開け、廊下へ出る。

 さあ、疲れを癒そう。なにせここ1ヶ月、動いてなかったからな。急に身体に負担をかけてしまった。

「そういや、明日は働くのか」

何てことを、歩きながら考えていると、

「あ、今から温泉かい?」

わ、びっくりしたー。急に話しかけんなよ、コミュ症なんだから。

「ええ、そうですが」

「君、何歳?俺18」

「高二です。高三ですか」

「まあ一応先輩だけど、敬語は無しで。俺も今から温泉だから案内するよ」

先輩だったのか。

「ありがとうございます」


 廊下をひたすら歩き、階段を降りる。あれ、ここ二階だったっけ?

「温泉は、一度庭に出た方が速いんだ」

庭?

更に歩き、ガラスでできたドアを開ける。

「おお、凄いな」

そこにはそのままの意味の庭があった。池と、木と、石。

上を見ると、

「なるほど、傾斜になっていたのか」

玄関は二階にあり、傾斜を降りる階段で一階に行けるらしい。

「温泉は庭を横切った向こうだよ」

あの建物か。




 ありがとうございました。最近評価して下さる方が増えてきたので、生まれて初めて感謝の気持ちが芽生えました。(大嘘)

 感謝しているのは本当ですよ//


「ありがとうございます」

       by作者


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