ラブコメっぽい水着回だったのに
「やあ。元気?」
こいつは、夏休みが始まった頃に見た顔だ。
午後、俺と直下は休憩に入っていた。といっても45分だけだが。休憩時間は1時間取る事が出来るが、日本という国は時間に厳しいらしく、15分は移動と五分前行動の現れである。
しかしまあ夏休みは日頃、家に居る俺はすることもなく、クーラーの効いた部屋でパイプ椅子に座って上を向いていた。直下は外に行ったらしい。全く、貴重な休憩時間によく動く。
そんなことを考えていると、ドアが開き、
「ただいまー」
と、元気よく声を出す。最近の陽キャは健全だ。見習わないが。
「どこいってたんだ?」
上を向いたまま聞いてみる。すると直下は顔を上からのぞかせ、
「水着美女探してた」
等と言うので、椅子から転げ落ちてしまった。すぐに起き上がり、
「お前は中学生か!」
思わず突っ込んでしまった。このペースは苦手だ。こいつはそろそろ捕まっても良いと思うが。
「嘘嘘、在庫の確認だよ」
顔が冗談じゃない。
すぐに現場復帰。この直射日光の中、よく泳ごうなんて思うよなぁこいつら。こっちは日陰で日光も感じず金稼ぎだぜ。
「あの、いか焼きと、ソフトクリーム下さい」
「あ、はい。すみませんいか焼きと、ソフトクリームですね」
いかんいかん。ボーッとしていた。客には態度よく。
「500円になり、、あ、」
俺はこいつを知っていた。知ったのはつい最近だ。夏休みが始まったばかりの頃、あの日もとても暑かった。休みなのに学校に呼ばれ、たらい回しになり、殴られ、書類の確認をして、そのあとだ。駐輪場でこいつに会った。
「羽後君、良いネタは見つかったかい?」
こいつはジャーナリスト、あれ、名前、名前なんだっけ、え~とえ~と、いいや。
「良いネタという商品はうちの屋台にありません」
これでどうだ、
「まあ、ここへは君じゃなくあの娘を追ってきたんだけれどね」
「······もうわかってたんですね、凌のこと。結構前から」
「おお、凌ちゃんの方だったか!どっちかだと思っていたんだが、まさかそっちとは」
え、、はめられた?
「あ、いか焼きと、ソフトクリームです」
ここで直下が入ってくる。
「おお、待ってたよ。これ、羽後君、代金」
彼は、5万と500円を渡してくる。
「5万は情報量だよん」
ヤバイ。かなり不味い。
「ちょっと待ってください。金はかなりほしいです。嘘は言いません。ですが、今の情報にそれほど価値が、」
「有るさ。何たって僕にとっちゃ世界一難しい2択問題だったからね。このままだと間違っていた」
馬鹿げている。ただの噂から、凌まで突き止めるなんて、うちの妹と良い勝負だ。
「もう一つ、選択肢のもう一人は?」
何となく察していた。
「こっちの方が有力候補だったんだ。名前は、」
「東雲成恵ちゃん、だったかな」




