俺と妹と友達いない事と
「明日が来ないの」
彼女は確かにそういった。
「正確には、ある日から、ずっと夜なんです。太陽の光を感じない、目に映らないんです。全くというわけではないのだけれど」
詳しく説明してくれた、こんな簡単に。
「その事を知ってるのは?」
「あなたと昔の友達」
「親は?」
「色々と複雑で、今はいません」
「君、一人暮らしなの?」
「そうです」
「その、君って言うのやめてもらえませんか?なんか距離を置かれているみたいで」
「置いてますよ、初対面ですし」
「え、ああそれもそうね」
え~何この展開……俺なんかきもくね?
「俺、普段はコミュ障なんですけど、ぼっち相手には普通にしゃべれるんです」
「な、なんで」
「安心するから。青春してる人たちは無差別にネタのターゲットを決めて、『キモイ』だの『うざい』だの傷つく言葉を無自覚に発信してますけど、いわゆるぼっちどもはほとんどの人間が優しいじゃないですか、だから、気軽に話せるんです」
「そうじゃなくて、それもそうだけど。なんで私がぼっちだってわかったの?」
「ああ、じゃあ逆に、君は僕を見て最初どう思いました?こいつ友達いないな、とか」
「あ、それおもった」
……傷つくなぁ
苦笑いする
「な、なんで?」
「なんでって、なんとなく」
「そう、なんとなく。人間っていうのは相手と初めて会って、まずなんとなくで印象を付けたがるんですよ、それこそ、五秒から十秒くらいで」
「……」
「高校生活は入学式の日が勝負!」
「じゃあなんであなたは一人ぼっちなの?」
「友達はいる、しかも女子だ。これ以上のステータスを非リア男子は望まない」
「彼女とか?」
「それを俺以外の非リア男子に言うなよ」
……かわいそうだからやめてあげてください。
電車が来た。車輪と線路が心地よい音とは程遠い耳障りな音を鳴らし止まった。無人駅なので降りる人はいない。高校が近いのに無人駅なのはどうかと思うが、コミュ障としては都合がいい。扉が開き、先に凌が乗った。
「どこ座る?えっと……名前聞いていいかしら?失礼承知なんだけど私、あなたの事全く知らないの」
「俺?羽後って名前。戸羽羽後。『戸羽』は扇って感じを分解した戸羽で、『羽後』は、」
「羽に後って字でしょう」
「よくわかったね、珍しいのに」
「羽後ってもとは苗字だったよね、どっかで聞いたことがあるわ」
「私は加賀美凌っていいます。『加賀美』は、」
「字はわかる。ぶつかったとき名札見たから」
羽後は聞くことにした、暗さについて。
「その、いつから君の見る世界が暗くなったの?」
「6歳、小学校に入る頃に」
「なんで」
「親が、離婚したの。たぶんこれが理由」
「離婚した当時はどうってことなかった。母親についていったあとも父親にもこっそり会ってたし。でも、互いが互いのことを悪く言って、それが嫌になった」
彼女の親が離婚した理由を、彼女自身は知らないと言っている。ただ、6歳の頃、彼女が寝た後に毎晩喧嘩していたのを覚えているという。
口を開くことにした。それは、彼女の境遇が、自分と、自分たちと似ていたから。悲しくなった。こんなにも近くに似た境遇の、悲しい感情を持った人がいるなんて。
「俺、妹がいるんだけどさ」
「本当の妹じゃないんだ」
羽後の妹が本当の妹ではない。それはつまり、『義理』ということだ。それも、とても複雑な。羽後の家に羽後の妹、戸羽 音琴がやってきたのは羽後が中学三年生になったころだった。羽後の両親は羽後が小さいころに離婚しており、この頃は父親と二人暮らしだった。新しく結婚すると聞いた時は驚いたが、父親の相手とも面識があったので理解は出来た。
一学期が始まり、気持ちが落ち着かない中、ついにその日がやってきた。パソコンで『友達作り方』を検索し、『二日で百人作れる‼友達の作り方。』というサイトを見ていた。
『まず、最初に共通の趣味がありそうな人、同じ部活に入ろうとしている人に話しかけてみよう!』
……話し掛けれないからここにきてんだよ。
『趣味の見つけ方は、カバンに着けているキーホルダー、スマホに入っている音楽などから探してみよう!』
……いや、気持ち悪いだろそんな奴クラスに居たら。おまわりさんこいつですってなっちゃうよいいんですかね、そいつのスクールライフ、そこで終わりだろ絶対。
『趣味を聞くという手もあります!』
……結局普通じゃねーか。いや、やらないよ絶対。
そんなことをしていると、インターホンが鳴った。
「お邪魔します」
そう言って上がってきたのは、面識のあった義理母だった。
「ほら、あいさつしなさい」
「こんにちは、音琴です」
「こっこんにちは、戸羽 羽後です。ええと、趣味とかって、」
「え、何ですかやめてください」
「おぅぅ……」
羽後はあのサイトを恨んだ。
そんなこんなで、家でも学校でもボッチという素晴らしく光栄な称号を得た羽後は静かに受験勉強ができ、志望校よりも遥かにレベルが上の進学校に合格したというわけである。
(やっぱぼっちは最高だわ)
羽後が受験勉強をしている間、音琴が晩ご飯を作ってくれていた。それも、両親の仕事が忙しく三年ほど東京に出張に出るというのだ。音琴は親に頼まれたのか、自発的にやったのか知らないが、そのことに関して羽後は一度も、『ありがとう』と言えていなかった。いつか言おう、羽後はそう思っていた。そしてそのまま、二年が過ぎた。
二人が電車に乗ると、その窓からは赤く、大きく、神々しい夕日が輝いていた。
「メール、一応交換しましょうか」
……なんだと!!
……俺の目覚まし板切れとしか思ってなかったスマホについに女子のメールアドレスが!!落ち着け俺。一応だ、一応。
凌がバッグから取り出したのは、
「ガラケーだけれど」
……全然結構です‼
メールアドレスが追加された。
>>よろしく。
<<夕日きれいだし明日は雨だな
羽後は初めて女子にメールを送った。
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今回ですが名言
「『友達は作るんじゃない、できるんだ』って言うけど、必死になって友達を作っている人はどうなるんだよ、そいつの努力、否定すんなって、俺はいないからわかんないけど」
by 戸羽 羽後




