彼女に明るい明日はない
帰り道、坂を下り、沈んでいく夕日に照らされながら駅へ向かった。下り坂は転ばないように気を付けてゆっくり歩いていた。周りには夕日に照らされ、水面が黄金色に光る田んぼがあり、風によって美しく揺れていた。その景色はいつも見ているはずなのに何故か今日だけよりきれいに思え、もう二度と見ることのできないように思えた。駅につき、改札を通り、いつも通りホームに立った。いつもと違うのは、そのホームにもう一人、同じ高校の制服を着た女子生徒がいたことだ。しかも、たったさっきまで東雲と話していた。その女子生徒、加賀美凌だった。
おい、
羽後が驚いたのはボッチの俺以外の生徒がこんな時間に一人でいたからではない。その生徒がフラフラして今にもホームに落ちそうだったからである。
ダッ、、
通学バッグを投げ捨て、叫ぶ。
「おいお前、大丈夫か」
凌ははっと振り返り
「っだ、大丈夫です」
あっれ~っ?ここは呼びかけに応じない倒れそうな美しい少女をイケメンが助けるシーンじゃないの?振り返っちゃうの?
心の中で残念がっていると、ある物が目に入る。
「懐中電灯?」
つい口に出してしまった。
それも、彼女の通学バッグには、懐中電灯がぶら下がっていたからだ。
「え?」
と凌が言ったので、つい適当に、
「あ、いや、部活終わりだと冬は暗くなりますよね」
と、笑い誤魔化しながら答えておいた。
「私、部活行ってません」
この学校は、部活に入らない。つまり帰宅部でもいいが、青春と周りの威圧により、入らざるを得ない雰囲気にある。俺もそうだ。体験入部という名の暇つぶしに参加するも、弓道の才能が開花する。まあ元々やっていたんだがな。そこで先輩にぜひ入ってくれと誘われる。これが俺の言う威圧だ。ほかにもあるぞ、例えば、、、まあまた今度。
「何か用事があって?」
「いいえ、いつもこの時間です」
「……」
「……」
俺と同じ理由だな、羽後は瞬間的にそう思った。ボッチの勘である。羽後はいつも、他の生徒がいるからという理由で授業と部活の途中の時間に帰っている。いつもは教室やほかの部活(オタク系)などで時間をつぶしているが、今日は東雲に聞きたいことがあるという理由で仕方なく部活に行った。ちなみに鉄砂には言ってあるので問題はない。さぼりではない。ホントだよ、嘘ついてないからねっ。
「いや、もう明るくなってきたので、懐中電灯必要ないかなって思っただけです」
「……危ないですから」
ボソッとつぶやくが、俺の半径1キロ以内の陰口の聞き取る耳をなめるなよ。
「頭大丈夫ですか」
おっと、つい口にしてしまった。
「ば、馬鹿にしているんですか?」
喋る言葉の一文字ずつに暗さを感じる。声も透き通っているのに何かがある。羽後はどうするべきか迷っていた。あの暗さについて、彼女に聞くべきなのか、それとも踏んではいけない彼女の地雷なのか、コンプレックスなのか、いや、羽後は聞こうと思った。知りたかった。あの本物の暗さはいったい何なのか、何が彼女をそうさせているのか。初めて人を知りたいと思った。一時期陽キャのドロドロとした人間関係の詮索が趣味だった俺でも、こんなに好奇心を抱いたのは初めてだった。
「失礼かもしれないけど君さ、暗いよね。」
彼女には何か引っかかるところがある、羽後はそう思っていた。
うわー俺何言ってんだキモイな。羽後が自分で自分を罵倒する。
「……」
彼女は黙ってしまった。
「馬鹿にするかもしれないけど、君と目があった時、一瞬だけど暗く感じた」
まじで。
「ふう、」
彼女が口を開いた、少し安心しているように見えた。
「私、」
「ずっと明日が来ないのよ」
ありがとうございました!コメントに誤字脱字、要望など宜しくお願いします。
今回ですが名言
「おかしいよな、ふざけて、悪い事して、怒られて、間違ったことなのに全部学校生活の行事の一部として置かれて、本人には全く当時者意識がないんだぜ」
by 戸羽 羽後




