コミュ障、部活にて
昼飯の時間になり、外の売店に行くと他の生徒でいっぱいだった。こんなことはいつも通りなので、コンビニでサンドウィッチと野菜ジュースを買ってきていた。羽後はそれを見せつけるように売店の前の階段に腰掛けてゆっくりと食べていた。
「青春してるやつらはいまも仲のいい友達と無駄な話をしながら昼食を食べてるんだろうな」
一人なのですぐ食べ終わってしまった。
ごみ袋をごみ箱に捨て、制服のポケットに手を入れ、ポケットの中の鍵を触りながら歩いていると、
「ドスッ」と誰かとぶつかってしまった。そしていつの間にか目の前に女子生徒がいた。
いつも下を向いていたから気が付かなかったのか、その女子生徒も目を合わせないようにうつむいていた。
……なんだよ、この定番ラノベ展開。ここは早く終わらせよう。自然に、非運命的に。
「すまん」と羽後が言うと向こうは生徒手帳を拾っていた。ぶつかった時に落としたのだろうか、その女子生徒は顔を上げ会釈だけして去っていった。
羽後は思った。その女子生徒はまあまあの美人だった。しかし羽後の心はそれくらいで揺さぶられない。これくらいのことで青春を感じるようじゃ、彼女いない歴=、、、悲しくなってきた。とりあえず見た目には騙されないぞ。
身長は165㎝ほどだろうか、一瞬だったが生徒手帳には二年一組 加賀美 凌と書いてあった。
ただ、その女子生徒には、なんというか、言葉にできないけど、明るさがまるでなかった。とても暗かった。
オーラかな?陰キャかな?陰キャは俺だった。その女子生徒を見た一瞬だけ、恐怖すら覚えた。
まるで金縛りにかかったかのような感覚だ。
金縛り?いや、違うなどっちかっていうと、
『蛇に睨まれた蛙。』
その言葉を急に思い出した。
俺、疲れてんのか?そう思いながら羽後は教室に向かった。
全ての授業が終わり、羽後は珍しく部活に向かっていた。弓道場の入り口に東雲がいたが、そこへ先生がやってきて、
「おお東雲、丁度よかった、今度の大会の話なんだが、」
弓道部の先生である。鉄砂智久といい指導が上手なことで有名だ。弓道も、勉強も。
「……そうか、残念だが仕方ない」
どうやら何かあったようだ。羽後は東雲のもとへ向かっていった。
「どした?鉄砂がなんか言ってた?」
羽後は東雲の方へ駆け寄り右手を少し上げ、よお、と言った。
「そっちこそどしたの戸羽、珍しい。部活きたんだ」
興味なさそうに真顔で答える。
「ああ、ちょっと聞きたいことがあってな」
「とりあえず部室はいろっか」
木製のドアを開け二人は部室に入った。
羽後は男子更衣室、東雲は女子更衣室に入っていった。二人にとって部活の中で一番憂鬱な時間である。
着替え終わって外に出ると、東雲がいた。
「先生、なんだって?」
「……今度の大会、断った」
「それまたなんで?」
「ずっと一緒に住んでたおばあちゃんの、葬式の準備とか色々」
「悪い」
「別にいいよ、羽後が悪いわけじゃないし」
彼女の怖いところはここだ。何があっても表情を変えない。気にすることでもないがな。人の都合に口出しするほど、暇じゃないんでな。
「ただ、ずっと一緒に住んでたから、大会なんてしてる場合じゃなくて」
「まあ、そうだよな」
3秒ほど沈黙が続いた。
「そういえばそっちは何?」
「ああ、どうでもいい話なんだけど」
この話の後にどうでもいい話はさすがに気を使っていないと自分でも思ったが、「やっぱり何でもない」と言ってしまっても、それこそあちらに気を使わせてしまう。俺は空気を読むことが苦手であり、嫌いだからな。
「加賀美凌って知ってるか?クラスは二年一組」
「戸羽が女子の話なんて、かなり珍しい。戸羽はたしか五組だったよね?私は二組でクラスは違うけど、その子のことは知ってる」
ほう、こいつは人脈がないほうだと思っていた。
「どんな感じ?その、雰囲気的な意味で」
「特徴といえば美人なことと、ちょっと暗い、愛想がないことくらいかな」
「美人ね-」
美人ということには賛成だった。暗いことに関しては、本物だ。
「美人ということには賛成だが、暗さは本物だぞ」
「凌さんと何かあったの?」
「ちょっとぶつかっただけ」
ついでに蛇に睨まれたがな。
「それだけ?」
「なんでそんなに聞いてくるんだ?」
無表情で質問攻めをするな。裁判みたいで怖いから。大半の人間は苦手なんだよ。
「ぶつかっただけでそこまで相手の事を気にはしない」
そんなことお言われたので、とっさに
「……見たことない生徒だったからな」
と、答えておいた。『加賀美とかいう生徒に睨まれた』なんて言うと、俺が被害者ぶってるみたいだからな。ただ目が合っただけでそれはひどいだろう。
もしかして、女子と目が合って動揺してただけなの?俺。
ギイィィ、と、弦を引く音がする。東雲は少し口を開け、矢を持ち上げた。少し時間が経ち、口を閉じた。その瞬間、『タン!』と音が鳴った。弓が的の中心に刺さっている。
「さすが東雲、何で浮いてるかわからないほどの上手さ」
「褒めるのか馬鹿にするのかどっちかだけにして」
東雲がこっちに振り向いた。少し照れている様だった。
羽後が立った。弓を構え、集中していた。屋内だが少し風が吹いている気がした。二秒ほど経ち、完全
に羽後の体が静止した。『タン!』弓を放った。
「さすがじゃん」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
羽後がわざとらしく言った。
「ほんとに褒めてるんだって」
「帰る」
目線の数々が気になる。
「先生には、」
「私が言っとく」
じゃあ、と手を振り羽後は男子更衣室に入っていった。さっきまで羽後が打っていた的の中心には一本の矢が刺さっていた。
ありがとうございました!誤字脱字等ありましたら、コメント宜しくお願いします。
今回も名言
「ゲームだったら一人でボス倒して、全部のステータスもらえて、ソロクリアすげぇってなるのに、なんで現実だと『みんなで一緒に』の方がいいんだろうな」




