それぞれの非青春
凰磨は財布を取りだし、自販機まで歩いていった。羽後はポケットに両手をいれ、前屈みでゆっくりついていった。コーヒーを買い、「おごるよ」と言うので、なにこいつイケメンなの?イケメンだ。くそ、心までイケメンとか俺が女子だったら惚れてたわ★、なんてどうしようもなくどうでもいいことを考えながら。
「でわ、遠慮なく」
なんて、カッコつけておいた。
「ブラックは苦いからやだ」
なんて、カッコがつかなかった。
先程まで座っていたベンチにもう一度腰掛け、缶コーヒーをあける。もうすぐ夏だといのに、ホットを選んでしまった。
「じゃあ、話してもらうぞ」
お前の過去について、糸佳徒の過去について。
「そんなに良い話じゃないよ」
「気分が良くなる」
「最低だな」
「こんな自分がチョー大好き」
自分以外、誰も信じたことがないから。
「小学校の頃、僕と糸佳徒は同じ小学校に通っていて。一年や二年の時はみんな仲がよかった。もちろん糸佳徒も。でも、高学年になっていくにつれて段々別れていった」
あるあるだな。そもそも一人一人趣味、価値観等は別れるのだから、『みんなで仲良く』なんてできるはずがない。価値観がにている兄弟ですら喧嘩したり、戦争したりしてるからな。
「糸佳徒は皆に『ウザイ』『キモイ』とか言われていたよ。理由はわからないけど、三年生の時に何かあったみたいだ」
成る程、では。
「この場合、三年の時に何があったかはもはやどうでもいい。どーせ大したことない。子供のする事だちょっと友達関係ミスっただけだろ」
「じゃあ、何が問題なんだ?」
「学校の空気」
「どういうことだ」
おお、こいつ真面目に話を聞いている。こんな俺の話を。
「例えば、俺がちょっと誰かの悪口等を言う。それがクラス、学校の人気者に伝わる。その人気者が『アイツウザイ』などの事を少し言う。するとたちまち噂は広まり、『戸羽は最低でキモイ』みたいなレッテルが貼られる。学校の空気の出来上がり」
「なるほど、対処法は」
「ねえよ。誰もがそんな空気を吸わないと生きていけないんだ。誰か一人が『戸羽は悪くない』っていったって『なにあれ、きもー』みたいな感じになってソイツも嫌われるだけだろ。みんなに合わせれば重要視されることがないから楽なんだよ。これが空気を読むってやつだな」
空気を読む、どうしようもない行為だな。そもそもその行動が正解なのか解らない。周りに合わせれば良いのか、自分を信じて貫けば良いのか、一生この答えは出ないだろう。
「質問なんだが、なぜそれと今回の林間学校で同じ班になることが関係してるんだ?」
「それは、中学に上がった頃、糸佳徒が学校に来なくなってしまったんだ」
「それで?」
「心配して、彼の家まで行った」
やめてあげてください。他人と関わることをよしとしない奴も要るんだから。無理矢理関わろうとするのは嫌な気分にしかならない。しかも君みたいな人気者が陰キャと話すと今みたいになるから。陰キャ心わかってねえなー。
「そしたら帰れって言われてそれを学校の友達に言ったら」
「『調子のってんなアイツ』だろ?」
「何で分かったの」
「いやまぁ何となく」
嘘です実体験しました。調子のってるは定番です。
羽後はコーヒーを飲んだ。
「それから三年までずっと不登校」
「三年は?」
あリガとう御座いました。
名言
「話題があれば何でも話す。それが陽キャだ。人をばかにしたりも罪悪感無くする。個人意識が無いんだ。そんな奴らと戦えって?諦めろ絶対に勝てない」
by 戸羽 羽後




