第1章 力そして呪いあと魔法 (2)
ある父親と母親
「やっと産まれた、とうとう領主大戦に出ることができる。しかし、うちの子供はどこか不気味だ。赤ちゃんなのに、よほどのことがない限り泣くことがない。そして、1歳にもなれば勝手に書斎の部屋に入って何かしている。メイドによれば、ただかまってほしいと解釈しているが、本当にそうなのか? 実はあの小さな頭の中には何かとてつもないことを考えているのではないか? っと思ってしまって自分がいる。ただ、近い未来にとてつもない戦いが起こると思っている。我が息子を引き金に.........」
「あなた、忙しいからって考え込みすぎですよ.........全く、あなたは昔から気になることがあるとすぐ考え込んでしまうのですから、少しはこっちの身にもなってくださいよ げほっげほっ!」
「っ.........あぁすまないリサ。実は息子について考えていたんだが、リサは何か気になるところはあるか? 」
「けほっいえ、特にはないですよ。ただ、勝手に書斎の部屋に入るのはどうにかしてほしいですね。まだ、文字すらまともに読めないというのに、私たちにかまってほしいだけでって、まぁそんなところが可愛いのですけど」
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とはいっても、3歳の僕にはできることが少ない。しかし、喋ることは出来るし『魔力を操作』を使い、モノを動かすことができる。だけど、前世での『カメラ』などの証拠を保存するものが少ない。でも、絶対あいつに悪さをできないようにしてやる。.........とりあえずメイさんにこの情報を流して、母さんに流れ着くようにしよう。そして公の場で母さんの暗殺を企ていることをばらしてやる!
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「.........え? ユウキ様、急にどうしたのですか?」
「メイさん、今日1日だけ僕によみかきをおしえてください」
「いいですけど、いつもの書斎の部屋にはいかれないのですか?」
「だってまだよめないし、しょさいの部屋には『マイさん』がいるんだもん」
「えぇ?! マイが書斎の部屋に? あの子仕事はちゃんとしているのかしら.........」
「あっ.........これ言っちゃダメだったや、マイさん、今のはないしょにしててください。とくに母さんには」
よし、これであいつの疑惑は掛ったぞ! メイさんは僕が生まれる前から仕えてる人だ。母さんと父さんの信頼も厚い。けど尚更メイさんにもあまり迷惑をかけたくない。なるべく穏便に.........
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さて、僕は今まで地味に気になっていたスキルの『 』を知ろうと、『ステータス』を強く念じてきた。
………その努力が実ったと思っていたが、これを見て少し不安を覚えた。
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『ステータス』
ユウキ・アルス 3歳? 種族:人間 性別:男
Lv1
スキル
『ステータス(心)』
加護
『不幸を幸福に』
呪い
『不殺』
HP18 MP45
攻8 防9 魔32 敏6
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不殺:ありとあらゆる生物を殺すことは出来ない
不幸を幸せに:自分の力や呪い、そして手に触っているものを変換する※その世界での価値を基準とする(呪いは消えない)
まずは『不殺』だ。この世界は魔物は勿論のことステータスなどもあった。何が言いたいかって、僕はレベルアップができない。つまり、強くなれないということだ。
だけど不思議な力もあった。
不幸を幸せに:何かを変換できる
不幸を幸せに、は何かを別の何かに変換する力らしい.........
そして思いのほか簡単に、この力で『不殺』を変換させて、変換ポイント(10万)を手に入れることができた。
.........でも呪いは完璧には消えなかった
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『不幸を幸せに』の『不殺』の変換ポイントを使おうと思う。スキルも魔力と同じで、レベルとは別に鍛えることができる。しかし、レベルが高い人は自然と上がる傾向があるらしい。だから今まで練習してきていた『魔力操作』を極めようと思った。
魔力操作・絶:魔力を消費せずに魔力を操作することができる。(変換ポイント-8万)
ランクボーナス:魔力を扱うスキルの覚えやすくなる。
世界理解・超:世界の情報を理解することが出来る。ただしランクが低い程、見れるものは少ない。
(使えるのは1ヶ月に1回、変換ポイント-1万)
『世界理解』というスキルは、ちょっと考えた結果、正直この世界のことを全然わかっていないし、ある程度の情報を得るためにこのスキルを選んだ。僕の好きな人についてもの凄く心配だし。
っとそういえば、この世界にもランクづけみたいなものがスキルや武器などにある。下から順に、『初』『中』『上』『超』『極』『絶』『神』だ。基本的に『初』は初心者という意味だ。『上』は、ある程度使いこなせるようになったという意味だ。『超』を超えれば達人級になる。『絶』までが人族の限界といわれている。しかし、その『絶』も何十年の修行を積んで、やっとの思いで到達できるラインらしい。そしたら『神』は、.........何も言うことはないだろう。
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3日後
いよいよだ。『あいつ』は今、書斎の部屋にいる。予定どおりにことが進んでいる。そして、あいつが書斎の部屋でサボっているという噂も、メイさんに流しておいたことでより信憑性が増している。
そして、あいつが父さんのことが好きで母さんに嫉妬していることを暴露する。最後に、母さんに盛っている薬を伝える、無論、薬はしっかり除去・証拠として残させてもらっているがな
そういえば、残りの1万ポイントどうしよっかな〜
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『ステータス』
ユウキ・アルス 3歳? 種族:人間 性別:男
Lv1
スキル
『ステータス(心)』『魔力操作・絶』『世界理解・超』
加護
『不幸を幸福に』
呪い
『不殺』
HP18 MP45
攻8 防9 魔67 敏6
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誰もいない書斎の部屋…
「クソッ、どうして私じゃなくてあの小娘なんよ。私の何がいけないの………」
薄暗い部屋の中で聞こえる殺意に塗れた声が響いていた。そしてこの女は静かに自分の牙を研いでいた。
「ちっ! しかもなんで、あの薬が効かないのよ!! ………誰か私の計画を知るものは誰も………
………もう限界だわ………」
「そうだ………あの小娘をこの手で………そう」
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今日が僕の妹の誕生日だ。今日までに色々準備してきたけど、上手くいく保証がどこにもない。慎重に丁寧にやろう。
「………新たに生まれたこの生命に敬意を払い、そしてこの世界の神様に感謝をしながら、名もない娘の誕生を祝って」
「「「「かんぱ〜〜〜〜い」」」」
カチャン…、フユキを始めとした他の人達も一斉にワインを飲んだ。僕の時もそうだったが、多勢の人が集まっているところを見ると、やはり裕福な貴族の家に産まれたのだと改めて理解した気がした。
さてと、まずはアイツの出方を伺わないとな。
「皆様、この度は名もない娘の誕生会にご参加いただき誠に感謝します。今日は誕生会、そして日頃の感謝を込めてのパーティーですので、ごゆっくりお楽しみください」
フユキがそう言って、誕生会は始まった。
………そりゃそうだよな。薄々分かってたことだけれども
僕、親から離れられないよな。動けないじゃん………
「ユウキちゃん〜、あそこのスパゲッティーを食べてみましょ〜」
「お母様〜あちらのいすにすわりたいです」
「うーん、3歳の我が子を放っておくのは良くないしどうしましょ」
「僕のことはかまいません!お母様もたのしんできてください!」
「そう?そこまで言うなら少しの間だけ1人で居てね?………あそこの席が分かりやすいから、そこで座っててね〜もし動きたくなっても、あまり動かないでね〜」
「はい、わかりました」
ふぅ、お母様から離れることができた。これで作戦も上手くいく確率が上がった。取り敢えず、『アイツ』の行動だけは警戒していないと………
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「………予定通り誕生会は開会しました。………はい、分かりました。では、あと30分後にということで、………はい、失礼します。………っち、なんで俺がこんなことをしなきゃならねーんだか」
「まぁ、しょうがないっすよ。あんたが強くて扱いやすいから、こんな命令をするんすから」
「ただ俺の娘を助けてやりたいのに、俺は他の人の娘を殺さなくてはならないなんて………」
「でも大丈夫っすよ、これが終われば契約期間が終了するっす」
「ああ」
盛り上がっている会場と、静かに潜む闇の襲来が徐々に迫っていた………
次回、妹の誕生会と、例のあいつに復讐です。
補足
ユウキは産まれたばかりの記憶が曖昧で、誕生会の記憶があまりないです。