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黒迄現在夢現  作者: 朝霞ちさめ
第一章 二十日遅れの中学生活
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03 - 何事も基礎がとても大事で

 河川敷。

 僕たちが暮らしている街には川が一本あって、その川がそれなりに大きいので、堤防が作られている。

 で、その堤防の内側には野球やサッカーのグラウンド、簡単なベンチなどが置かれた憩いの場、秋はススキがおいしげるようなスポットもあって、ちょっと遊びに来るにはもってこいの場所である――凧揚げとかは禁止だけど、数少ないボール遊びができる場所だ。

 あと、グラウンドと堤防の間にはちょっとした広さの道路があって、河川敷という直線的かつ平坦な場所であることも含め、小学校ではここでマラソン大会をしたりもしていた。

 僕にせよ洋輔にせよ、マラソンは好きではない。むしろ嫌いな部類だ。

 だからこそ、こうやって遊びに来た時、好きに走ってる人を見ると物好きだなあと思ってしまう。健康的なのかなもしれないし、洋輔あたりはもしかしたら走り込みとかも考えたのかもしれないけど、少なくとも僕は遠慮しておきたい感じだ。うん。

 ちなみに、僕はあんまり河川敷が好きという訳ではない。

 だって基本、猫いないし。

「河川敷に来るの、いつ以来だろうな」

「さて? ……小六、のマラソン大会以来だと、二月に一度来なかった?」

「あー」

 洋輔に答えると、「じゃあかなり前だな」と答えられた。

「あっちのことも考えれば、十二年ぶりくらいだよね」

「うん……まあ、それはさすがに特殊な数え方だけどな」

 ごもっとも。

「それで、お目当てのものはありそうか?」

「どうかなー」

 僕は眼鏡を通して色々なものを見て、確認。

 残念ながら品質が表示されるものばかりだ。

「ま、ちょっと歩きながら話そうよ」

「いいぜ」

 土手を下って河川敷側の道路に降りて、僕と洋輔は並び歩き始める。

 特に理由はないけど、なんとなく上流方向にした。

 ちなみにこのメガネについては、僕のお母さんもお父さんもさすがに不審がるかなあと覚悟していたのだけど、『演劇の先輩にもらった小道具だよ』と説明したらあっさりと納得されてしまった。

 どころか『壊さないように気をつけなさい』と注意までされたのは、きっとすぐに僕がこれに飽きると判断しての事だろう。

 趣味というかファッションの類でこれを掛けることになったならば三日くらいで飽きるよねこれ。

 実際は視力矯正器具ではないにせよ実用品だから、違和感があってもつけざるを得ないのだけれども。

「洋輔は、部活の方はどう? 決まった?」

「いやあ、それがなんとも。一応、サッカー部とかは様子見してるけど……。そういう佳苗はどうするんだ? やっぱり工作部?」

「うーん。まだ決め手がないんだよね」

 ちなみに工作部の見学は今日の放課後、洋輔と一緒に行ってきた。

 思ったよりかは本格的な、それでいて結構自由にいろいろなもの作っているようで、のこぎりやカンナを使って木材を整えてる子もいれば、針金とアルミホイル、紙粘土などを使って動物などを再現してる子もいて、結構楽しそうな部活ではあった。

「でもさ、僕が好きなのってふぁんって作る方で、ああやって地道にやるわけじゃないから……。まあ、工作は工作なんだろうけど、方向性が違うかなって思って」

「そりゃそうだな」

「洋輔が入るなら、サッカー部でも入ってみようかな?」

「お前が?」

 うん、と頷き、僕は足元の草を一個引っこ抜く。

「マネージャー枠で、だけどね。僕、運動あんまり得意じゃないし……」

「それでも平均くらいはあるだろ」

「ていうか走るのヤダ」

「…………」

 根本的なところで僕は運動部と相性が悪いのだ。

 かといって文化部で何かやりたいことがあるか?

 と聞かれると、これもまた微妙で。

「いっそ、本当に演劇部にでも入ってみようかな……」

「あー……まあ、お前ならそつなくできそうだしな」

「いや役者じゃなくて小道具とか大道具調達役」

「そっちかよ。いや確かにお前なら大概のものはできるだろうけど」

 うん、言ってて思った。

 それが天職になるかもしれない。よし、そうと決まれば明日は演劇部を見に行こう。

「別に止めやしねえけど……。やれやれ。ちなみにその草、薬草なのか?」

「ううん。ただ、形に見覚えがある」

「へえ。どんな草だ?」

「毒草。たしか麻痺系の毒だったかな?」

 効果は大分小さくて、かなり濃縮してようやく効果が表れる程度なんだけど……まあ、毒草は毒草。

 エリクシルの作成には薬草が必須だけど、それ以外にも毒薬とかが必要になる。

 それは最悪、風邪薬と鏡とかで無理やり作るかな、と思ってたんだけど……。

 風邪薬を反転すれば毒薬になるしね。

「でも、品質も低いし。微妙かなー」

「いくつだ」

「144」

「低っ」

「だよね」

 九級品ではもはや毒としては無毒に近いだろう。

 いや雑草として生えてるんだから、むしろ無毒のほうがいいのか……。

 って、あ。

「洋輔、ちょっとストップ」

「ん」

 歩みをちょっと土手の方へ修正、そして近寄った先にあった草を改めて確認。

 品質値は……よし、ちゃんと『?』になっているのが、えーと、七株か。

「らっきー。一気に必要分そろっちゃった」

「お。それがそうなのか」

「うん。袋は持ってきてるから……」

 発見した品質値『?』の草とはすなわち品質値が存在しない草であり、薬草ということだ。

 いっきに七つ見つかるとは、だいぶ助かるな。

「それで、どうするんだ。一気に作っちゃうのか?」

「そのつもり。洋輔さえよければだけど、このあと僕の部屋に来てくれない?」

「いーぜ。もともと今日いっぱいはお前と遊ぶつもりだしな」

「ありがと。こっちの目的は達成したけど、洋輔はなんかある?」

「いや、特にねーかな。帰ろうぜ」

 おっけー。


 というわけで、他にもこまごまと必要になるものを購入して帰宅し、自室へと洋輔を招き入れて、テレビをつける。

「適当なゲームやってくれる?」

「なんで」

「音」

「ああ」

 なるほど、と洋輔は納得してくれて、家庭用ゲーム機の電源を入れた。

 それを確認して、僕は早速、必要な道具をいくつか準備する。

 毒草から毒薬を作るつもりだったけど、あんまりにも毒草の品質が低すぎるので、おとなしく風邪薬を反転させることに。

 エッセンシアの基本となるものはエリクシルと呼ばれるもので、これの材料は薬草二つと毒薬、そして水。

 これをエッセンシアとして変質させるためには錬金術を行使する者の血が必要になるんだけど、血はタンパク質と液体で作れて、そこに『個人を特定する体液』を追加してやれば特定の人物の血を強制的に再現できる。

 よって、タンパク質に加えて『つば』を用意して錬金術を行使すれば簡単に特定の人間の血って作れるのだ。

 ……ちなみに、これは地球に戻ってきてから調べてわかったことなんだけど、唾液にはタンパク質が含まれるらしい。

 なので品質を気にしないなら、唾液だけで血液が作れたりする。まあ、かなり品質が低かったから、ちょっと使い道に困る程度なのだが……。

 まあそれはともあれ、今日、帰り道に百円ショップで買ってきたマテリアルは次の通り。

 ハム、鏡、陶器のお茶碗、プラスチック製のスプーン、ストロー、割り箸、装飾用の紐。

 占めて千五百円プラス消費税なり。

 百円ショップって百円じゃないんだよなあ……。

 とまあその辺の愚痴はさておいて、魔法で器を作ってハムを一枚と唾液を投入、錬金、ふぁん。

 血液が無事完成したのを確認しつつ、さらに血を追加で複数作っておく。

 で、次に毒薬の作成。

 まずは鏡を単体で錬金し、割れた状態にする。普通に砕いてもいいんだけど音が出るからな。それなら、まだゲームの音と弁明できる錬金術の『ふぁん』のほうがいいという判断だ。

 割れた鏡を使って、救急箱から拝借してきた錠剤タイプの風邪薬を六錠ほど器に投入、鏡も六つ入れといて、ふぁん。

 完成したのは瓶に入った液体の毒薬が六つ。品質値は思いのほか高く、なんと7220。二級品だ。日本の薬すごいな。

 材料はこれでほぼそろっ……、

「…………」

「ん? どうした、佳苗。固まってるけど」

「……あっぶねー。多めに持ってきてよかった」

「失敗か? 珍しいな」

「いや、失敗は失敗だけどそういう失敗じゃなくて」

 ふぁん、と僕はとあるアイテムを錬金術で作成しつつ補足する。

虚水(うつろみず)作るのにも薬草使うの忘れてたんだよ」

「虚水? って、なんだっけ」

「えっと、クイングリンの材料」

 虚ろな水と書いて、うつろみず。

 効果は『味のしない水』といういわゆるところの水なんだけど、薬草を反転して水と錬金して作らないといけない。

「ああ。……てことは、薬草の最低量っていくつになるんだ?」

「クイングリンを最低二つ作らないといけなくて、クイングリン一個に薬草三つ使う。で、凝固体にするにも一つ使うから、合わせて七つ」

 そして今日、偶然見つけた薬草は七つ。

 幸運でしかないな。

「まあ作れるからいいや」

「…………」

「何か?」

「……いや、そもそもクイングリンってなんで二つ使うんだ?」

「一個はそのまま使う。で、もう一個は二つに分けて凝固体にする」

「じゃあ四個でいいじゃん、薬草」

「なんで」

 三足す三足す一くらいできるだろうに。

 それがどうして四になるのだろう。

「いや、クイングリン一個作って、三つに分ければいいんじゃねえの。品質はがた落ちするにしても、五個以上作れれば黒字なんだろ?」

「…………」

「……ダメなんだっけ?」

「……えっと」

 いや、むしろそれが一番正しい気もする……。

 そっか、なにもクイングリンを二個つくらなくても最低限なら問題ないのか……思いもしなかった。

 いや本当に。

「だめだなあ、僕。最後の方は材料に困らないのが続いたからかなあ……節約意識が全然ないや」

「それはあるかもな。最後の方、材料はあっちが勝手に用意してくれてたし」

 うん。

 まあいいや。当初の予定通り作ろう。

 クイングリンのマテリアルは、『薬草、薬草、水、毒薬、術者の血液、虚水』。

 それを二セット器に入れて、さくっと錬金。

 ちなみに水は魔法で作れるけど、飲み水とか料理にはあんまり適していない。

 これは魔法の効果が終わった時点で消えちゃうからだ。

 けど、魔法によって発生したもの、を錬金術のマテリアルとする場合、その魔法が材料となった時点の状況が原則、維持される。

 つまり魔法の効果が終わっても、完成品としては消えないのである。

 だから水が無い!

 という時は、魔法で水を作り、錬金術で適当な錬金をすることで、普通の水として使えるようにできるのだ――なんて、まあ、それができたのはあっちでも僕ともう一人、マリージアという人だけだったり。

 あんまり気にしてなかったけど、結構高等技術なのかな?

 でもそうだとしたら僕が使える理由がなくなるか。

 ともあれ、ふぁん、とクイングリンが二個完成。

 片方を半分弱別の器に移しながら、意識を残った薬草一つに向けて、それを錬金……完成するのは器に入った粉だ。

 この粉が中和緩衝剤というもので、『同じものを混ぜない』ための道具になる。

 豊穣の石や賢者の石などのエッセンシア凝固体は、原則としてのこの中和緩衝剤を使い、同種のエッセンシアを『混ぜずに一つにする』ことでしか作れない。はずだ。もしかしたら抜け道があるかもしれないけど。例外が無い方がおかしいし。

 ともあれ、今作った中和緩衝剤を、二つに分けたほうのクイングリンと同じ器に入れて、錬金。

 ふぁん、と完成したのは薄い、緑色の石である――品質値は1422、やっぱり低いなあ。薄いもんね、色。

 ちなみにエッセンシアは通常、品質が高ければ高いほどその色は濃くなっていく。凝固体も同じだ。

 無色透明とか白黒灰色のエッセンシアもあるから目安程度だけど、クイングリンや豊穣の石は緑色とスタンダードな部類だし。

 今さっき僕が作った二つのクイングリンはある程度濃い緑色で、品質値は両方とも8262、つまり一級品である。

 その片方を二つに分けたやつは、それぞれ1052と2421になっていた。合計しても8262には遠く及ばないけど、これは当然だけど、品質値が分割されるわけではないからだ。

 で、それらから作った豊穣の石、の品質は1992。ぎりぎり八級品……まあ、1992個ほど薬草が作れる石、と。

 もっとも、クイングリンの品質的にどうせ826個作ったところでクイングリンが消えちゃうから、まずは826個だけど。

 最後にお茶碗と割りばしを錬金、土入りのプランターを作成。

 あとは、っと。

「洋輔、魔法お願いしていい?」

「もちろん」

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