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黒迄現在夢現  作者: 朝霞ちさめ
第三章 体育イベント二点盛り
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48 - 開幕・球技大会

 球技大会。

 それは男子四種目、女子四種目をクラス別で対決する体育イベントだ。

 男子の種目はサッカー、野球、バレーボール、バスケットボールで、女子の種目はサッカー、ソフトボール、バレーボール、バスケットボール。

 要するにほぼ同じということである。

 このイベントには順位の概念があって、これは学年別で競われる。

 一年生は一年生の四クラス、二年生も二年生の四クラス、三年生も三年生の四クラスということだ。

 つまり学年的にはちゃんと分割してるけど、男女の成績は統合されるわけである。

 順位の決め方は勝ち点方式で、各クラスごとに各種目二戦を行う。

 対戦相手はあらかじめすべて決まっているので、当日決めることはせいぜい、そのクラスでだれがどのポジションに入るか、程度のことだったり。

 バレーボール以外の競技では同点が発生する可能性があり、同点でも延長は無し、引き分けとして扱うそうだ。

 優勝したクラスにはちょっとしたおまけがつくけど、優勝できなくても一応基本的な参加賞として、スポーツドリンクをゲットできる。

 おまけについては事前に告知された『おかし』のほかにも何かがある、んだとか。ちょっと気になるけど、実際に獲得してからわかるらしいので、これはますます頑張らなければなるまい。

 ちなみに僕たち一年生の日程は、バレーボール・バスケットボール、サッカー、野球・ソフトボールの順。

 だから僕は早速、第一の競技、バレーボールから参加することになる。

 ちなみにバレーとバスケが併記されているのはともに体育館競技だからで、男子バレー・女子バスケで結果を出したのちに女子バレー・男子バスケをやるそうだ。移動の手間を省くということらしい。

 開会式を仕切ったのは校長先生と生徒会役員、そして体育教師の皆さんだ。

 今一名前覚えられないんだよね……特に他学年の先生って接点も基本的には無いし。

 ま、そんなこんなで、一年生は体育館に移動。

 さて、何度も繰り返すようだけれど、僕たち一年生の男子はバレーボールが第一種目となる。

 バレーボールに参加する男子生徒は六人、上木(うえき)くん、人長(ひとおさ)くん、泰山(たいざん)くん、村社(むらこそ)くん、昌くん、そして僕だ。

 ちなみに村社くんはバレーボール部に所属しているため、この六人の中では一番重要だ、と言っても過言ではない。

 他の生徒たちは見学となる。途中交代も部分的に可能なので、それを使う場合もある。

 ま、お遊びの側面もあるから、あんまり使わないだろうけどね。

「猶予があるから、その間にちょっと確認しておこう。まずはフォーメーションというか、配置だけど……」

 と言って、仕切ったのは当然村社くんである。

 バレーボール部に所属しているその感覚をいかんなく発揮してもらいたい。

 が、村社くんは僕たちをぐるりと眺めてつぶやいた。

「…………。なんでこのメンバーなんだろうね?」

 と。

「……身長的にバランスをとった結果じゃなかったっけ?」

「バランスとりすぎだろ……」

 僕の答えに人長くんが呆れがちに首を振った。

 というのも、だ。

 背の順で並んだ時で見てみよう。

 三組の男子で、前から一番目が僕、三番目が村社くん、四番目が昌くんという形になっている。

 後ろから数えてみると一番目が泰山くん、三番目が人長くん、四番目が上木くん。

 見事なシンメトリーという形である。

「で、配置はどうするの? やっぱり、背の高い三人がそろって前になるターンを作る?」

「それか、分散するか。悩みどころだな」

「分散でいいと思うよ。球技大会となると、部活とは違ってブロックがさほど飛ばないしね」

 それもそうだ。

「だから、最低限の決まり事を作っておこう。二番目にボールに触るのは、基本的に、ボク。セッターをやるよ」

 と、村社くんが宣言した。特に異論はない。

「二番目に触るってことは、最初には触れないってことだよね。残りの五人で拾う形?」

「そうだね」

 ふむ。

「で、最後にボールを相手陣地に返す子は、ボクが名前を呼ぶよ。普通に上げるから、可能ならスパイクを打って。それがだめでも、とりあえず手に当てて、相手陣地に返すようにしてくれればそれでいい」

 なるほど。事故防止も含むわけか。

 おんぶにだっこって感じもするけど、やむを得ないよな……。

「ただ、あんまりにもレシーブ……最初に拾えないようなら、ボクがダイレクトにやるかも。……でも、みんな大丈夫だよね?」

 ちょっとした挑発だ。が、ここにいる他の五人はその手の挑発になかなか乗らない子ばかりだったようで、むしろ首をかしげている始末だった。

 僕も含めて。

 いや実際やってみないとわかんないよ、これ。

「……まあ、うん。やってみればわかるよ。まずは一度……」

 初戦の対戦相手は――四組か。


「よろしくお願いします!」

 と、声を揃えて挨拶をして、いざ尋常に勝負が始まる。

 最初のセット、僕たち三組の布陣は、左から順に前衛に泰山くん、村社くん、上木くん。後衛は僕、人長くん、昌くんだ。

 じゃんけんの結果、先攻は四組になった。ちょっと残念。まあすぐにこっちでボールをとってしまえばよいのだが。

 ちなみに眼鏡は今日は最初からスポーツ用のものを着用している。

 尚、その眼鏡を見た涼太くん、及び昌くんの反応は、

『そこまでして伊達メガネにこだわるとは……いっそ執念を感じるぞおい……』

『まあまあ、六原。世の中どんな事情があるかわからないんだから。眼鏡フェチなのかもしれないじゃない』

 といった感じだったのだけど、フェチの使い方ってそれであってんのかな?

 あとで洋輔に聞いてみよう。

 とか言ってたら試合開始のホイッスル。

 せーのっ、と掛け声を出して四組の子がサーブを打ち込んできた。なお、『拡張機能:ベクトラベル』は遠慮なしで使っていく。

 ボールの軌道をピックアップして、僕の方に来るな。手を組み腕を揃えてレシーブ体勢、あとは角度を調整して村社くんの真上に矢印が反発するように調整して、無事レシーブ。

 ボールはするすると上がってそのまま村社くんの頭上へ。

 それに村社くんは少し驚きつつも「上木!」と叫んでトスを上げ、上木くんは見事にスパイクを叩き込むと、四組の子たちは反応できず、見事三組のポイント。これで0-1だ。

「驚いた……渡来、レシーブ上手だね」

「そうかな。そう言ってくれるとお世辞でも嬉しいよ」

「いやあ、お世辞じゃないよ。だってボク、一歩も歩かないですんだもの」

 ふうん、それ、やっぱり難しいんだ。

 どんどんベクトラベル視界は使っていこう。

 で、サーブ権がこちらにきたので、昌くんのサーブからスタート。

 昌くんは無理せず下手でサーブを打つと、それを当然のように四組の後衛の子が拾い上げ、それを別の子がトスとしてあげると、後衛の子がまさかのバックアタック。え、なにこの無駄のないプレー。

 驚きつつもベクトラベル視界で得ていた矢印から軌道を算出し、きっちりひろって村社くんの真上へと戻す。

 またも村社くんは驚いたような表情で、「泰山!」と叫びつつトス、泰山くんはちょこんとそれに手を当てた。

 が、それを咄嗟に四組の前衛の子が拾い上げ、またトスからのスパイク……ってまたこっちかよ!

 拾って村社くんの真上に戻してあげて、と。

「もいちど泰山!」

 今度はきっちりスパイクが決ま……あ、ホームラン。

「ああああ……やっちまった、すまん」

「いやあ、仕方ないよ。というか、一発で決めた上木がすごい。……ま、一番すごいのは渡来だけど」

「え、僕?」

「うん。だって相手、バレー部員四人いるんだよ。その四人のコンビネーションアタックを普通に三度も捌くとか。正直渡来をバレー部に勧誘したいくらい……リベロやらない?」

「考えとくよ。兼部先探してた所だし。でもまあ今は試合に集中しよう」

 お菓子ほしいし。

 っていうか四組、いくらなんでもバレー部員四人ってずるすぎない……?

「まあ三組は三組でバスケ部員四人いるから……」

「…………」

 バスケって五人でやる競技じゃなかったっけ……?

 いやまあ、別にいいんだけど。ちょっと偏り過ぎてる気がしないでもない。

 この分だと野球部に六人くらい所属してる組とかあるんじゃなかろうか。怖い。

 ともあれ相手のサーブ、は昌くんの方へ。

 あ、これは取りきれないやつか。えっと……こっちかな?

 ボールがこちらのコートに届くより前にコートから大きく左後方に移動、直後昌くんのレシーブが妙な方向にバウンドして、ちょうど僕が移動していたところにするすると飛んでくる。

 二回目のタッチ、だけどやむを得ないよな。

 村社くんに返せばいいかな?

 と視線を向けたら、村社くんがネットの内側、ちょっと高めに指を指していた。

 そこにもってこいってこと?

 んーと……この角度かな、と矢印から調整しつつ、アンダーで捕球。

 ボールはまたもするすると、おおむね指定された通りの場所に落ちていき、そこにきっちり村社くんがとんっ、とボールを押すと、ボールは自然に相手のコート内へと落ちた。

 おお、なんかすごい。

 で、こっちのサーブ。ローテーションして、僕が前衛に。前衛かあ。

 こちらのサーブ、上木くん。上木くんは下からではなくきちんと上でサーブを実施、相手のコートに入ったボールは、しかしきれいに拾われた。

 トスが上がった瞬間、ボールはどう見てもバックアタックをする方向らしい。

 ダメもとでブロックしてみようかな。やめとくか。

 色気を出して失敗したら目も当てられん。

 それに……。そのバックアタックを、人長くんがきれいに拾っていた。

 村社くんはそれを見て少し考え、

「渡来!」

 と僕を呼んだ。え、僕が打つの?

 助走とかしてないよ?

 まあ呼ばれたからにはやるけど。

 トスの軌道に合わせて、タイミングを合わせてジャンプ、問題はスパイクってどうやれば打てるのか、だけど……おもいっきり振り抜いたらホームランだよな。

 かといって角度を調整する方法なんて知らないし。

 いいや、振り抜こ。

 どんっ、と右手にジャストミート。

 ボールは……二階、ギャラリーへと打ち込まれていた。

 うん、ごめん。その近くで見学してた子は特にごめん。思ったより勢いはあっただけにちょっとうん。

「……なるほど。そりゃそうか。けどナイスだよ、渡来」

「ごめん……。スパイクなんて打ったことないんだよね……」

「……なら、変則だけどリベロっぽいことやってもらった方がいいな。『一回目は渡来』、『二回目は僕』を原則にちょっと数回試してみよう」

 というわけでまたも相手のサーブ。

 撃たれた時点で軌道を把握、僕とは反対側だな。けどまあするするっと移動して、捕球しながら村社くんに返しておく。

「泰山!」

 そしてトスが上がり、スパイクが打たれて。

 ふうむ。

 バレーボールという競技もなかなか奥が深い。

「渡来って、何。未来予知でもできるの? ってくらい、捕球がスムーズだよね。すごくトスを上げやすい……」

「そう? でも未来予知はできないな。できたら楽しそうだけども」

「そっか。……渡来にばっかり活躍させるのも、バレー部員として情けないな」

 ローテーションして、サーブは村社くん。

 とん、とん、とん、と三度床に跳ねさせて、すっと構えをとった。

 あれ?

 なんかラインから大分離れてる気がする。

「せー……のっ!」

 前半で村社くんは高くボールを投げて、助走をとってジャンプ、思いっきり打ち付けた。

 うわあ。なんかスパイクみたいな強烈サーブだな……身長で言えばかなり低い方なのに、威力はここまで高められるものなのか。

 ボールはほとんど一瞬で相手コートに落ちて、ぴっ、とポイント。

 ……正直あの規模になると、どこにくるのかわかっててもあんまり取りに行きたくないなあ。

 そして再び村社くんのサーブ、

「もういち……どっ!」

 と言いつつ、あれ?

 なんかさっきとフォームは大差ないけど、初速が違う……し、なんか軌道もめちゃくちゃだ。

 ぐにゃぐにゃしてる。

 そのサーブも、見事にサービスエースを叩き込んでいた。

 ……なんだっけ、あの無回転サーブの名前。フロートサーブ? フローター? なんかそんな感じの。

 いや、僕はまだ軌道が見えるからいいけど、僕とか洋輔でもないかぎり、ありゃ取りにくいよ……いや、それしかないならまだとれるだろうけど、普通の、強力な方のジャンプサーブまであるんだもんな……。

 っていうかそもそも村社くんって、運動は得意じゃない方……って話だったような。

 あれ?

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