擬態ト失態
ルーナーはゲルを改造し、次の段階へと着々と駒を進めていた、すると研究室にあるモニターにクロの姿が映されていた。
「上からの命令で彼を試験運転することになった、内容は以前作らせたカワを装着させて人間として社会の中で擬態できるかどうか...だそうだ、後はそっちの判断に委ねる...以上」
そう言ってモニターが切れた、科学者達はゲルを生体ポッドから出して〝カワ〟を装着させた。
「これが人間としての君だ...」
見た目は完全に人間であり、何処にでもいる普通の30代男性の姿をしていた。
「初めに言っておく、この〝カワ〟は非常に精巧にできている...がその反面脆い..このことを忘れるな」
科学者のチーフは念入りに言った、ゲルも頷いて理解した様子だった。
『メッセージ受信...名前〝その君〟は甲本准として生活してくれbyクロ』
クロがゲルの脳内に送ったメッセージだったそして〝甲本〟は黙って外に出て行ってしまった。
その頃栄次は、大学のラグビーの試合にスターティングメンバーとして出場していた、結果は栄次が在籍する早稲木大学の圧勝だった。試合が終わり打ち上げに行こうと皆でワイワイ騒いでた、栄次も先輩の角田の押しに負け不本意ながら打ち上げに参加することになった。
「朝日、食欲ないのか、全然食ってないぞ」
岩出が心配そうに栄次の顔を見る。
「大丈夫ですよ、岩出先輩は俺のことは気にしないでください」
無理に笑って誤魔化す栄次、岩出も嘘に気づいてはいたもののそれ以上の詮索は無駄だと考えたのか「お、おうそうか....」とぎこちない返事をしていた。
時刻が深夜を回った時、ラグビー部の仲間は酔っ払ってしまい、栄次が代行バスを呼ぶ羽目になってしまった。
「もしもし、代行バスお願いします...はい一台分を...はい...はい...」電話を切り、20分ぐらいが経ちバスが到着し、ラグビー部員を乗せて寮へと向かう、その途中に人間大の人影があった。運転手はブレーキを思いっきり踏んでバスを止めた。
「危ないじゃないか!」
運転手が大声で怒鳴る、その声で寝ていた皆が起きてしまった、また人影の主らしい男が歩いて近寄る、金属が何かにぶつかる音がした、バスのボンネットを男の拳が貫通した。
「見つかってしまったのだから消さねば」
そういいながらフロントガラスを突き破って中に入ってきた、ボンネットを突き破った拳は人間のものではなかった、緑の鱗に鋭い爪がそこにはあった。
「ば..バケモノ!!」 運転手が叫ぶとバス内に赤い液体があった、鮮血だ...運転手の首は吹き飛んだのだ、次に監督も殺された、誰がどのように死んだのかあの状況で覚えているわけはない...あの時は死を覚悟した。そして右腕をもがれて窓の外に放り出された。
「これで全部か...流石に脆いな人間は...カラダも傷んでる...一旦戻らなくては」
ゲルはそういいながら後を去った。
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……To be continued