第三十四話
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「おお勇者よ、死んだ上に呪われているとは情けない」
ここ最近ずっとこれ。
あの二人のかけた呪いは敵にすぐにばれた。
暗殺者たちが全員、羽の生えたえっちなお姉さんに変わっていて、俺に襲いかかってくるのだ。
ぱくっとくわえられたら俺を中心に爆発。
で、みんな巻き込まれる。はい全滅。
この繰り返しな。
「呪いとけます?」
「無理ですね」
中途半端とはいえみんなを生き返らせることが出来る神父はもちろん、クルルもクラリスも二人そろって「一度かけた呪いは」「そう簡単にとけないからこそ呪いなわけで」役立たずでした。
だもんで、自棄になった俺はクラリスのパンツを借りて最後の勝負に出たわけです。
「また死にに来るとは……いい加減諦めません? いやまじで」
仮面をつけたクラリスの妹(魔王に操られてる)に割と本気で嫌な顔をされたけどめげない。
クラリスのパンツを顔面に装着して叫ぶ。
「これでだめなら諦めます!」
「いやどや顔するところ?」「すうすうします……」
クルルとクラリスの声はさておき!
自棄気味に武器をだそうと念じたら、手の中に出現したのはブーメランだった。
紙切れがついてる。案の定読めない文字で、クルルに見せたら、
「人にぶつかった場合のみ、ぶつかった何かを奪う機能つき……だって」
とのこと。
「ふん。皇女のパンツから出た力がブーメランとは笑止」
鼻で笑う妹に対して、こちらは冷静だ。
「人の物を奪うことで成り立つ、王家ならでは感が凄いですね」
「パンがなければお菓子食べればいいじゃない、というやつか」
「そーなのかー? おかしうまいもんなー」
三人とも言い過ぎ。クラリスが顔を真っ赤にしてぷるぷる震えてるよ!
「お、お恥ずかしい限りです……」
「まあまあ。見てろって――いけ!」
思い切りぶん! と投げたブーメランは狙い通りの軌道を描き、妹の仮面に命中。
仮面を不思議な力で奪って俺の手元に戻ってきた。
「わ、私は一体なにを……お姉様?」
マジで戻ったな。
形勢不利とみたえっちなおねえさんたちは羽ばたいて一斉に逃げ出した。
まあ、その。なんていうか。
「クラリスのパンツすげえ。最初からこうすればよかったな」
「タカユキ、あんまり褒め言葉にならないと思う」
「っていうかずっと思っていたのですが、顔に装着しないでください!」
二人のツッコミに咳払いする俺ですよ。
いや……ちゃうねん。
物凄い良い匂いがすんねん。鼻で息をするたびに。
変態か。変態だ。
◆
「……で、馬車を手に入れて。城の警備の立て直しとか諸々あってクラリスとは一旦別れて、再び魔王を倒す旅に出たのはいいけど」
「やっぱり出るのね、盗賊」
御者台に座る俺とクルルの視線の先には、槍を手にしたオッサン盗賊がいた。
ここはちょうど森の中で、だからつい油断しちゃったのだ。
「やいやいやい! ここから先へは、あ!? いかせないぜーぇ?」
めんどくさい気配しかない。
だからだろうか。荷台に敷いた寝袋でルカルーとペロリは熟睡中です。
「やめません? 轢いちゃいますよ」
クルル。お前、めんどくさい気持ちはわかるけどえげつないこというな……。
「へ、俺の槍さばきは? あ! 超一流~~~なんだぜ!」
「めんどくさ」
さっさとなんとかしろよ、みたいな顔をして俺を見るなよ。
どうしたもんかなあ。大剣だしてぶっとばしちゃうか?
俺も大概だな。
そう悩んだ時、
「おいてめえ! なに子供の世話さぼってんだよ!」
林の奥から出てきたおばちゃんがおっさんの後頭部を全力ではたいた。
「いや、おい、ちょ、盗賊稼業中だろ」
「仕事をだしにすりゃあ育児さぼれると思いやがって! こちとらな! 何かがあったら責任100%にも関わらず泣くしか手段をしらねえ生き物抱えて限界なんだよぉ!」
「わ、わかった、な? な? あとで変わるから。な? 休んでいいし、一日中だらけててもいいから、な? 今はさあ、いいじゃん」
「よかねえんだよ! なんだよ一日だけって! 家にいる時ぁずっと面倒みろよ!」
ばしばしばし!
おばちゃんのビンタが炸裂した。
「わかったらすぐ帰れ。そして――……今週はあたしを安眠させろ。わかったか?」
「……はい」
「わかったかって聞いてるんだよぉ!」
「わかりましたぁ!」
……ううん。尻に敷かれておる。
「あ、すいませんねえ。うちの旦那が迷惑かけて。どうぞ、いってください」
「なんか……こっちこそすみません」
むしろ謝っちゃうよ。
「奥さん。育児って……大変ですか?」
いいよクルルも。聞かなくて。
おっさんなんともいえない顔してこっちをちらちら見てるから。
仲間になりたそうな顔をしてこっちを見てるから。
逃げたそうな顔してるから。
「旦那と実家次第ですねえ」
おばちゃんの目の隈もやばい。
疲労が滲み出まくりな顔がやばい。
「だって! タカユキは大変だね!」
どういう意味かな。
二人を選んだ時点で二倍になるから、ってか。
しかもそこまでちゃあんと考えていて、私はその気ですよってか。
はは!
墓穴しかないぞ。責任は取る気ですけども。
そういうこと、軽々しく言えないじゃん。
「し……失礼します」
微妙な顔で手綱を操り、その場をさっさと退散する。
育児は大変。
覚えておかねば。
つづく。




