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第三十二話

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 さあて……困ったぞ。


「あ、ぅ……おぅ」


 びくんびくんと震えるクルルは、先手を譲られて俺と合体。

 夢中になっている隙を見たクラリスが例の薬を用いてクルルを背中からお尻から責めて、あっさり気を失わせてしまった。

 皇女様つよい。


「く、クラリス……一つ質問があるんだが」

「なんでしょうか?」

「……きみ、確かにこの前俺とするまで未経験だった、よね? あれ? 俺の勘違い? 卓越した技を感じるんだけど」

「勇者様の勘違いではございません、奪っていただくまでクラリスは生娘でございました。ただ……未来の旦那さまにご満足いただくために、メイド達より学んでいるだけです」


 まじやばい。

 なにそれ。股間によろしくない。


「肉体作りも、感度の向上も、中の具合も……性技もなにもかも。未来の旦那さまにご満足いただくため、すべて作り込まれております」

「……お、おう」


 クルルが負けるとかどうとか、そういう騒ぎじゃない。


「……では、まいります」


 俺がやばい。

 手玉に取られる予感しかしな、


「アッ――!」


 ◆


 翌朝、暗い顔をして俯く俺とクルルの横で、つやつやになったクラリスを見て、ルカルーはすべてを察してくれたようだった。


「王族には敵わなかったわけだな」

「「はい……」」


 力なく返事をする俺とクルルにルカルーが呆れた顔に。


「勇者まで負けてどうする」

「ごもっともです」

「じゃあひとまず、このパーティーの主は勇者からクラリスになったわけだな」

「「えっ」」


 そんなばかな、という顔をする俺とクルルを半目で睨むルカルー。


「だってそうだろう。一番強いヤツが頭を張らなくてどうする」

「う、んん……」「それは……そうだけど」


 えっちで頭が変わるパーティーってどうなの?


「で? クラリス。どうするんだ?」


 皇女相手に気さくに言っちゃうあたり、ルカルーの育ちはお察しだ。

 そしてそんなことに目くじらを立てる皇女でもなかった。

 第一印象のクラリスなら怒って剣を向けてきそうだけどな。

 素のクラリスは明るくちょっと天然入った上で、賢いのだろう。


「王位継承権第一位の者にしか明かされない城の抜け道があります。そこから玉座の裏手に回り、一気呵成に妹カナティアを討ちます」


 いやそこは助けるでいいと思うけども。まあいいか。


「敵にバレている可能性は?」

「ありません。代々王から子へ受け継がれる口伝ですので」


 ……ん? 何か違和感。あれ、俺の気のせい?

 それよりも、とクラリスは周囲を見渡した。

 エルサレンに連れて行った騎士達の何人かが顔を上げる。


「騎士たちに正面から攻撃を仕掛けさせます。その騒ぎに乗じて城を落としましょう」

「……そう簡単にいきます?」


 クルルのそれは昨夜の勝負に負けた悔しさなどはさておいた、素朴な疑問だった。


「街に支配の手を伸ばさず、城を占拠しただけ。これだけでも十分、王国にとっては大打撃であることに違いないけれど……でも、命を奪わずのこの手口。魔王からのたんなる嫌がらせに過ぎません」


 断言か。クラリスは鼻息も荒く、テーブルに手を置いた。


「だから取り返して突きつけてやるのです。次はお前の番だ、とね」


 ……燃えてる? なにげに凄い燃えてる?


「いきますよ! えい、えい、おー!」


 クラリスの号令に「おー」とまばらに声を上げる俺たち。

 ……大丈夫なんだろうか。


 ◆


 騎士との打ち合わせを済ませ、街の外へ。

 王の墓所から地下通路に入る。

 ネズミだ虫だのがわんさかいる通路だけに、クラリスもクルルも俺の腕をがっちり掴んで離さない。そのため非常に歩きにくい。


「明かりよ明かりよ明かりさん。まんべんなくてらすといいぞ!」


 やる気の無い声と一緒に杖の先端に光を灯すペロリは無邪気。

 気を張っているのは俺とルカルーだけだった。


「にしても、直線だな」

「虫やネズミ以外の気配はない」

「こんなところで罠でも仕掛けられようもんなら、俺たち一瞬でおだぶつだよな」


 ルカルーと苦笑いで見つめ合う。

 でもまさか、そんな、ねえ?

 そう思った時だった。


「あっ」


 クルルとクラリスが何かを踏んだ。

 かちって。かちって音がしたよ。

 王の墓所で、知るべき人しか知らないからこそ、知るべき人しか通らないはずの通路で。


「た、タカユキぃ」

「勇者様ぁ」


 ええい、二人揃って涙ぐんで俺を見るな!


「待て、落ち着け……」


 周囲をきょろきょろ見渡す。

 何も変化なし。ルカルーを見たら、首を横に振る。


「何も聞こえない」


 なんだけど「どうしたのだ、皇女さまー」ペロリが照らしたクラリスの顔が青ざめている。


「……あと、少ししたら、道が、崩壊します」

「えっ」

「絶対踏まないでね、って、いわれたことがあるのを今、思い出しました」

「「「えっ」」」

「ど、どどどどど、どうしましょう?」


 涙目で見てないで!


「は、走れーっ!」

「どっちへ!?」

「前だ! 城に行くしかあるまい!」


 クルルとクラリスを引っ張って、強引に走りだす。

 ルカルーもペロリを抱え上げて必死の形相で疾走。

 クラリスの言葉が嘘ならよかったんだけど、


「後ろ! 後ろから凄い物音!」


 真っ先にクルルが声をあげ、ルカルーが頷く。

 そして間もなく俺の耳にも、どどどどど、と物凄い音が聞こえてきた。


「出口から壊れたら意味ないんと違うんか! 自爆用か、自爆用なんですか!?」

「ご先祖さまに言ってくださいぃいい!」


 クラリスの弱音はごもっとも!

 結局全力疾走で、ふり返ったら崩壊がすぐ間近に迫ってくるわで。

 階段を駆け上がって見えてきた扉に全力で体当たりをして、みんなでごろごろ転がりながら到着して――……


「やんっ」


 顔を上げたら誰かのロングドレスのスカートに後ろから頭を突っ込んでいた。

 目を開けるとクラリスのようなロイヤルパンツが見えた!


「勇者さま!」「タカユキ!」


 女子二人の怒りの声と共に引っ張られて、目にしたパンツの主……それは。


「勇者さまご一行とは……奇襲なんてやってくれるな! しかし来るならそこからだと思っていたぞ!」


 ば、ばれている!

 いや妹も王族なんだから知っててもおかしくないだろ!

 仮面をつけてはいるが、金の髪といい声質といい妙にたまらない身体つきといい、クラリスの妹カナティアに間違いなかった。


「者ども、出でよ!」


 ぱちんと指を鳴らした途端、あちこちから騎士の格好をしたあの暗殺者連中が出てきた。


「さあ、倒せ! 跪かせよ!」


 腰に巻き付けたムチを手にしてカーペットに振り下ろす妹。

 その頭には王冠がついている。

 けど、やっぱり……妹だ。クラリスによく似ている。


「いいのか?」


 ぶちのめすのは良心が咎めるんだけども。

 ここで聞くことじゃないとわかった上で、それでも敢えてクラリスに問い掛けた。


「あの仮面を壊せば、きっと」

「ああ、そういうアレなんだ」


 っていうか言って。そういう大事な勝利目標は最初に言って。

 まあ……


「いいけどさ!」


 大剣を取り出して、叫ぶ。


「ルカルー、ペロリは暗殺者の相手を!」

「おう!」「らじゃー」

「クルルは俺たち全員のサポート、出来るだろう!」

「呪いの後始末お願いね!」

「クラリス、戦えるなら俺のサポート! 出来ないならついてこい、俺が護る!」

「はいっ」

「いっくぞおおおおおお!」


 熱い戦いがいま!




 つづく。

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