第二話
02------>>
「これを履いて」
石造建築の部屋に入るなりクルルが俺に差し出されたのはトランクスだった。
白ブリーフの次の階段、トランクス。
未来からやってきた野菜の息子……うっ、頭が。
「どうかしたの?」
「いや。トランクスを見たら頭が痛くなって」
「……特殊な病気にでもかかっているの? それとも冗談のつもり?」
そんなこと聞かれても、正直まるでわかりません。
「まあいいわ。はやく履き替えて」
真顔である。
「「…………」」
受け取って、沈黙。
クルルは早くしろと言わんばかりに俺を見つめてくるが、その。
「いられると困る」
「なぜ」
正気か。
「……脱ぐし、脱いだら見えちゃうじゃないか」
「それの何が問題なの」
正気なのか。
「早くして」
「……見たいのか?」
「なにを?」
……正気なのか。
「いいからあっち向いててくれよ」
「だめ。あなたがパンツの中に何を隠し持っているのかわからないじゃない」
正気っぽいな。
真面目な顔しているし、ドS心を覗かせるような嗜虐的な感じはしないし。
「でもなあ……男の裸みたいか?」
「いいから脱ぎなさいよ!」
がっとパンツを掴まれたかと思ったら、ぐっと引き下ろされそうになる。
その瞬間だった。
でろでろでろでろでろでーでれん。
妙な音がパンツから聞こえたのは。
「え、なにいまの」
「の、呪いの音!? 外せないというの!?」
いや、待って。お願いだから、待って。
「どういうこと?」
「そのパンツを脱ぐことは永遠に叶わないわ!」
そんな迫真顔で言われても困る。
「なら!」
クルルが壁際の衣装箪笥からシャツを取り出して、俺に羽織らせようとするが……
でろでろでろでろでろでーでれん。
またしてもあの妙な音が、俺の右乳首から聞こえた。
「くっ……なんてこと! 妙な魔力を感じると思ったら、あなた……」
一歩、また一歩と下がり、クルルは俺の右乳首とパンツを恐れるような顔で交互に見つめてくる。
「やだ……なに?」
思わずカマ口調になると、気持ちわるっと呟かれた。
いやだって、そんなにじっくり見られた経験なんてないよ。多分。
とはいえ状況が理解出来ないので、弱った。
パン一希望なし。
服を着せられそうになったら、パンツは脱げずシャツも羽織れない。
そんな俺の目の前で、クルルはスカートの中に手を入れた。
かと思うと、一枚の布地をおろして俺に突きだした。
「かぶって」
ほかほかの縞パンだった。
「もしこれをかぶることが出来たなら、あなたは伝説の勇者かもしれない」
そんなことを言う(はいてない)クルルのほっぺたは真っ赤だった。
つづく。