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第十七話

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『コマンド パンツ

     →耳をかく

      ズボンを脱ぐ

      にげる』


 というわけで耳かき続行一択でした。

 たとえば毛むくじゃらな耳だったら戸惑いもするんだが、毛で覆われているのはあくまでも耳の外側だけ。内側の肌には薄らと血管が見える。そういうところは耳かきをする必要なんて感じないくらい綺麗なものだった。

 となれば必然、耳に異物が入らないようにするための毛をかき分けて根元を撫でるしかない。

 ウサギの耳の根元っていじっていいのかな。

 まあ指でぐりぐりした以上、今更弱腰になっても仕方ない。


「まだぁ?」


 口を半開きにして発情しまくりなクルルを前に退路もなし。


「まいります」


 付け根あたりを手のひらで支えて、耳かきを持つ手で毛をかき分けた。

 するとどうだ。白い塊めいた垢みたいなものが薄らと見える。

 恐る恐る耳かきの先端を近づけて、肌に這わせるように掻きだしてみる。

 かり、と先端が擦れただけで、


「んぅっ」


 びくんと身体を震わせた。

 クルルが動いたせいで垢が少し奥へいってしまう。


「こら、動くな」

「れも……むりぃ」


 えっちに慣れた時よりもよっぽどあまったるい声をあげるクルルに前屈み。


「無心だ……」


 唸りつつ、耳かきを奥へ送る。

 肌に触れてもいないのに、それだけで「そ、そんなに入らないよう」と弱音を吐くクルル。

 ウサギは耳がよほど敏感なのか、それとも初体験だから敏感になりすぎているのか。

 或いはその両方なのか……ともあれ。


「とらえた」


 かり、と引っかけて垢を拾い上げるだけで「~~っ」足をじたばたさせるクルル。スカートのあたりにしみが出来ているように見えるんですが……気にしたら負けだな。


「……よし、取れた」


 取り出してみると、部屋のランタンの炎に照らされて見えたのは抜け毛などを巻き込んだ結構大きな垢だった。

 この様子だと似たような垢が結構ありそうだな……と思って注意深くウサミミの穴を覗き込んだらまあ、あるある。似たような垢がちらほらと。


「覚悟しろよ。深く入れるぞ」

「ら、らめえ……むり、あっ」


 問答無用とばかりに入れて、傷つけないように気をつけながら耳かきを這わせるだけで「あっ」だの「そ、そんなに奥、つんつんしちゃらめ」だの。

 どれだけ俺を前屈みにさせたいんだ、まったく。

 一つ、また一つ。ただ垢を取ることだけに集中していなければ押し倒していた。

 三つ目を取ったあたりで限界を迎えたクルルが「らめえ……らめえ」と俺のズボンをヨダレまみれにしていただけで飽き足らず、ウサミミを倒して穴を隠そうとしたので、


「動くんじゃない。無理ならせめて、俺の手でも握っていろ」


 ウサミミをおさえた腕はそのままに手を差し伸べると、迷わずクルルが掴んできた。


「いくぞ」

「……ん」


 ツバさえ飲み込めずにたらりとヨダレを一筋たらしてクルルが頷いた。

 やれやれ……。


「こっちは……あと二つくらい塊があるな」


 深呼吸をした時に濃密な女の香りを感じた。

 横目で見ると、俺のベッドはぐっしょり濡れていた。

 おもらしなのか、それとも噴いちゃったのか。

 今更だな……諦めよう。


「さてと」


 一つ片付け、最後に相当奥にある垢をそーっと耳かきですくい取ろうとしたら、こびりついていた。

 傷つけないような力加減って難しいよな。そもそも撫でていい部位なのかもわからない。

 わからないが、こんな垢を放っておくワケにもいくまい。

 丁寧に丁寧に、垢の付け根を撫でるたびに「は、あ、あっ」舌を突きだしたクルルから女子とは思えないような力の強さで手を握りしめられる。

 足なんかぴんと伸びていて、ぷし、ぷし、とスカートの内側から聞こえる水音。

 それだけに留まらない腰のかくつき。

 本当に弱いんだな。


「らめ、めえ、め――い、いっ」


 もはや言葉にならず「くっ」と歯を噛みしめると全身を痙攣させる。

 その拍子にごりっと耳かきが触れて垢が取れた。

 咄嗟にさっと耳かきを引き抜いて取り出すことに成功する……のだが。

 じょろろろろろろ……という水音の正体は気づかずに済ませられた方が良かったに違いない。


 ◆


 顔を真っ赤にしてがくがくと身体を震わせたかと思いきや、今度はもう動かないクルル。


「なあ……おい、クルル」


 呼びかけても揺さぶっても応えない。

 すう、すう、と浅い呼吸を繰り返すだけだ。気を失っている様子。

 耳かきしかしてないのに、ベッドの上はぐっしょりだ。

 とはいえ……布で拭ってやりたい気もするので、風呂上がりの布の使っていない部分を丸めてクルルのウサミミを撫でていたら「ぁ」びく、と身体が揺れた。


「クルル?」

「……――あ、え」


 うつろな視線を俺に向けてぴたりと停止。

 次いで、赤いままの顔を俺に向けて口がゆっくりと、確実に大きく開く。

 俺の手を離して、ばたばたと暴れたかと思うと枕を掴んで執拗に殴ってきた。


「なに! なんだよ!」

「この! ウサギ殺し! 変態! ばか!」


 動くたびにびっしょに濡れたベッドが微妙な音を立てる。


「……ばか」


 不意に攻撃がやんだかと思うと、クルルが枕を抱いて恨みがましい目つき&上目遣いで俺を睨んでいた。


「…………」


 じーーーーっと見つめてくる。


「あ、あの。無言なに。なんだよ、だめだったか?」


 耐えきれずに尋ねると、


「……ミミ処女奪われた」

「おまっ、す、すごいこというな。なにそれ、どういう意味なん」

「タカユキじゃなきゃ……だめな身体にされた」


 ぐすんぐすん。

 そんなことを泣きながら言うもんじゃないと思うんだが。


「すごくよかった」


 ほっぺたを膨らませて言う台詞なのかな。

 まあおもらしして、たぶん何度もいっちゃうくらい気持ちよかったんだろうけれども。


「……もうかたっぽもやって」


 目つき。だから目つき。な?


「いや……気づいてないかもしれないけど、片っぽだけでベッドが大惨事だからな。ぐしょ濡れだから。お前また漏らすと思うよ? いいの?」

「タカユキのベッドだし別にいい」

「よっしゃ、その根性かったるわ……ってなんでだよ! やってもいいけど、終わったらお前のベッドで寝かせてくれよ」

「……そうしなきゃ、やってくれない?」


 おおいクルル。またしても知能指数さがってませんか?


「やってくれるなら……いい。なにされてもいい。だからやって」


 さがってるね! 間違いなくさがってるね。

 やれやれ、しょうがないな。


「横になれ。あと、やる前に下ぬいじゃいなさい、汚れるから」

「お母さんみたいなこというね」

「誰がお母さんだ。いいから早くしなさい」


 そう言うと、クルルは迷わずスカートを脱いでぺいっと床にほうり投げた。

 ぱさ、ではなく、べしゃっ、だったあたりで察してもらいたい。

 パンツは俺が持っているのでノーパンで、だから丸見え。

 すぐに布団の乾いた部分で隠されてしまったけど、まあいい。


「いくぞ」

「ん」


 結構楽しいからな。もう片耳、張り切っていこうか!




 つづく。

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