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支度
あれから、 およそ七年たった。ジャスティスは十七歳。
あのとき貰った本は、もうぼろぼろだ。嬉しくて、何回も何回も繰り返し読んだせいだろうか。カインドに「もう捨てたら?」と、何度言われたかわからない。
「ジャスティス。もう行くの?」
「あぁ。加齢臭じじいと同じ道に進むなんてな。」
自室で旅の支度をしていたジャスティスに、カインドが問う。
ジャスティスは、あの本を手にして俯いた。
「小さい頃からの夢だったとはいえ、やっぱりここを離れるのは寂しいな。」
「ふふふ。でも、ワールドトリップになったらお別れは付き物よ。・・・・・自分自身ともね。」
カインドは、震える肩を片手でおさえた。だが、震えは止まらない。
「ローンギングは、自分の信念を突き通して死んだんだ。あんたが泣くことはない。」
ジャスティスは旅の支度を終えると、静かに部屋から去った。