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私が泣き叫ぶはずがないでしょう?

「私が泣き叫ぶはずがないでしょう?」


にこりと笑っていったその言葉に怒気や冷気を込めて言ったのは本気を知ってほしかったから。そしてこれくらいでへこたれる訳がないと自分自身に言い聞かせるため。

それに、私。

独りだけなら昨日のような女々しい性格でなくなるのです。


***



やけに眩しい朝日に違和感を覚えて。ついでにいうとふかふかすぎるベットに天蓋付きっていう………って!

がばり、と勢い良く起き上がって辺りを見回す。お高そうな壺やらなんやら(私にはいっさい価値がわかりませんが!)が多くなく少なくもなく丁度よいくらいに配置されていて、白を基調にした部屋の作りからして高級感が伺える。ついでにいうと、身につけているものまで変わっていた。

私が身につけていたのは紺のブレザーに紺のプリーツスカートの一般的な制服で今着ているのはいかにもーなお姫様の寝間着でございます。えぇ、いつの間にやらとゆうか勝手にですよ、と。このフリフリを取りたい……。と現実逃避していたところに扉がノックされる音が聞こえてつい身構える。


「__失礼します、あら起きてらしたのですねよかったです。」


「……オハヨーゴザイマス」


困惑気味な挨拶もにこりと返されて戸惑う。彼女は言わずもがなメイドさんです。はい、にこやかに私がこちらに来たときに着ていた服を渡されてお待ちになっていてくださいと言われて出て行かれる。

とりあえず長年というか、着慣れた制服に袖を通す。


普通は、ここでパニクったりするものなのだろう。

もといた世界と比べて卑屈になってしまうものなのだろう。

あぁ、異世界に来てしまったのかとでも感慨に耽るものなのだろう。


いわゆる、主人公様々と呼ばれる方々は自問自答やら涙を流すやらするのだろうが、私は違うってゆうか昨日の時点でアウトだけれどそこは大目に見てほしい。それに、まだ帰れないと決まった訳じゃない。たぶんだけど……。だから悲観的になるのはその後幾らでもできるだから今すべきことは状況を把握すること。


「大丈夫……」


自分を落ち着かせて常に逃げ道を探すのは十八番である。屁理屈でも何でもここは譲ってはいけないから。


「__準備できた?」


にこやかに笑って私を迎えに来たこいつが悪魔だろうが魔王だろうが関係無くつぶ___……。こほん、説き伏せてやるっ!

目の前の金髪碧眼は私が落ち込んでいるとでも思ったのかチラチラと前を歩きながらこちらを伺ってくる。まぁ、昨日の時点で私ちょっと、否だいぶ可哀想な子だったよ。まぁいきなりだったしね。うん、大丈夫。私は私。

小さく深呼吸を繰り返して落ち着かせる。

彼とは一言も話さずに……って、あれ?


「……貴方、だれ?」


昨日の金髪碧眼はもっと小さな子供だった。同じ色のローブを着ているけど背丈がまるで違う。困惑する私にしてやったりとしたり顔な彼がまた今度教えてあげるよ、と言ってまた歩き出す。いや、別に結構です。昨日の金髪碧眼と今の金髪碧眼が同一人物だとわかったので。仕組みは多分魔法かなんかでしょう?と問いただしたくなるのを我慢して彼の後をついて行く。だてにあの現代社会を生き抜いてはいないわ!


「ミウ?」


「………名乗った覚えはないけど」


いつの間にやら私の名前を知っていた金髪碧眼に軽蔑の眼差しを向ける。変態セクハラ………あらゆる汚名が浮かんできて思わず後ずさる。そんな私を見て苦笑いして昨日君の隣の男が叫んでたでしょ?と言うからあぁ、と頷く。そして浩貴の歪められた最後に見た顔が思い浮かぶ。泣きたくなるくらい必死に守ろうとしてくれた彼。もう戻れないないと思わず考えてしまって頭をふる。


「多分、聞きたいことがたくさんあると思うけどとりあえずは我慢してね。ミウ」


困ったようにそういって笑うからなんだかこっちが悪いのではないかと思ってしまう。悪役なら悪役らしく高らかに人を見下すように笑っていてほしい。じゃないとこっちまで罪悪感なんかを感じてしまうから__


「__陛下がお待ちだよ」


ぴた、と彼の足は大きな荘厳の扉の前で歩みをやめた。それと同時に開かれる扉。無意識に拳を握っていた手を外して深呼吸をする。


 大丈夫、私は。


そして、真っ直ぐ前だけを見て一歩踏み出した。


赤い絨毯が敷かれ清潔感に溢れた金や白を基調にした壁や柱。上座に豪華な椅子が置かれそこにまだ若い青年が座っていた。遠目からしか見えないけれどね。金髪碧眼が中央、上座よりも少し手前で跪いたので私はその隣で同じ様にする。うん、これ以外とキツいかも……。膝が膝がプルプルしますっ!

「楽にせよ」


人を従わせることになれた声がかけられて金髪碧眼共々立ち上がり軽く礼をする形で待つ。


「面を上げよ」


そうしてやっと陛下と呼ばれる人の顔を拝見することが出来るので。日本人として生まれ王権制度など経験したこともない私としてはこんなこと、めんどくさい以外の何物でもないのですが、礼儀を欠くつもりもクソもないので相手に欠かれたとしてもです。

上座に座っておられる陛下は燃えるような朱の髪に同じ色の瞳。うん、ここでもお約束のアレですよ。えぇ、美形様々です。なんですかこれは逆ハーですか。フラグでも立たせるおつもりですかっ!


「そなたが……フィジーの魂をもつ者なのだな」


「フィジー……?」


 聞き慣れない単語、というか名前?それに魂って何……。


困惑している私を見て陛下は上座から立ち上がり、よもやこちらに向かって降りてきたのだ。………え、なんですか。

そして溜め息をつかれた。


「おい、グラン。お前説明してないのか」


呆れた視線が隣の金髪碧眼に向けられる。

そしてすかさず。


「はい、そして名前すら教えてもらっておりません。それに連れてこられたと言うよりもさらわれたという方が適切なくらい私への配慮がありませんでした。失礼ながら陛下。それはこの国が他人の事情すら考慮せず自らの欲だけでしか行動できないと思ってもよろしいのですか?」


周りに控えていた臣下らしきひとから避難の視線が浴びせられる。


 あー、もうこそこそ五月蝿いです。


私は前置きにご無礼をお許しください、とひざを折り恭しく礼をする。突然のことに驚きすら隠せない陛下と隣のグランと呼ばれた金髪碧眼。私は大きく息を吸って。




まだちゃんとした自己紹介も出来てないけどいきなり突っ走る主人公。

嗚呼、どこへいくのやら……。

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