帰国子女
ーーーもしも人類が、2度生きられたら。
狂う奴もいれば、泣いて喜ぶ奴もいる。僕はどっちにいくのだろう。
そんなの、自分次第。
自分で選択しなければならない。
ーーーもしも人類が、死にたくなったときすぐに死ねたら。
これまた狂う奴もいれば、喜ぶ奴もいる。
それを決めるのは自分。
自分次第。
ーーーもしも人類に、死ななければいけない奴が現れたら。
それもーーー自分次第。
これこそが、"死の選択"
全てはここから始まった。
「死ね」
そうやって人々は、ごく普通にこんな言葉を言う。
こんな言葉を、軽々しく口にする今の時代は狂ってる。そう思った瞬間のことだ。
「なあ、やっぱりアイツおかしいんだ。」
友人の蓮だ。
「何がだよ。」
"アイツ"とはきっと、帰国子女のことだ。
4歳か、12歳までボストンで暮らし、親の仕事の都合でつい最近日本に帰ってきた。
だが、少し不思議に思うことがある。
つい最近までボストンで暮らしていたのに、英語力が全くないこと。更には、日本語があり得ないほど上達しているのだ。4年間しか日本にいなかったのに、一体その脳は何なのか。
‥それから。
「‥アイツ、人を殺せるんだよ」
信じられない言葉だった。それはどういう意味なのか。初めて蓮を疑った。
「まさか、なんかの冗談だろ。」
その言葉を口に出し、蓮の目を見ようとしたときだった。蓮の目ではなく、自分の目を疑ったのは。
ーーー担任の、山崎。側には相談室の中村が寄り添っている。号泣している山崎を落ち着かせようと、背中を大袈裟に摩っている。山崎は、体の力が一気に抜け、床に座り込んだ。
「先生、落ち着いて下さい。お気持ちは教師全員同じです。」
「‥わた‥‥し‥‥‥‥のせ‥‥いと‥‥」
確かにそう聞こえた。"私の生徒"
教室の雑音が一気に聞こえる。僕は必死に考えた。"私の生徒"とは、どういう意味なのかを。何度考えても、答えは出ない。中村が口を開く。
「みんな落ち着いて!今ここで詳しくは話せないことなの!バッサリ言うから!お願い!山崎先生をこれ以上不安にさせないであげて!」
生徒たちは、一瞬にして静まり返った。僕はドキドキという言葉では収まらないくらい、心臓が止まりそうだった。僕のクラスで何が起きたのか。一体何をしたというのか。
「‥山田さんが‥‥亡くなったの。」
クラスは唖然となり、悲鳴を上げる女子たち。
「昨夜‥心臓麻痺で‥亡くなった。」
あり得なかった。人一倍健康に気をつかっていて、毎朝ジョギングをしていて、嫌いな食べ物はお菓子という、健康という言葉が誰よりも似合う女子だった。
なのに、なぜ。
ふと何かが頭をよぎった。
「アイツ、人を殺せるんだよ」
蓮の言葉が蘇る。
まさかとは思った。コイツがそんなこと‥
見た目は、全然普通の女子。むしろ僕から見たら、可愛い女子。なぜ、蓮はこんなことを言ったのか。不思議でならない。
「‥もしかして‥‥」
一人の女子が口を開く。
‥帰国子女だ。初めて声を聞く。
「もしかして、その子は自殺したのでは?」
風のように囁く声。身体中に鳥肌が立つ。
先生は、そんな訳ないとかなり否定している。けれど蓮は、冷たい眼差しで帰国子女を見る。何を企んでるんだ、一体。
「」