私の妹は可愛い。
※巻き込まれて戻ってきました。その後。娘side
私は、守護神・キーナと呼ばれる、防御に長けた神。お母様みたいに知識があるわけでもなく、お父様みたいに強い力があるわけではない。だけれども私は結界などを張る能力は誰よりも長けている。
そんな私にはつい去年に妹が出来た。
「ユーキ」
「んー?」
去年生まれたばかりの妹に声をかければ、つぶらな瞳でユーキはこちらを見据えた。
ユーキは、人間の姿のお母様と神であるお父様との間に出来た子供だ。お母様は神だけど、人の姿でできた娘だから、多分半神と呼んでいいと思う。実際に、神力もユーキはそんなにない。
今のお母様譲りの黒髪に、お父様や私と同じ色の目。
神は子供が出来にくいから、妹なんて出来ると思ってなかったから何だか嬉しい。
小さな存在が可愛くて仕方がなくて、私が世話を見るからいちゃついてていいよっていったらお母様とお父様はそのまま部屋にこもっている。
どうせ、あのバカップルな夫婦な事だ、ラブラブしてるんだろう。なんたって、二千年ぶりのお母様なのだ。
お母様は自由人で、お父様はお母様が大好きで。だから二千年もお母様がいなくてもお父様は一度も誰かに手を出す事はしなかったし、お母様も誰とも恋愛関係にならなかったらしい。
ユーキを抱きあげる。
神界にある、家の中で私はユーキを抱きあげて椅子に腰かける。
「ユーキ、お姉ちゃんよ、お姉ちゃん」
「おねー?」
「お姉ちゃん」
「おーちゃ?」
どうにかして言おうとしてるけど言えない様子が何とも可愛らしい。それにしてもこの子の成長はどうなるんだろうか。私たち神は寿命がないにも等しい。消滅させられるとかいう滅多な事がない限り消えないし、死なない。
でもこの子は違う。人の姿のお母様と、神のお父様の子供。お母様は人の姿とはいっても神様だし、普通の半神とは違うかもしれない。だけれども、一般的な半神は寿命が人間より長いとはいってもいつか死が訪れる。
この子も、この小さい子もいつか死んでしまうのかな。それを思うと寂しい。何十年、何百年、何千年、この子は生きられるだろうか。
お母様は人の姿で死んだら、また別世界に転生するって言ってたけど、次にいつお母様が帰ってこれるかはわからない。冒険に飽きて、お父様に会いたくなったら帰ってくるだろうけれどもそれまでどれだけの時間がかかるんだろうか。
数十年で、人の身のお母様は死ぬ。一緒に居られるのは、数十年。その間なるべくお母様とお父様を一緒にしてあげたい。冒険にいったらお母様が次帰ってくるかわからないわけだしね。
妹が可愛くて仕方がないから面倒見るのも断然楽しいし。お母様が構ってあげられない分私が精一杯愛情を捧げてあげようなんて思ってしまう。こんなのだから周りにシスコンって言われるんだろうなと呑気に思う。
そうしてしばらくユーキとじゃれあっていれば、
「キーナ」
お母様の声が響いた。
振り向いたら入口に、お母様とお父様が立っている。お母様は何処かぐったりしていてお父様に抱えられて――…って、やっぱりいちゃちゃしてたんだなーって思って何だか呆れる。
「お母様、お父様」
やっぱり、お母様とお父様が一緒に揃っている方が嬉しい。お父様は一人だと速くお母様が帰ってこないかなーって何処か少し機嫌が悪いもの。やつあたりでちょっとヤンチャ(そういっていいレベルじゃないけど)したり、寝言で「メイリン」って呼んでるの何回も聞いたしね。
お父様はお母様を抱えたままこちらに寄ってくる。
「ユーキ」
「あうー?」
お母様の呼びかけに、腕の中のユーキが反応を示す。
腕を伸ばしてお母様を見ているユーキは可愛い。何だろう。今まで見たどんなものよりかわいく見えるのはやっぱりたった一人の妹だからだろうか。
仕草とか声とか、何か全てにおいて可愛い。
「可愛いわねー」
「流石俺とメイリンの子」
「うん、ユーキ可愛い」
上からお母様、お父様、私の台詞だ。三人そろって、ユーキに夢中である。
「キーナも赤ん坊の時はこんな感じだったわよ」
「でも私って既に神力に目覚めてて自我はっきりしてたじゃない」
「そうねぇ。全然手がかからなかったわ」
私はこの世界の神の中でも、力の強い知と探求の女神・メイリンと武神・アルスの娘だったからか、神力も強くて生まれてすぐにきっちりと自分が何の神かとか、色々とわかっていたものである。
それに比べてユーキは人間の子供と変わらない。神力はあるし、何かしら強いんだとは思うけれど。
「この子はどんな子になるかしらね」
「こんなに可愛いんだからきっとモテモテになりそう」
「そうね。そういえばキーナは意中の相手とかいないのかしら」
「お母様がいない間に人間と恋仲にはなったよ」
「本当? それ、ぜひ聞きたいわ」
お母様の目が輝いた。他人の恋愛に興味があるのは相変わらずらしい。
そういえば、お母様を巻きこんで召喚された勇者は現在魔王討伐の真っ最中だとか。それで地上は色々騒がしいらしい。愛の女神・エレロウスは逆ハー展開の勇者を見るのが楽しいらしく、結構観察してるといっていた。あとは、恋多き女である花の女神・フロネアも、お母様のいう昼ドラ的展開(異世界での言葉。フロネアはお母様の友人で、その言葉が気にいったらしく最近よく使ってる)を期待して意気揚々と見ているらしい。
エレロウスは幸せな愛が好き。フロネアは花や美しいものが好きな恋多き女で、他人のドロドロした恋愛とか見るのも好きだ。エレロウスとフロネアはよく喧嘩している。時々二人して恋愛にちょっかいだすからね。
お父様はモテモテ勇者に興味は微塵もない。しいていうならお母様を巻きこんでくれてありがとうって気持ちだけだとか。ただお母様いわく、召喚された時お父様を見て勇者は顔を赤くしてたっていってた。惚れたのかもしれない。お父様って美形だから。
「俺、もっとメイリンと子供欲しい」
「そうね、幾らでも欲しいわよね」
お父様の言葉に、お母様はにこにこと笑って頷く。
「私も妹や弟が増える分には可愛いから嬉しい。あ、でも出来たとしても全員に私シスコンやブラコンになる自信あるから恋人は『私に認められなきゃ許さない』ってなりそうだなー」
「それじゃあ、恋人作れないんじゃない?」
何気なくいったら、お母様に呆れられた。
でも実際可愛い妹に恋人出来るならそういう認められる男じゃなきゃ許せない。
「当たり前でしょう。可愛い妹に悪い虫が付くのは見てられないもの。それにお母様は数十年でまた冒険に出ちゃうし、お父様はお母様以外に興味ないんだもの。私が見なくて誰が見るのよ」
「うん、ユーキは将来恋愛が大変そうね」
お母様はそういって、私からユーキを受け取る。
「ユーキ、キーナに認められるいい男と恋愛しなさいよ?」
「あうー?」
こてんと首をあしげたユーキに、またもや私はノックアウトされる。だって可愛すぎる。
それから、お母様とお父様と、可愛いユーキと久しぶりの家族全員がそろった生活をしばらく続ける事となる。
人の体のお母様が死ぬまでの間、ずっと――。もちろん、その間もシスコンはとどまる事はしらずますます私はユーキに夢中になっていくわけだけれども。
ユーキの事があるから転生して冒険しにはいくけど中断して帰ってこようかなーともお母様はいっていた。ユーキには寿命があるから。でも旅には出るのは変わらないらしいけど。
そのことで、お父様がユーキに凄く感謝してて、私はユーキは天使だなんて、シスコンな事を心から思ってしまった。
幸福を呼ぶ天使とでも言えばいいんだろうか、私ユーキ見てるだけで幸せだ。
ユーキが生まれてからは、恋愛なんてそっちのけでユーキを私は可愛がりまくるのであった。
巻き込まれて戻ってきましたのその後。
人の体なので子供出来やすくて出来ました。
キーナ
守護神。結界系には滅茶苦茶強い神様。
ラブラブ夫婦にはすっかりなれてる。妹が可愛くて可愛くて仕方ない。
外見は可愛い系。妹に夢中で恋愛しなくなってくる。
ユーキ
人の体のメイリンとアルスの子。半神なのか、神なのかわかりにくい。でも人の体のメイリンの子だから半神に分類される。
神力は少ない。でも使えるし、人間よりは強い。
感想もらえたら喜びます。