Scene 1
BL作品です。
苦手な方はご遠慮ください。
・・・ぽた
・・・ぱた
ここ数年続く異常気象の所為なのか、それとも夏ってものは元々こうも暑かったのか。
深被りにしたキャップとこめかみの間から滲み出した汗が、顎を伝い手元に落ちる。
「あっちい・・・」
再び顎の先に滴ってきた雫をおもむろに日に焼けた腕で拭う。
その時、目の前の宝の山の中からツヤツヤと輝く“目当ての物”をみつけ、すぐさま手に取った。
これ!
すっげー極上品じゃん!
しかしその車体に貼られた付箋がどうにも気に食わない。
¥6,000と書かれたそれは、自分が探している“目当ての物”には到底そぐわない値段。
こ、これは・・・
すぐさま辺りを見回し、目の前の宝の山の奥に張られたテントの中に店番とおぼしき男をみつけた。
「あの、これ」
声をかけると、団扇をパタつかせながら店番の男が振り返りこちらの手元をうかがった。
「あぁ~、それね。六千円」
左手は相も変わらず忙しなく団扇で風を送りながら、右手をこちらに伸ばしてきた。
「いや・・・これって、箱なくないっすか?」
「え・・・?」
この手の収集品は箱があってなんぼの物だという事くらい知っている。
「箱無しでこの値段はないでしょう?たしかこれの箱無しの相場は・・・二千円・・・くらいでしたっけ?」
「いやぁ・・・」
実際の相場は確か三千円から四千円、箱付きだと六千円が妥当なのだろう。
「え!?二千円?それはないよ~お兄さん。よく見てよ、箱は無くてもさ、この程度の良さなら二千円って事は無いでしょう」
「はは、じゃあやっぱり箱無しで六千円ってのは無いよねえ?それ二千円にしてくれるなら、そっちのも一緒に買うからさ」
指さした先には金色に輝くボディのシガーケース。
“目当ての物”と同じように貼られた付箋には¥40,000の文字。
「これ?」
店番の男は宝の山の天辺に置かれたそれを手に取り、目の前に置いた。
「お兄さんさ、これは値下げしないよ?値下げ無しで一緒に買ってくれるの?」
「そっちは値下げ無し。じゃあこれは二千円でいい?」
「もう・・・お兄さんには敵わねえな。いいよ、持ってって」
ジーンズの後ろポケットから財布を取り出し、中から札を数枚取り出し店番に手渡すと、深く被っていたキャップをくいっとあげて笑顔を見せた。
「ありがとね」
その笑顔を見た店番は、一瞬『あれ?』と言いたげな表情をしたが、別の客に呼ばれすぐさまそちらの接客に向かった。
駐車場へ向かう途中、剥き出しの状態で袋に入れられた“目当ての物”を覗き込みながら緩む口元を左手で押さえた。