⑬ 後宮に入った便利屋さん。ちょいと傍若無人じゃないかね?
山田だ。
今日も酒がうまい。生きてるって素晴らしいな。
さて今回爆破するのは、後宮モノだ。
俺は中国史マニアでな。割ととっつきやすい分野ではある。
だがそれゆえに突っ込まざるを得ない場面ってのも、結構出てくるんだわな。
まず導入だが、いくつかパターンがある。
妃候補として後宮入りするのと、下働きとして来るケースだ。
まずは前者から見ていこう。
まずもって妃候補は立場がクッソ強い。
まあ、このストーリーだと四妃の一員とかになって、互いに影響力の拡大を図るケースだな。
主人公は天真爛漫だったり、善性をもっていたり、同情心が深かったりと、いわば絶対的なジャスティスとして書かれる場合が多い。
んで意地悪なやつと対立し、徐々にその煮凝りのような心を溶かしていき、仲良くなっていくのが鉄板だろう。そんなこんなで皇帝に見初められるまでがワンセットだ。
ぶっちゃけていうと、あんまりおもしろくない。
もう開幕時点で9割方勝利が見えてるので、他の妃との攻防戦とかは消化試合だ。
アテクシ、こんないいことしましてよ。あらあら、やっと真心をわかってくれましたのね……もうお友達でしてよ。
みたいな。
こんなん吐くわ。
まあなんやかんや他の妃には悩み事があって、それを解決していくってのがメインになるんだろうが、あまりにも主人公の防御力が高すぎて困る。
具体的に言うと、皇帝に仕えている将軍だったり、宦官の振りしている高貴な人だったりが後見してるんだよな。
率直に言うと、ハラハラしない。
たまには武力0、政治的影響力0からなりあがってほしいね。
実際にやることは探偵まがいのことなんだが、なんの後ろ盾も持たない素っ裸状態で、気合で成りあがっていくとかどうだろう。
結構なカタルシスは得られそうだ。
次に後者の下働き系な。
こいつらがまあ、無駄に人脈を持ってるんだよな。
あとはお前未来人? ってレベルで近代知識を持ってたりする。いっそ転生してましたとかの方が潔いかもしれん。
例えばよ、おしろいに鉛は入っていて、それは毒です! とか言うとしよう。
お前それどうやって検証したんだ?
フランスでいうとフランス革命辺りの時期まで、鉛入りのおしろい使ってたんだぞ。
他にもエリザベス一世とかも鉛中毒だったな。
おそらく後宮モノの舞台は、中国史で言うと唐とかそのへんだろう。
紀元で言うと600年よりちょい先ってとこだ。
科学的手法なんぞ毛ほども発展してない時代で、よく鉛の毒性がわかったな。
近世の君主ですら使用してるレベルの物品だぞ。古代中国でどうやって検証したのかかなり気になるところだ。
まあ俺は毒物マニアじゃねえから、色々あるのかもしれん。
何が言いたいかというと、概ね下働きの奴らは未来人が多いってことだよ。
当時は呪術とか迷信とか卜占とか、そういうのが全盛期だ。
西洋ですら、病気になったら祈祷で治すっていう目も当てられない惨状よ。
まあ華佗っていう医者が麻酔を既に発明してたからな。割と薬学的な知識は集積されてるのかもしれん。
最大の問題は、こいつら明らかに身分が上のやつとかにタメ口きくんだよな。
まあなろう系とかでもままあることだが、王様とか爵位もちとかに友人と接するような口調で話すことがある。
読んでて冷や冷やするからマジでやめろ。
中国に話を戻すと、科挙試験ってあるだろ。官僚登用試験だな。
あれで論文とか書くんだが、書いちゃいけない文字ってのがあるんだわ。
具体的に言うと、歴代皇帝の名前とかそういうのは不敬だから一発不合格になる。
それぐらい徹底した身分制度が敷かれていて、強烈な縁故主義がはびこっているのは当時の状態だ。
例えばだな、皇帝直下の武官にタメ口とかきいたら、その場で斬られるのがオチだ。そりゃそうだよな。当時の人命なんぞゴミみたいなもんだし、平民の命はアリンコ未満だ。
親しくなるのはいいよ。まあそういう友情を持つ場合もあるだろう。
ただ、第三者がいる場所では――いや、いなくても口調は糺したほうがいい。
壁に耳ありってやつだ。
あとな、こいつら宮廷系の女子の傾向として、お供に見目麗しい男性がセットになってる場合がある。宦官の振りして潜入してるとか、まあ色々だ。
わかるよ、そういうの浪漫だもんな。
男の俺からすれば、馬鹿野郎、早くそいつを家に帰せボケってなるが、どういうわけか美貌にくらくらきて、ロマンスを期待している。
この辺は男女で分かり合えない隔たりだと思うが、まずは自分の守りを固めてほしいというのが俺の注文だ。
やだ……かっこいい……とか考えている暇があったら、そいつが後宮にいるリスクを考えろ。
連座で斬首される可能性がクッソ高いぞ。
あとはそうだな。やけに後宮モノの主人公は余裕ぶっこいてるんだよな。
「私は○○ですから。最初からわかってました。もしかして知らなかったんですか?」みたいな。
ちょっと考えてみれば分かるが、こういう物言いをする人間を前にして、すげー奴だと思うか、うぜーと思うか一目瞭然だろう。
ナチュラルにマウント取りたがるんだよな。なぜか。
多分そういう状況を読むのが気持ちいいから、需要がたくさんあるんだろう。
個人的に見たいのは、主人公と同等かそれ以上の知能を持った敵役だな。
読者受けは非常に悪いが、苦戦するってのはいいスパイスだと思う。昨今のなろうカクヨムユーザーはストレス耐性がないから、ちょっとでも辛い気配をかんじるとブラバする。
ここまでくるともはや何かの症候群じゃないかと勘繰りたくなるが、そういう生命体が多いんだからしゃーない。
是非とも、緊迫した後宮モノってのを見てみたい。
あとはそうだな……後宮に軍が攻め入ってきて、蹂躙されるとかな。
普段華や蝶やと愛でられてるお嬢たちが、現実をわからせられる展開ってのも悪くない。
「乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ」っていう漫画は割と壮絶だったが、かなり面白かった。
初手で主人公の少女が暴行を受けて、数話後には婚約者がブチ殺されるとかな。
それでも強く生きていく姿は、ある意味混迷期のバイタリティを感じたよ。
そういった胸に燻る炎を見せてほしい。
後宮で調子ぶっこいて探偵ごっこをしてるのもいいが、人を惹きつけるのは主人公の限りない情熱だと思う。
誰か書いてくれんかね。
じゃあの。




