#5
太陽の腕を掴み、捩じ伏せる渉。
渉の太陽への全身のリップ音、2人に擦れるシーツさえも艶かしい音がする。
「ハァ、はあっ!あっ!そこは、駄目!」
「太陽、もう逃がさない。今日こそはケリをつける…。」
真剣な眼差しで言う渉に恐怖心すらおぼえる太陽。
渉の手が太陽の尻へと伸びる。
そ、そこは。
「ダメ!!!」
ハッと、目が覚めた太陽は自己嫌悪に陥っていた。
(なんつー悪夢見てんだよ、俺…。)
今日は日曜日。
学校は休みである。
昨日のあの後のことだが、浅川龍二の写真集のサイン会に行った太陽は急に現れた渉に手を引っ張られ。ご連行。「な、なんだよっ?渉!?手ぇー離せよ!」渉は一体どこから現れたんだ?と太陽は思ったが、ぐいぐい無言で手をひく渉に何故かついて行ってしまった。辿り着いたそこで手が離れた。「え?渉ん家?」きょとんとした、太陽に渉は、自分の首に片手を乗せ言った。「久しぶりに、あがっていけよ。」なんだか、照れくさそうな渉を少し可愛いと思ってしまったのか珍しく素直に「おう。」なんて、太陽も照れを隠しながら言った。
「うわー!中学の頃から、なんも変わってねーのな!お前の部屋!」
久しぶりに入った渉の部屋にテンションが上がったはいいが少しづつ気まずくなる太陽。
「て、てか、渉の父ちゃんも母ちゃんも元気にしてるか?久しぶりに会いてぇな!なんて…。」
後ろから何も言わず太陽を渉が抱き締めた。
「な、なにしてんだよ!勝手に触ってんじゃねー!」
「…太陽、明日の朝までオヤジ達は帰って来ない。」
(な!)
驚いている太陽の首に埋もっていた渉の顔。唇がそのまま触れる。
「ふっ!ふざけんなよ!?」
「太陽こそ、さっきの男誰なんだ?連絡先聞かれて。」
「あ、あれは今俺が推してる俳優の浅川龍二さんて人で。めっちゃカッコいいんだよ!顔だけじゃなく、生き様とか!憧れてるっていうか…、連絡先聞かれたのはわかんねえーけど…。」
「へぇ…。あいつに連絡先聞かれたら、すぐに教えるのか?」
「そりゃ、ファンだし。浅川さんがいうことなら、なんでもするだろ。」
「なら…、あの男になら抱かれてもいいのか?」
「な、何言って!てか、お前どーゆーつもりだよ!?いい加減離せ!」
太陽は振りほどこうとするが、勉強ばかりしているはずの渉の力は案外強かった。
「俺は何も変わってないだけだ。この部屋みたいに、あの頃から何ひとつ。今でも太陽を抱きたいし、たまにお前を殺してしまいたくなる程、腹立つ時がある。抱いて抱いて、滅茶苦茶にしたくなる。今も。ムカついて仕方ねえ。」
「ああ、そうか?今現在、俺もお前を滅茶苦茶にして、殺してしまいてーよ。違う意味でな。」
漸く振りほどき、振りほどかれた瞬間、ドスッと重たいパンチが渉の腹部に入った。
「大体、やり方つーもんがあんだろ?」
痛みを堪え座っている渉に太陽が仁王立ちで言った。
「やり方?」
「それはだな…。まず、友達に戻るとか。渉はそこすらもぶっ飛ばしてねーか?俺達、今じゃ犬猿の仲だろ。」
「それは確かだが。じゃあ、どうすればいい?お前のいう友達ってのに戻るには。」
詰め寄る渉に退く太陽。
「先ずは、そーだな…。お互い謝って。」
「ごめん。」「いや、心こもってねーし!」
間髪いれずに言う渉に、お笑い芸人のように突っ込みをいれる太陽。
「だって、俺何が悪かったか分からんからな。太陽ばっかだろ?いつも俺に酷い事してきたの。」
「な!ふざけんな!俺だって渉に傷つけられたし。」
「いつ?」
「それは…、中学の頃聞いちまったんだよ!体育館裏で、お前がバスケ部美人マネージャーに言ってたこと…。」
渉は過去を振り返る。
「あ、あれは、確かに本心だったが、それはつまり太陽じゃないと駄目だって意味だったんだ。…悪かった。聞かれてないと思ってたが、それでも発っしていい言葉ではなかった。」
「いーよ。そんな素直に謝られたら、なんかむず痒いわ!それに俺、お前のこと殴りまくったしな。あれは、悪かった。」
「それで?あとは?」と、渉が太陽の言葉を催促する。
渉のこれは誘導尋問であった。
太陽を掌で動かす為の。
「連絡先…交換するとか?」
心待ちにしていた言葉がやって来て内心至極喜んでいる渉。
「そんな程度か。まあ、のんでやれないこともない。じゃあ早速教えろ。」
「その代わり、金輪際!俺に触るのは禁止つーの守れるのが、お友達復活の条件だかんな!」
これは、渉の想定外だ。
太陽とて、そこまで馬鹿ではないらしい。
暫く渉は何かを考えて「はい、はい。幼稚園生の太陽ちゃん。」なんて言いながら、太陽のスマホを持つ手にさりげなく触れた。
「その呼び方やめろ!それに!お触り禁止だっつてんだろ!?」
「お前が、スマホ持ってもたついてるからだろ。」
そして、本日に戻る。
「友達に戻るなんて言ったはいいものの…。どうするよ…?あいつと今更友達なんて…。つーか、連絡先交換してLINEの一つも寄越してこないのな!?」
空欄の渉とのLINEのトーク画面を眺める太陽に一階から父親の大声が飛んできた。
「たーいよう!店手伝ってくれ!」
「むりー!」
「人手がたりないの!母さん、腰痛めそう!あ、もうヤバい!倒れるかも!」
「か、母さん!大丈夫か!?俺達の不甲斐ない息子のせいで!」
商店街の一角。八百屋の松の木屋。
そこが太陽の実家だ。
「はい、お釣。20円ね…ってなんで、貴重な高校生の休日に俺働かないといけねーの?」
「あら?うちの家訓わすれたの?自分のけじめは自分でつける!」
名演技で店を手伝わせた太陽にそっくりな顔をしている母親がいう。
「お前、来週から修学旅行だろ?その分は働いてもらわないとな!」
全く似てない、ザ·漢な父親までいう。
「なんだよ、自分のけじめは自分でつけるって意味なんか違う気するんだけど?」
「四の五の言わず、手伝いなさい!ってあれ?…渉君じゃない?」
母親の手が止まった。
「お久しぶりです。太陽のお父さん、お母さん。」
渉の顔を見て太陽は持っていた胡瓜を全部落としてしまった。
「久しぶりねぇ!渉君!更に大きくなって、相変わらず、私の好みのイケメンぶりね!」
「母さん、こんなイケメンに惚れるなよ?イケメンてのは、あてになんねーんだぞ!父さんみたいに男らしい漢を捨てたら、一生後悔するぞ?」
「分かってるわよ~!でも、ちょっと渉君に軽い浮気!?なんてねー!」
仲のいい夫婦は笑いあっている。
上がっていけと言われて遠慮もなく上がっている渉に睨みを効かせる太陽。
母親は喜んでいるし、お茶とお菓子なんてものまで出している。
太陽の父親も嬉しそうだ。
そして、渉も普段は無表情なくせに太陽の両親の前では満面のスマイルである。
「お前達、中学の頃までは、こっちが心配になるくらい仲良かったのに急に遊ばなくなって、本当は俺も気になってたんだ。だけど、また仲良くなったみたいで、父さん嬉しいぞ!太陽!」
「仲良くなんて、なってねーよ!てか、何しに来たんだよ?渉!」
「何って、母さんに頼まれて買い物だ。」と、エコバッグをぐいっと挙げる渉。
そこだけは、無表情である。
「ま、ま。二人とも!何があったか知らないけど、またこうして渉君がきてくれて、母さん凄い嬉しいなあ!ねぇ、た·い·よ·う!」と足を母親に踏みつけられ圧をかけられる太陽。
「いってーよ!母ちゃん!それに渉!お前、急になんなんだよ?うちの八百屋避けてただろ?スーパーに浮気してたくせに。」
「浮気なんてしたつもりはない。お前とお友達らしきものに戻ったからな。今日は、お父さんと、お母さんにご挨拶もかねて。」
「ご挨拶ってなんだよ?友達くらいで挨拶って?それにお父さん、お母さんてのやめろ!」と太陽が言い終わった瞬間。すこし、渉は右側の口角だけあげ、太陽をみた。そして大袈裟すぎる土下座で言った。
「ふつつか者ですが、太陽君とのお付き合い、何卒お許しください!」
太陽の父と母は、何が起きたのかも分からず渉の勢いにのまれた。
『は、はい。』
薄暗くなってきた商店街。松の木屋ご近所の薬局、飼い犬タロウが遠吠えした。
「なあ、母さん。お付き合いって、どういう事だ?」
太陽の父親は居間で胡座をかき腕を組み頭を斜めにする。
「いーの!父さんは、深くかんがえない!私だけみてなさい!」
「そうだなあ!母さんしか俺には見えないよ!」
その頃二階で布団にくるまりスマホと向かいあっている太陽はというと。
久しぶりに友達に昇格した渉にLINE上で怒りをぶちまけていた。
【お付き合いって、なんなんだよ!あれ。しかも、わざとだろ?】
画面越しでも、しれっとしているであろう渉が太陽には思い浮かぶ。
【当然、お前への愛のこもった嫌がらせだ。それに、今の所は友達だが、この先どうなるか分からないからな】
【どうもならねーよ!わ·た·るちゃんは、ただの友達に昇格したばかりの男!これから先も、このままだ!それ以上でも以下でもねえ】
【へぇー、そうか。なら、太陽が俺にいつまで友達でいられるか試してやるよ】
【どうゆーことだよ?】
【前に俺を抱きたいって言ってたよな?太陽がいつまで俺に手を出さないでいられるか、試してやる】
【なんだ、それ?】
【まあ、どうなるか試してやるってことだ、心しておけ】
それから、二人の変な友人復活?関係はスマホ上で始まる。
翌朝、6時。スマホが鳴りだし、起こされる太陽。
「だれ…だよっ。」
渉からのビデオ通話だった。
「おはよー太陽ちゃん。」なんて、甘ったるい言葉と、滅多に見れない笑顔と、えらく見せたいといいたげな鎖骨、いや上半身裸?がうつっている。
「風呂上がりの俺なんてどう?」
濡れた髪をかきあげながら、エロい声で言う渉と商店街に大声が。
「ふざけんなー!!!」
朝の起こし方はお手柔らかに。




