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#4

夜になって、ハーレムから離れた太陽と桜はぎこちなく、公園のベンチに座っていた。良い雰囲気だ。蛍光灯が、薄暗く、なんともいえない味を出している。

桜が太陽の方を向いて、緊張気味に目を閉じた。

太陽も、桜の肩に手を置き、目を閉じる。

近づく顔。

けれど、その顔はすぐに離れた。

「…。やっぱ、ごめん…。桜、俺できねぇ…。」

太陽は苦い顔をして言った。悔しいくらい、渉の顔が浮かんでしまうのだ。

「…。分かってはいたよ…太陽って、女の子にモテモテだけど実際はキスもしたことないんでしょ?まあ、正確にいうと今日、月影君にされたけど。」

「それ、言わないで!」

頭から消し去りたい、出来ることならと。顔を真っ赤にして、手で覆った。

頭の中にあの纏わりつく渉のキスが浮かぶ。

「もっと、正直になって欲しかったなあ。私には。」

なんて、桜が言う。

全てお見通しとでも言うように。

「あのね、私だって、太陽の事好きだった一人だよ?今日見てたら気づいちゃった。太陽、月影君と目があいそうになると、好き避けしてるみたいに目逸らすし。」

「な、なんで?俺があいつと目を合わせたくない理由なんて、腹立つからだけに決まってるし…。」


「女の勘、舐めんなよ?」


桜はこんなキャラだったか?制服のネクタイを引っ張られる太陽は少しビビっている。

「月影君が好きなのに、女の子とっかえひっかえして、月影君が男だから?あー情けねー男!逃げてんだけだろ!なんで、こんな顔だけの男、好きになった私も馬鹿だったわ。」

「だ、だから渉のことはムカつくだけで!」

「そんな、必死なとこ。私より月影君に見せたら?私からフッたげる。でも、相談する気になったら乗ってあげる。じゃあねー。」

太陽に見えないように涙を堪え手を振り消えていく桜の後ろ姿は誰より男前だった。


「俺、渉のこと、まだ好きなのか?」


自分の部屋に戻り悩んでいる太陽。

だけど、今更言えない。

女の子は大好きだけど、男は好きではない。

だが、性欲が沸くのは…。

お気に入りのドラマを見ていた、渉にどこか似ているイケメン俳優の上裸が映った。

(な、なんでよりにもよってこんな作品みてしまったっ…!)

そう、この俳優浅川龍二。

一応、太陽が今一番好きな俳優である。

見た目も好きだが、ストイックで努力家、そんなとこも気に入っている。

だけど、そんな浅川の上裸をみてムラムラしてしまった、自分に自己嫌悪している太陽。

(俺、男が好きなのかな…?いや、誰でも良いってわけじゃねーし。クラスの他の奴にも何もおもわねーし。浅川さんも、渉に似てるってだけで…。)


「あー!わかんねえーよ!終わった初恋だろ!?渉とは!てか、あれは、間違いだっ!忘れろ!忘れろ!俺!」


(でも、抱きてぇんだよな、あいつは嫌らしかったけど…。)


中学生の頃の渉の言葉を思い出した。

体育館裏の事。

【お前みたいな美人な女に惚れてりゃ良かった。】

渉のあの時のバスケ部美人マネージャーに言った言葉が胸に突き刺さったまんま。

時だけが、無惨に流れた。


(ご、ごめんなさい!おかずにして、すみません…浅川さん!)



「おーい、月影!一年の後輩がお前に話があんだってよ!」

草ケ部が、渉の肩を叩く。

なんだか、意味深な目付きだ。

嫌な予感は当たった。

中庭に呼びだされた渉。

こういうのは、男子校でも稀にある。

「で、話って何?俺忙しいんだけど。」

モジモジしている一年の後輩に興味など全くない渉。

「ずっと!ずっと!憧れてました!月影先輩に!」

緊張が渉にまで伝わってくる。

「悪いんだが、俺男に興味ないから。」

まあ、ある一人を除いては、だが。

「で、でも!月影先輩、花柳先輩のこと好きなんじやないですか?」

ハッとした。

「この間の、文化祭の時、分かったんです!それで、なんですけど…。俺、花柳先輩に雰囲気似てるって言われるし。俺じゃ駄目ですか…?報われない恋なんでしょう?花柳先輩とは、花柳先輩、月影先輩の事嫌いみたいだし、殴られたって聞いたし…。」

太陽と雰囲気似てる?その言葉で、漸く渉は後輩に目を向けた。

確かに似ていると言われれば、そうだが。

「悪いけど、俺、女とか男とか関係なく。あいつ以外に欲情できないんだ。お前が想ってくれたのは有難いが。」

「でも、俺。月影先輩の事諦めませんから!俺、袴田光っていいます。今日はこれで、失礼します。」

断わろうとしたのに、足が速い奴だな、なんて渉は思った。

(はあ、諦めませんか。こんなの太陽に言われてみてぇよ…。)


帰り道、珍しく太陽がハーレムもつれず下校していた。それを渉は追いかけて?ストーカーしてしまった。(なにやってんだか、俺…。)なんて思ったが。止まらなかった。あれから、文化祭の日から一言も口は聞けてない。

トワーレコードに入っていく、太陽。

何してんだ?とは思ったが、渉はすぐに目の前で、嫉妬してしまうことになる。

浅川龍二という俳優の写真集のサイン会にて。

隠れていた、渉。次が太陽の番になった。

にこやかな太陽を久しぶりにみた。

「君、名前は?」

浅川龍二が、ファンサをしている。

「は、花柳太陽です!いつも応援させてもらってます!」

俺には、見せたことないよな。そんな顔。渉の怒りはほぼブラツクホールをも破壊しそうだ。

「君、可愛いね。」「そ、そんなことは。」モジモジしている太陽にも、腹が立つ渉。

(なんて適当な男なんだ?あんな奴のどこがいい?それに、太陽も、太陽だ!俺に可愛いなんて言われた日には、パンチが何度飛んできてもおかしくないくせに!野郎、太陽の手を握るんじゃねえ!)

ただのファンサなんだが、渉には理解不能らしい。

「そうだ、君!電話番号教えてよ!」

浅川が、そういった瞬間。

渉は堪えきれず、太陽の手を引っ張っていた。 



恋すると人はなにも手に付かなくなったりもする。

好きで、好き過ぎて、ムカつく事もある。

傷つき、傷つけあって、仲良くなったり、相手の心が読めなくて怖くなって逃げてしまうことも。



















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