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#3

お伽噺の王子と姫のハッピーエンドは良く聞くが、その後、本当に幸せになれたのかは、誰も知らない。

時間が経てば、人の気持ちは空模様の様に変わる。

それ以前に、人魚姫みたいに綺麗な声を失い、挙げ句の果てには、泡に消えてしまう恋なんてのもあるくらいだ。


本日は、青山春木学園文化祭。

さっきまで、晴れていた空が今ではどしゃ降りの雨、だが他校の女子生徒達がわんさかやって来ている。

この野郎だらけの学園の二大イケメン月影、花柳主役の演劇『王子と王子』をみるために。


「えー本日は、お足もとの悪いなか、我がクラスの自作演劇、禁断の愛、王子と王子を~」

なんて、クラス委員長の堀田が他校の女子の前で緊張気味に言い、舞台からはけていった。

「やべぇ、俺。こんな大勢の女子から見られたの初めてすぎて何言ってたか途中からわかんなかった…。」

堀田はげんなりと疲れた顔をして野球部、朝日野に言う。

「そんなことより、指示だせよ。照明!照明!」

もはや、朝日野の方が頼りになっている。


次の瞬間、パッと照明が月影渉と花柳太陽にあたる。

そこには、きらびやかな衣装を身に纏う渉と太陽が無表情で、立っている。

ただそれだけなのに、キャー!!!なんて声が体育館を揺らす。

セリフなんて、ほぼ聞こえないくらいだった。

だが、段々クライマックスにつれて他校の女子生徒達の声は静まる。


「私の心を射てやまない、隣国の王子。貴方に、この舞踏会でまた逢えた。どうか、私の想いを受け入れてくれ。」

渉の大根役者っぷりには酷いものがあった。

棒読みも良いところだ。

こんなので、感情移入するはずはないのだが、女子にはイケメンフィルターがかかっているのだろうか?

「それはなりません。互いに、王家を継ぐ王子同士。私達には、愛し合う事は許されないのです…。」

意外と真面目に演技をしている太陽は、なかなかの名演技である。

練習では、出さないタイプなだけだったようだ。


「ならば…、せめて今宵いちどきり。一度きりでいい、貴方を抱き締めさせてくれ…。」


何故か先ほどまで、棒読みだった渉のセリフが活きだす。

太陽の名演技につられたのであろうか。

女子達は息をのんでいる。

渉が太陽を抱き締めた。


「な、なりません。王子…。」

内心離せと本気で思っている、太陽は渉の腕を振りほどく演技をする。だが、一向に離さない渉に剥がし続けている太陽。

「おい、何してんだ…月影、離すはずだろ?こんなの台本にないぞ?」と、朝日野と委員長が目を合わせる。

一向に離さない渉に対して睨み始めた太陽。

(おい!なんで、離さねーんだよ!?一度俺が振りほどいて、やっぱ、俺がお前抱き締めて、ちゃちゃっとみじけーキスして、俺が今生の別れいって去る!それで終わりっつー噺だろ?)

(は、俺がそんな子供じみた噺、受け入れるとでも思ってたのか?そんつもりは毛頭ない。)

渉はそのまま太陽に顔を近付けていった。

途端、体育館は静まりかえり、割れんばかりの声で震えた。

退けぞる太陽の唇を無理やり奪う渉。


「…!」


こうなったら、台本なんて、演劇なんてどうでもいいと太陽は思った。

それに太陽への渉のキスが長く纏わりつくようにエロいこと。

キスをしながら、渉の口角はあがっていく。

(なんだ?その初めてみたいな様子は?このくらいのキス何回もしてんだろ?)

(こっこの、くそ童貞野郎!)

公衆の面前で、更にヒートアップしていく。

渉は太陽に隙あらばディープキスなんてことをしようとしているようだ。

それに苛立ち始めた太陽は、渾身の力で、渉を床に倒した。

小声で言う。

「おめぇ、どういうつもりだ?」

渉も小声で押し倒されながらいう。

「嫌か?お前が嫌なら尚更やりたくなる、もう一回してやろうか?」

また、ゴロゴロと上下に馬乗りになりあっている、2人。

「ふざけんな、俺様がお前如きのキスくらいで、感情動くわけねー。」

衣装が邪魔で脱ぎ始める太陽。


太陽の怒りは、最上級に迄なっていて、ただ喧嘩するのに衣装が邪魔だったのだが、観客からしてみたら、そんな二人はこのまま喧嘩以外の事をおっ始めてしまうのではないのかと思う空気になっていた。

いや、おっ始めてしまうのだが、喧嘩を。

他校の女子はそれを分かってはおらず、見てはいけない気持ちになったのか、目を手で覆うのだが、ちゃんと指の隙間から、その光景を本人達の思惑とは違う観点で見ている。


「や、ヤバいぞ!急いで幕降ろせ!」


朝日野がクラスメイトに言い放った。


殴り愛。

正確に言うと、一方的に殴っていたのは、太陽だが。

演劇が終わると、太陽はささっと渉を3発殴って女子達と消えていった。

そして、やらかしてくれた渉はというと、机でイケメン過ぎる殴られた顔をタオルで冷やしていた。

「あー!幕が降りたあとで、良かったわぁ。喧嘩おっ始めるの。どーなるかと思ったし。」

安堵と疲れがみえる朝日野が言う。

「本当にな。台本にないことやりだすし、月影。お前が悪いぞ!」

こちらも疲れたというような、堀田委員長。

「まあ、これで無事終わって、良かったわ。他校の女子めっちゃ喜んでたもんなぁ。なんなんだ?あれは?男同士でキスしたら女子にうけるのか?朝日野、やってみるか?」

なんて、草ケ部が朝日野に言う。

「なにマジでしようとしてんだよ!イケメン同士だからだろ?俺達じゃ悲鳴しかあがんねぇーよ!しかも、今女子いねーし!」


渉はそんなクラスメイトの話も聞こえず、無表情で考えていた。

(嫌がる太陽も可愛いかったな…。)

殴られたとこすら、愛おしいのであった。


そして、あちらさん。太陽はというと、演劇をみていた現在彼女?とその他大勢の女子に囲まれてハーレム満喫中で、渉への苛立ちを逸らそうとしていた。

「マジで、ヤバかったあー!もう、花柳君と月影君お似合い過ぎて!めっちゃ目の保養になったねぇ!」

「本当、本当!桜と別れて月影君と付き合いなよー!男同士でも良くない?私なんか世界広がったわ。」

「だよねー!分かる!」

桜とは、太陽の現在彼女?っていうことになっている女の子。

桜は、うわのそらな太陽に話かける。

「ねえ?たいよー!」

「えっ!?ごめん、なんだっけ?」

冷ややかな目で見る桜は少し機嫌が悪そうだ。

「…妬いた…よ?だって、私にだってキスしてくれたことないのにさ…。あんな長いキスして、月影君とはラブラブに見えましたぁー!」

「い、いや。あれは不可抗力つーか!演技だし!」

(そう、俺様の心は一つも揺るいでない!断じて揺るいでない!)

実はというと、太陽の心臓はあれからバクバクしていたのだが、精神年齢3歳レベルの太陽にはそれが何かもよく分かっていなかった。

そんな太陽の頭が思いついたことは、単純だった。


「そうだ、桜…。桜が良ければ、その…。俺と、キスしてみないか…?」


きっと、渉以外にでもこうなる。

(そうだ。ぜってぇー。違う。俺はもう、渉のことなんか好きじゃねえ…。)


明日も雨ですかね?心の殴り愛は続きそうです。




























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