表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/26

新しい街でまた受付嬢

「……えっと……ナミさん、ですね」

新しい街の冒険者ギルド。

受付カウンターの向こうで、ギルド職員が書類を見ていた。

「一応、簡単な面接と確認は終わりましたが……」 「……は、はい……」

ナミは、緊張で肩をすくめている。

「戦闘スキルは?」 「……な、ない……です……」 「補助スキルは?」 「……わ、わからない……です……」

職員は少し考えた。

「……まあ、受付は経験者ですし」 「……あ……」

「――合格で」

「……え……?」

ナミは、目をぱちぱちさせた。

「……ほ、ほんと……?」 「はい。今日から入ってもらえます」

「……あ……あの……」

ナミは深く頭を下げた。

「……が、がんばります……」

エリーは横で腕を組み、静かに頷いた。

(第一関門、突破)

初仕事。

ナミは、受付カウンターの中で、あたふたしていた。

「……えっと……依頼……」 「……こっち……?」

書類を落とす。

拾う。

別の紙を間違える。

「す、すみません……!」

だが。

「まあいいよ」 「急いでないし」

冒険者たちは、なぜか穏やかだった。

(……優しい……人……多い……)

「次、お願い」 「……は、はい……!」

依頼を受けに来た冒険者たち。

ナミは、無意識に口を開く。

「……あの……」 「ん?」

「……この依頼……」 「……?」

「……人数……もう一人……増やした方が……」 「理由は?」

「……な、なんとなく……」

冒険者は笑った。

「なんとなく、か」 「……す、すみません……」

「まあいいや。どうせ人余ってるし」

結果。

そのパーティーは、追加できた1人が

たまたま危険な罠を事前に発見し

負傷者ゼロで帰還した。

「ラッキーだったよ!助言ありがとうな!」 「……え……?」

ナミは、首を傾げる。

次。

「この依頼、今日中に出たいんだけど」 「……あ……」

ナミは、依頼書を見て小さく呟く。

「……天候……」 「え?」

「……明日……雨……降りそう……」 「……?」

「……今日……行った方が……」 「天気予報なんてあるのか?」

「……な、ない……です……」

冒険者は首をすくめた。

「ま、急ぐし今日行くか」

結果。

翌日、その地域は記録的豪雨。

もし一日遅れていれば、依頼は失敗していた。

「偶然だな」 「ラッキーだったな」

誰も疑わない。

さらに。

ロイドが来た。

「……依頼、受けに」 「……あ……」

ナミは、思わず言った。

「……ロイドさん……」 「?」

「……今日……その依頼……やめた方が……」 「……理由は?」

「……いやな……感じ……」

ロイドは少し考え――

依頼書を戻した。

「……信じるよ」

数時間後。

その依頼先で、

魔獣の大量発生が確認され、

討伐は中止になった。

「……危なかったな……」 「……うん……」

ロイドは、ナミを見る。

「女の勘てやつか?」 「……へ……?」

「いや……なんでもない」

ギルド内。

「最近さ」 「うん?」

「運良すぎじゃない?」 「たまたまだろ」

「依頼の成功率、上がってるぞ」 「ラッキーが続いてるだけだ」

ナミは、カウンターの内側で縮こまる。

「誰も、姉のせいだなんて思ってない」 「……うん……」

その夜。

ギルドの奥、古い資料室。

埃をかぶった分厚い本を、

エリーがめくっていた。

「……あ」

一つの項目で、指が止まる。

戦闘にも補助にも分類されないスキル

発動者すら気づかない稀少能力


エリーは、静かに本を閉じた。

(このスキルやっぱり……)

ナミは、その頃。

「……おつかれさまでした……」

誰にも気づかれず、

今日も一日を終えようとしていた。

自分が、

ほんの少し言葉を落とすだけで、

世界の歯車がずれていることも知らずに。


――これは、偶然ではない。

――これは、幸運でもない。

未来がみえているわけでもなんでもない

だが、なぜかそうなることが決まっていた


ナミの中で、

無意識に発動し続けるスキル。

その名は――

《運命のイタズラ(trick of Destiny)》


それは、

人と人、出来事と出来事を

“ほんの少しだけ正しい位置へずらす”力。

世界はまだ、

その意味を知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ