博士と受付嬢
数日後正式に行われた学会で
エリーは論文を発表
学会は、想像以上の騒ぎになった。
生産スキルという概念。
それが社会に与える影響。
エリーの発表は、
「新説」ではなく
「証明」だった。
理論だけじゃない。
現場の事例。
数字。
結果。
誰も否定できなかった。
結果として、飛び級で
エリーは博士号を授与される。
エリーは王都で学者博士として
研究と実務を兼ねた仕事を任されることになった。
一躍、時の人。
後にこの出来事は、
生産革命と呼ばれることになる。
王都の帰り道。
夕暮れの石畳を、
ナミと並んで歩く。
「……私がさ」
エリーは、少しだけ俯いて言った。
「こんなにも早く博士になるなんて」
「思ってなかった」
ナミは、
いつも通りの調子で答える。
「…そう?」
「でも、考えみたらそうか、
そりゃそうじゃない?」
エリーは、足を止める。
「だって」
「一番、
運命のイタズラの近くにいたのは私だったんだもの」
「影響を受けてないわけが、
なかったんだよね」
しん、と静かになる。
ナミは立ち止まり、
エリーのほうを見る。
「運命〜?…何言ってるのよ〜」
「……ちがうよ」
「エリーが頑張ったから」
「それ以外、何もない」
まっすぐな声。
「エリーは」
「ナミの、自慢の妹です…えへへ」
エリーは、
一瞬だけ目を伏せて――笑った。
「……でもさ」
ナミが、くすっと笑う。
「エリーって」
「お堅くて理屈っぽい子だと…思ってたけど」
「運命のイタズラだなんて…言い出すの、
意外と乙女よね…」
「萌え可愛い〜♡」
「ちょっ!?
お姉ちゃん!?」
「それ、お姉ちゃんに言われると
なんか腹立つんだけど!?」
「あはは」
夕暮れの道に、
二人の笑い声が響く。
世界は無事に
もう動き出している。
でもこの時間だけは、
昔のまま。
妙に歪な
姉と妹のまま。




