続続 ドジっ子受付嬢
ロイドは、少し首をかしげながら歩いていた。
「……あれ?」
地図と、目の前の景色。
どう見ても、予定していた場所と違う。
「ま、いっか」
深く考えないのが、ロイドのいいところだった。
街道の整備確認。
本来なら、人の往来も多く、
魔獣の心配もない――はずの依頼。
だが、ここは静かすぎた。
「……人、いないな」
風に揺れる草。
朽ちかけた石壁。
そのときだった。
「……たす、け……」
微かな声。
「え?」
ロイドは反射的に駆け出した。
古い倉庫の陰。
そこにいたのは――
フードを深くかぶった少女。
「だ、大丈夫ですか?!」
少女は怯えた目で、必死に首を振る。
「追われて……」
「お願い、誰にも……」
その瞬間。
ロイドの背筋に、嫌な感覚が走った。
ーー要人だ
その判断は、
駆け出しにしては、
異様なほど正しかった。
ロイドは、少女を守るように立つ。
「大丈夫です」
「俺、ギルドの冒険者です」
遅れて、足音。
現れた男の顔を見た瞬間、
ロイドは息をのんだ。
――只者ではない
――全てを蔑むような歪んだ目。
「……見つけたぞ」
低い声。
その男の名は、
グラハム。
かつて、騎士団に所属していた男。
腕は確かだった。
だが、命令を守らない。
民を見ない。
力を誇示することにしか興味がなかった。
何度も問題を起こし、
最終的に――追放。
居場所を失った男が流れ着いた先が、
あのギルドだった。
そこで再び力を振るう立場を得たが、
ギルド崩壊と共に、
彼は“死んだことになっていた”。
「邪魔だ、ガキ」
グラハムが剣を抜く。
だが、その瞬間。
「……何をしている!!」
騎士団の声。
ロイドが踏み込んだこの場所は、
騎士団の包囲網と、偶然重なっていた。
偶然。
本当に、偶然。
だが、
偶然にしては出来すぎていた。
戦闘は一瞬だった。
逃げ場を失ったグラハムは拘束され、
少女は――
王女だと判明する。
王都。
報告を受けたウィリアムは、
静かに目を閉じた。
「……そうか」
「あそこは騎士団時代にグラハムが担当していた場所だ」
「結局第一発見者は “ギルドの冒険者”だったか…」
国家存亡クラスの事件はこうして解決した。
ギルド酒場。
「えっ、ロイドさんが?!」
ナミは、目を丸くしていた。
「す、すごいです……!」
エリーは、何も言わず、
受付の書類に視線を落とす。
そこには、
ロイドに渡された依頼の控え。
本来とは、
微妙に違う場所が記されていた。
(……なるほど)
エリーは、心の中でだけ呟く。
ナミは、いつも通りだ。
「ほえー……」
「でも、よかったですぅ……」
その背中を見ながら、
エリーは確信する。
――これが、
姉のスキル?
何なのよ、むちゃくちゃだわ
面白すぎる
こんなの証明しようがないじゃない…
国を救った。
誰にも知られず。
誰にも称えられることはない。
そこに居たのは
ただのドジっ子受付嬢。




