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間違えちゃう受付嬢

王都を揺るがす未曾有の事件に、

ギルドと騎士団は総力を挙げて動いていた。

情報は集まっている。

人も、物も、配置も――

すべてが噛み合っている。

それでも。

「……決定的な“黒幕”だけが、いない」

第三騎士団長ウィリアムは、静かに言った。

王女誘拐。

総騎士団長暗殺。

どれも王都の構造、

騎士団の巡回、

内部事情を知り尽くしていなければ不可能。

「元騎士団関係者は、洗い出したはずです」

報告役の騎士が答える。


ウィリアムは一瞬だけ視線を伏せた。

――素行不良。

――命令違反。

――暴力沙汰。

かつて追放した男の顔が、

脳裏をかすめる。

だが。

「まさかな……死んだはずだ」

例の街のギルド崩壊で犠牲になったと

記録されている。

死者は、容疑者にならない。

それが、

最大の盲点だった。


一方そのころ、ギルド酒場。

「エリー、ここ空いてる?」

エリーの隣にロイド。

「……また来た」

「いいだろ、今日は簡単な依頼探すだけだし」

今回の事件は

ロイドはそもそも担当していない。

いつも通りの、

駆け出し冒険者。

「どれどれ……」

ロイドは、掲示板を眺める。

「街道整備の確認、

 倉庫の在庫チェック……

 地味なのばっかだな」

「あなた向きじゃない?」

「ひどいな」

そのやり取りのすぐそば。

受付カウンターでは。

「え、えっと……」

「これと……これは……」

ナミが書類を抱えて、

小さく首をかしげていた。

(あぁまた…依頼と依頼先の地図がバラバラだわ)

(…整理し直さなきゃ…)

だが、

それを気に留める者はいない。

ほんの一瞬。

ほんの些細なズレ。

誰にも認識されず、

誰にも指摘されず、

ただ流れていく。


その日の終わり。

ギルドと騎士団は、

またあと一歩が見えないという結論に。

あと一手。

決定打が、見えない。


だが――

歯車は、もう回り始めていた。


この日ロイドが選んだ依頼。

対応したナミが渡した依頼先の地図。

その行き先。

その時間。


ナミの運命のイタズラが発動する!!


運命のイタズラは、

いつも――

“気づかれない形”で始まる。


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