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人間観察オタクの受付嬢

夜のギルドは、静かだった。

酒場の灯りは落ち、

残っているのは書類の匂いと、

遠くで響く足音だけ。

ギルドマスターのバズは、

机に肘をつき、帳簿を整理していた。

「マスター」

声をかけたのは、エリーだった。

「どうした。珍しいな」

「少し……お話があります」

その言葉に、バズは椅子を引いた。

軽い相談ではない。

会議室。

二人きり。

エリーは、迷いなく切り出す。

「このギルドが、うまく回っている理由についてです」

「やり方ではありません」

「人です」

バズは小さく頷いた。

「ルークさん」

「ミラさん」

「そして……マスター、あなた」

「それぞれが、自分の分野で結果を出している」

「これは、生産スキルです」

「本にしか書いていなかった力」

「でも、確かに存在する」

バズは腕を組み、静かに言った。

「……なるほど」


エリーは、思わず口元を緩める。


「それで――」

バズは視線を上げた。

「ナミのことだな?」

エリーの肩が、わずかに揺れる。

「はい」

バズは苦笑した。

「あいつの人を見る目だろ」

「長けてる」

「向いてる仕事も、 割り振りも 大体外さない」

エリーは静かに頷く。

「ですが――」

バズは、はっきり言った。

「ああ、あれはスキルじゃない」

「……ええ」

「ただの趣味だ」

「人間観察オタク」

「魔力反応もない」

「スキル特有の偏りもない」

「集中して、見て、考えてるだけ」

「本人の性格と努力の産物だ」

エリーは、苦笑いをしながら

「さすがですマスター」

「観察眼が鋭いのは事実」

「だが、スキルとして扱うもんじゃない」

「評価して役割を与えたら、

 多分、壊れる」

バズはそう言って、椅子に背を預けた。

「だから、今のままでいい」

「受付で、ドジして、ブツブツ言ってるくらいが丁度いい」

エリーは、深く頷いた。

「ありがとうございます」

「私も、同じ考えです」

(――ここまでは、言っていい)

(でも、それ以上は……)

エリーは、言葉を飲み込んだ。

ナミのスキルはこっち。

《運命のイタズラ(trick of Destiny)》

本人も知らない

それは、

今はまだ、

誰にも知らせてはいけない。

会議室を出ると、

廊下の向こうでナミが掃除をしていた。

「……あれ?」

「えへへ…バケツこぼしちゃった…」


エリーは、その光景を見て、

胸の奥で静かに思った。

(ナミのスキルのことは言わない)

ナミは今日も、

ドジで、無自覚で、

ただの受付嬢。


ーそしてこのあと


王都で最悪の事件が起きる


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