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ギルドスタッフと受付嬢

ギルドの朝は、今日も平和だった。

少なくとも表向きは。

「えっと……この書類、どこに置いたんでしたっけ?」

ナミは受付台の裏で、三枚重なった書類を全部別の場所に置きながら首をかしげていた。

「さっき自分で並べたでしょ」

エリーは即座にツッコむ。

そんなやりとりを横目に、エリーは倉庫の方へ視線を向けた。

最近、どうにも気になることがある。

資材が、減らないのだ。

クエストは増えている。

冒険者の出入りも多い。

普通なら、何かしら不足が出るはずなのに。

「いやー、ちょうどいいんですよね」

倉庫管理を任されている商人のルークは、軽い調子でそう言った。

「次に必要なのはこれです。

 これはしばらく動きません」

彼の判断は、ことごとく当たる。

特別な計算をしている様子もない。

魔法を使っているわけでもない。

ただ、配置と判断が――妙に無駄がない。

「すごいですね!」

ナミが目を輝かせる。

「予言者みたいです!」

「ただの勘ですよ」

エリーは、帳簿を閉じながら心の中で呟いた。

(……これは勘じゃない)

その違和感は、ギルドの裏手でも続いた。

金属音が、一定のリズムで響いている。

武具職人のミラが、新素材の加工をしていた。

本来なら失敗してもおかしくない工程。

それを彼女は、

「んー、なんとなくこうかな?」

そんな曖昧な言葉で、成功させていく。

「また成功……」

エリーは思わず呟く。

ナミは完成した武器を持ち上げ、

「わぁ、きれい……」

と感心した直後、うっかり手を滑らせた。

「危ない!」

ミラは自然な動きで受け止める。

迷いも、焦りもない。

「失敗、怖くないんですか?」

エリーが聞くと、

「失敗する気がしないんですよね」

それは自信ではなく、

事実を述べているだけの声だった。

(商人も、職人も……)

(戦っていないのに、結果を出している)

そして最後は、会議室。

ギルドマスターのバズは、腕を組んで頷いた。

「よし、じゃあこの配置でいこう」

特別な演説はない。

難しい戦術もない。

それなのに、

冒険者は納得し、

商人は準備を始め、

職人は自分の役割を理解している。

意見の衝突が起きる前に、話がまとまっている。

「すごいですね、マスター」

エリーが言うと、

「そうか?」

バズは笑った。

「みんなが優秀なだけだ」

ナミは小声で、

「マスターがいないと、たぶんみんな迷子になりますよ」

と、ドジっ子らしく核心を突いた。

誰も気づいていない。

バズ自身も含めて。

このギルドには、

戦闘とは違う力が確かに存在している。

会議室を出るとき、

ナミはいつも通りつまずいた。

際立って強い冒険者もいない中

やはり別の力で成り立っていることに

エリーだけが確信していく

(結果を出す力は、確かにある)

(ただ……誰も、それを“力”だと思っていないだけ)

ナミは今日も変わらない。

ドジで、無自覚な受付嬢。

けれど世界は、静かに――

確実に、動き始めていた。

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