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学者を目指す妹がいる受付嬢

――私は、ずっと違和感を覚えていた。

この街のギルドは、

特別な冒険者がいるわけでもない。

伝説の武器があるわけでもない。

なのに――

依頼は成功し、

被害は少なく、

街は静かに回っている。

「……お姉ちゃん」

私はカウンターの内側を見つめた。

書類を抱えて、もじもじして、

依頼書を落として慌てて拾っている。

――ナミ。

「す、すみません……」 「こ、こちら……依頼……です……」

冒険者は苦笑い。

「大丈夫かよ」 「まあ、受付だしな」


……誰も、見ていない。

見ていないけれど。


私は知っている。


(順番) (配置) (人の組み合わせ)

お姉ちゃんは、

何も考えていないようで、

“一番噛み合う形”だけを選んでいる。

私は、本を思い出す。

古い学術書。

誰も読まない棚の奥。

そこに書かれていた言葉。

――生産スキル。


戦わないスキル。

作る、整える、つなぐ力。

でも、そのページには

こうも書いてあった。

「評価されなければ、

そのスキルは存在しないも同然である」


(……まさに、今の世界)


商人たちは言う。

「最近、無駄な仕入れが減った」

職人たちは言う。

「納期が正確になった」

冒険者たちは言う。

「事故が減った」

でも誰も、

なぜそうなったのかを考えない。


私は、確信し始めていた。

(この街には、生産スキル持ちがいる)

(しかも、一人や二人じゃない)


でも――


(証明できない)

それが一番の問題だった。

理屈じゃダメ。

感覚でもダメ。

この世界は

結果しか信じない。

「……お姉ちゃん」

「は、はい……?」

私は、できるだけ平静に言った。


「お姉ちゃんはそのままでいてね」


きょとん、とするナミ。

「え……?」


だって。


(世界の方から近づいてきてる)

このギルドに。

この街に。

そして――

お姉ちゃんの周りに。


私がやるべきことは、

はっきりした。


生産スキルは存在する。

それで結果は出せる。

評価されれば、世界は変わる。


その“証明”をする。

それが、私の役目。


お姉ちゃんは、

今日も依頼書を並べ替えながら、

ブツブツ呟いている。

「……これで……」 「大丈夫……かな……」

大丈夫。

世界はもう

お姉ちゃんのイタズラに

引き寄せられている。


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