表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

続 ドジっ子受付嬢

最近、この街では一つの話題で持ちきりだった。

「ここのギルド、最近すごくないか?」 「依頼、全部うまく回ってるよな」

街の酒場でも、商会でも、

話題に上がるのは決まって――

冒険者ギルドの評判だった。

「討伐の成功率、かなり高いですよ」 「怪我人も少ない」

ギルド職員の一人が、

帳簿を見て感心したように言う。

「この前、どこかの街のギルドが

 魔獣に襲われて壊滅したらしいしな」

「それに比べて、うちは安定してる」

冒険者たちも口を揃える。

「依頼の割り振りが、妙にちょうどいい」 「パーティーの相性も悪くない」

「運がいいギルドだよな」

カウンターの内側。

ナミは、いつものように

もじもじしながら立っていた。

「え、えっと……」 「こ、こちらが依頼書です……」

紙を差し出す手が、少し震える。

「ありがとう」 「助かるよ」

そう言われるたびに、

ナミは小さく頭を下げる。

「よ、よかった……」

自分が何をしているのか、

本人は分かっていない。

それを、

少し離れた場所から見ている人物がいた。

妹――エリーだ。

(……また、だ)

依頼を受けた冒険者の組み合わせ。

出発する時間。

向かう場所。

どれも、

“ちょうどよすぎる”。

(偶然にしては……)

エリーは、

ノートを閉じて小さく息を吐いた。

だが、確信はなかった。

証拠もない。

説明もできない。

だから――

ナミには、何も言わない。

「ナミ」 「ちゃんと休憩とってる?」

「ひゃっ!」 「だ、大丈夫……!」

そんな中。

ギルドに、一通の依頼が届く。

難易度――特S級。

街の外れに現れた、

大型魔獣の討伐。

「これは……」 「正直、危険すぎる」

職員たちが、顔を見合わせる。

「失敗すれば、街に被害が出る」 「でも、断れない依頼だ」

「受けるしかないな」

ギルドマスターが、

重く頷いた。

問題は――

誰を行かせるか。

その時。

ナミが、

カウンターの奥で小さく呟いた。

「……あ」 「この人と、この人……」

「……時間、ずらした方が……」

誰にも聞かれない、

いつもの独り言。

結果。

・別件の依頼が前倒しで完了

・偶然、腕利きの冒険者が合流

・天候が急変し、魔獣の動きが鈍る

重なりに重なって――

討伐は、奇跡的な成功を収めた。

「信じられない……」 「被害、ほぼゼロだぞ」

「運が良すぎる」

ギルドは、称賛に包まれる。

「やっぱり、このギルドは違う」 「最近、調子いいよな」

カウンターの内側で。

ナミは、胸を押さえてほっとしていた。

「……こ、怖かった……」 「でも……よかった……」

自分が、

また運命を大きくずらしたことも知らずに。

エリーは、

その背中を見つめていた。

(……やっぱり)

(お姉ちゃんは――)

だが、その言葉は、

まだ胸の内に留めておく。

誰も知らない。

このギルドの“急上昇”が、

一人のドジっ子受付嬢によるものだということを。

そして、

その力が――

まだ、ほんの一部しか使われていないことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ