どこかで見たような気がする受付嬢
崩壊は、止められなかった
混乱の中心にいたのは、
ギルド幹部――グラハムだった。
◆
「冒険者が逃げてるだけだ」
報告書を投げ捨て、
グラハムは吐き捨てる。
「魔獣が増えた? 当たり前だ」 「危険だからこそ、冒険者が必要なんだろう」
◆
部下が、震えながら言う。
「ですが……」 「人員が足りません」
「討伐隊が組めません!」
「なら、残ってる連中で行かせろ」
◆
かつて。
依頼の割り振りに迷いが出た時、
誰かが、根拠のない一言を挟んでいた。
「この組み合わせ、危ないかも……」 「今は、別の依頼を……」
グラハムは、それが嫌いだった。
「感覚で口を出すな」 「仕事の邪魔だ」
そして――
その存在を、切り捨てた。
◆
結果は、数字に出た。
討伐失敗。
負傷者続出。
そして、街の外壁付近で――
魔獣の群れが確認される。
◆
「急げ! 防衛だ!」
だが、集まった冒険者は、
あまりにも少なかった。
◆
戦いは、崩れた。
生きて戻った者は、半数以下。
◆
翌日。
残った冒険者たちは、
無言で街を出た。
「もう無理だ」 「判断が狂ってる」
◆
数日後。
魔獣は、街になだれ込んだ。
ギルドが、
街を守る機能を果たすことは――
二度となかった。
◆
冒険者ギルドは、
その夜を境に消息を絶った。
職員がどうなったのか。
グラハムが生きているのか。
街ごと崩壊したギルドのことは
みんな見て見ぬふりをするしかなかった。
◆
後日。
とある別の街の冒険者ギルド。
受付カウンターの前で、
元あの崩壊したギルドに
所属したことのある冒険者が、
ふと足を止める。
もじもじと立つ、
少し猫背の受付嬢。
「……あれ?」
首を傾げる。
「この子前に……」 「どこかで見たような……」
だが、それ以上は思い出せなかった。
「ま、いいか」
そう言って、依頼書を受け取る。
運命とは、偶然ではなく
起こるべくして起こる
必然のことである




