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追放された受付嬢

「ナミ。君、明日から受付に立たなくていい」

そう言われた瞬間、ナミの頭は真っ白になった。

「…ほえ?」

間の抜けた声が出てしまう。

慌てて口を押さえた拍子に、抱えていた依頼書がばさばさと床に落ちた。

「あっ……! ご、ごめんなさっ……」

しゃがみ込み、必死に拾い集める。

紙の角が指に当たって、ちょっと痛い。

(落ち着いて……落ち着いて……深呼吸……)

受付カウンターの向こうでは、ギルド副長のグラハムが腕を組んでいた。

ため息混じりに、冷たい目を向けてくる。

「そういうところだ」 「……え?」

「君は仕事が遅い。ドジだ。

 それに――ぶつぶつ独り言を言うのは、正直気味が悪い」

胸が、きゅっと縮む。

ナミは無意識に、指先をもじもじと絡めた。

「……あ、あの……その……考え事をすると……」

「クレームも来ている。冒険者からだ」

「ク、クレーム……?」

ナミは目を丸くする。

怒鳴られた覚えはない。

大きな事故も起きていない。

「理由はそれだけじゃない」 グラハムは淡々と言葉を続ける。

「君が担当した依頼、なぜか危険度が偏る」 「……へ?」

「簡単な依頼を受けたはずのパーティが苦戦し、

 無謀に見えた依頼が、なぜか成功する。

 管理ができていない証拠だ」

ナミは唇をきゅっと噛んだ。

(……それは……)

冒険者の癖や性格を見て、

「この人なら大丈夫」「この組み合わせは危ない」

そう思って、少し調整していただけなのに。

「総合的に判断して、君は受付に向いていない」 「……」

「今日限りで受付嬢は解任だ。異論は?」

異論なんて、言えるはずもなかった。

「……ありません……」

声が震えないように、必死で抑えた。

でも、目の奥がじんわり熱くなる。


その日の午後。

ナミは受付カウンターの外から、ホールを見ていた。

新しい受付係は、手際がよく、愛想もいい。

冒険者たちも楽しそうに話している。

(……私、いらなかったんだ……)

そう思いかけた、その時。

「おい、この依頼おかしくないか?」 「このメンバーで行かせるのか?」

少し荒れた声が聞こえる。

ナミは反射的に、依頼書と冒険者たちを見比べた。

(……この三人……相性……悪い……)

小さく、誰にも聞こえない声で呟いてから、はっとする。

(……あ……もう……)

もう、自分は受付嬢じゃない。

ナミは視線を落とし、

胸の前でぎゅっと手を握りしめた。

この日を境に、

このギルドから“噛み合っていた何か”が失われていくことを――

まだ、誰も知らなかった。

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