表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

SideA-2

 両手に色とりどりの花束を持ち、葉桜の下で僕は彼女に想いを伝えた。

 『好きです』のたった四文字を吐きだすことだけに、一体どれだけ悩んだか覚えていない。しかし、告白の日に四つ葉のクローバーを見つけたことだけは覚えている。綺麗に形の整ったクローバーだった。世界は僕を嫌っている、と常々思っていたが、その時ばかりは好かれていると感じた。

 青々と輝く葉桜は、僕を祝福してくれた。

 彼女は花束を手に取ると、にこやかにほほ笑み、ありがとう、と言ってくれた。

 本当に嬉しかった。大声で泣いた。ありがちな表現ではあるけれど、天にも昇る気持だった。

 僕は、人目もはばからずに彼女を抱きしめた。爽やかな五月の風が、僕を、そして彼女を包みこみ、彼女の体温が僕に伝わり、彼女とすべてを共有している気がした。あの時に感じたものは、とても言葉などというものでは表現しきれない。いや、この世に存在する何を使っても不可能だろう。

 永遠の愛。そんな儚く、少し触れれば崩れてしまうようなもので、僕は愛を誓ったと思う。当然、当時はそれを守りきるつもりで口にした。いや、守るべきものだと思っていた。

 紫陽花(あじさい)が咲いても、青い葉が赤に染まっても、そして世界が白く化粧をしても、僕は変わらずに彼女を愛し続けた。何も不満はなかった。あの日見た空がいつまでも変わらぬように、僕の彼女への気持ちもまた、不変のものだった。けれども、それは僕の独りよがりであり、勘違いなのかもしれないとも考えていた。彼女の気持ちは、季節のように移ろいでいる、と。僕は、できるだけそういったことは考えないようにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ