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「部長ー!カレンちゃんは……って何?みんな集まって」
「後で説明する、お前にも関係ある話だからな」
セリナさんが大きな荷物を抱えて部長室に入ってくる。
危険物チェックなどを終えた郵便物や贈答品を受け取ってきたらしい。
招待状などの仕分けをするのに私を探していたのだろう。
「セリナさん!すみません、今行きます」
慌てて荷物を受け取ろうとしたら、ぐいっと手を引かれる。私の手を握ったままのリュート様だ。
「……招待状の仕分け、僕も手伝うって言ったでしょ」
◇
「綺麗な飾り櫛……」
年末の大舞踏会でお会いした豪商のルキウス様から、新年のご挨拶品が贈られてきていた。
「うわぁ、実用的なのに流行押さえててちゃんとオシャレだ……しかも銀細工に紫水晶って、しっかりカレンちゃん向けだし」
セリナさんが感嘆と苦笑の混ざった声を上げる。
確かに、贈られてきたのは一目見て上質だと分かるものだ。紫水晶なのは、おそらく私の瞳をイメージしているのだろう。
「……年末の舞踏会で踊った人?」
「こーら、リュート君。招待状の仕分けサボらないの!はい、戻った戻った」
話を聞いていたリュート様がやってくるが、セリナさんに嗜められる。
「しかしどうしようねぇコレ、明らかに懐柔しにきてるよね」
「そうですね。お返しするのもちょっと角が立ちますし……サロンのご招待状も一緒に頂いてしまったので」
「あぁ、着けて行かなきゃいけないやつだ」
手を動かしながらセリナさんと相談する。
「部長に相談してみます。ルキウス様とは以前紳士倶楽部でお会いになっていたそうなので」
「それが良さそうだね。それにしても社交初の贈り物?それ」
「ふふ、そうですね。でも囲い込みなのがわかりやすいので、かえって良かったのかもしれません。普通に頂いてたら、恐縮してしまったと思うので」
「あはは、カレンちゃんらしいね〜」
話をしながら届いた招待状を出欠席にどんどん仕分け、欠席させて頂く分のお返事をしたためる。
軽い贈答品が必要そうなお相手をリスト化し、何を贈るか候補を整える。
リュート様が、束に分けた封筒の山を持ってくる。
「はい、これで誰宛かの仕分けは終わり」
「ありがとうございます!あとは私がやっておきますので……」
最初の仕分けてに入っていただけたので、だいぶ捗った。やはり事後対応に集中できるのは助かる。
そう思いながら招待状の束を受け取ったが、リュート様はその場から離れない。どうされたんだろう?
「リュート様?もう顧問室にお戻り頂いて大丈夫ですよ?」
「……さっきの人のサロン、行くの?」
ルキウス様の事を気にしていたらしい。
リュート様は幼少期、サロンなどに呼ばれては危険な目に遭ってきた方だ。心配してくださったのだろう。
「そうですね、お伺いする事にはなると思います。ふふ、リュート様の妻の名に恥じないよう、頑張って参りますっ」
――心配をかけないように、負担にならないように。
努めて明るく振る舞うと、リュート様の表情が沈んでしまう。
「え、あ、あの……?」
「あはは、カレンちゃんそれは減点かな〜。可愛く甘えるのも奥さんの仕事だよ」
「えっ!?」
「セリナさんうるさい。でもありがとう」
リュート様が拗ねたようにセリナさんに声をかけた後、改めて私の方を向く。
「カレン、僕はキミを頑張らせるために結婚したんじゃないから」
「は、はい……すみませんでした」
うぅ、どう答えれば良かったんだろう。
あとでセリナさんに教えていただこう……。




