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「ほら、でしょ?流石に物理的に時間足りなすぎ。もう少し分担しようよ」
「で、ですが……」
うぅ、リュート様のお申し出は本当にありがたい。
私の力量では回し切れていないのも事実だし、資産をリュート様ご本人に見て頂けるのは安心だし、正直助かる。
でも、でも……。
「あ、あの、もうちょっとだけ、あと数日だけ自分でやってもよろしいでしょうか?」
「いいけど、なんで?この後忙しくなるだけなんだから、今のうちに分担しようよ」
どうしよう、何て説明しよう。
そう思って悩んでいたら、リュート様がニッコリと笑う。
「隠し事は無し。でいいよね?」
「…………うぅ」
観念して、自机からそっと紙袋を持ってくる。
中には暖色系の毛糸が数種類と、編みかけのブランケット。
「あの…………これを、作り終わるまでは、その、自分で頑張りたくて」
「どうしたのこれ?この忙しさで手編みなんて」
リュート様の少し呆れたような声に、頬が熱くなる。
「と、飛び込み案件が入らなかったら間に合う計算だったんです……」
「間に合うって…………え、これまさか」
穴があったら入りたい……。プレゼントの為に無理したら怒られるって、リーリにも言われてたのに。
プレゼントは手編みのブランケットにしようと決め、セリナさんに仕立て屋さんを紹介していただいた日に街で毛糸も購入し、こっそり編み始めていた。
しかし忙殺された日々により――気付けば、リュート様の誕生日まであと数日。
リュート様に業務をもらって頂いておきながら、空いた時間でプレゼントを手編みするのは少し違う気がして、せめてブランケットが完成するまでは全部自分でやりたかったのだ。
ぽかんとした表情で私を見ていたリュート様は、額を手で押さえ、それはそれは大きな溜息をついた。
「めちゃくちゃ嬉しいけど、キミが無理するのは本意じゃ無いよ」
「はい……すみませんでした」
「さっき言った通り資産管理や招待状対応は僕も手伝うし、業務も今から調整する」
「はい」
「あとそれ、間に合わなくていいからゆっくりやって」
「え?」
すっかり相好を崩したリュート様は、苦笑い半分といった様子だ。
「無理して当日フラフラなキミを見るより、少しでも顔色良くなってくれた方が嬉しい」
「――っ」
「さてと、じゃあカレンが早く家に帰るためにも、業務の方も一旦見直そうか。あ、明日は本当に休んでね」
そのままリュート様は茶器を片付けて業務の打ち合わせに移ろうとする。
「あ、私が……」
「だーめ、僕が片付けてる間に、業務思い出して調整案考えておいて」
頭をポンポンと撫でられ、頬がぽっと温かくなった。
◇
――冬至を過ぎて幾日か経った頃、顧問室を訪れる。
「カレンさん、今いいですか?」
「はい、ウェンさんどうされました?」
数日後に控えている、年末の大舞踏会。
カレンさんの社交デビューについて、ゼフトから伝言を受けたので伝えに来た。
口頭と紙面で必要事項を伝え、カレンさんから確認したいことがないかも聞く。
「ありがとうございました。ゼフトに伝えておきますね。リュート、邪魔してすみませ……おや、どうしたんです?それ」
リュートの肩には、暖色系の毛糸で編まれたブランケットがかかっていた。
話しかけられたリュートは、幸せそうに微笑む。
「ふふ、いいでしょ」




