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24-2

ブノワさんから預かった追跡魔導具の数量や状態を確認し、各班に配ってから部長室に向かう。

扉を開けようとしたら、鍵がかかっていた。

「あれ……?」

「ウェンさんなら小会議室です」


ちょうど隣の部屋から出てきたブノワさんに声を掛けられる。


ブノワさんは追跡魔導具の入った箱を抱えていた。

これからウェンさんの代わりに6~10班に配りに行くのだろう。

「それ、配ってきましょうか?」

「これはすぐ終わりますから大丈夫です。小会議室に行ってください」

「わかりました」

ウェンさんは集中したい時いつもの小会議室に籠ることがあるが、今回もそうらしい。


扉をそっと開くと、ウェンさんが紙の束を読んでいた。

恐らくどこかの班の四半期報告書だろう。

齟齬確認用なのか全班の月次報告書と週次報告書も積まれており、ウェンさんの周りには紙の山が出来ていた。


「カレンさん、どうしました?なにかありましたか?」

ウェンさんは優しい笑みで迎えてくださるが、顔色が悪い。


「お手伝いに来ました。7班の報告書、下読みします」

ウェンさんが力なく笑う。本当に疲れているのだろう。

「……すみません、ありがとうございます。7班……医療魔術は本当に門外漢なので、助かります」


「回復しますか?」

「ありがとうございます。お願いしてもいいですか?」

断りを入れてからウェンさんに触れ、疲労回復系の術式をかけ始めた。弱めの術式を少し長めにかけながら話をする。

「ウェンさんが大変なこと、気付かずすみませんでした」

「いえいえ、ここ数日大変だったのはお互い様でしょう。むしろ新婚なのにゆっくりさせてあげられなくて、申し訳ないです」

「とんでもないです」


疲労が溜まりすぎていて術式の通りが良くない。あとでリュート様の薬草茶を頂いてこよう。

「あの……7班の下読み以外にも、私に出来ることはありますか?」

「ふふ、あんまり引き受けると、カレンさんまで帰れなくなりますよ?」

「大丈夫です!というか、ウェンさんが無理する方がもっと駄目です!

ウェンさんが倒れたら、そのまま軽微な相談事まで全部がリュート様へ雪崩れ込んで、本当にどうしようもなくなります」


リュート様は、それこそ自分の体調より周りの業務を巻き取ることを躊躇わない方だ。

私の言葉にウェンさんがはは、と苦笑する。

「ああ、それは否定できませんねぇ……」


なんとか回復術式をかけ終え、ウェンさんの斜向かいの席に腰掛けると、にこりと微笑む。

「なので、私にできる程度の業務であれば、どんどん回してください!」

「ありがとうございます」



「7班は班長を通すと、本当に書類が綺麗になりますね。下読み終わりました。週報月報との齟齬もないので、部長に一読だけしてもらえれば問題ないと思います」

「受け取ります。ありがとう」

「6班の報告書、4班のとちょっと齟齬あるので、これから班長に確認とってきます」

「確認ありがとうございます。やっぱり班合同案件は統一規格の書式と単位表を用意した方が良さそうですね。ああそうだ、9班と2班が関わっている案件なんですが、規格化の際に国際標準単位と国内単位、両方欲しいそうで。2班側との確認だけお願いします」

「はい、お預かりします。4班と2班に行ったらまた戻ってきますね」

「ありがとう、よろしくお願いします」


ひたすらに、ひたすらに業務をこなす。

――そのまましばらく集中していたら、気が付けば夕方になっていた。


班長達が書いてくれた週報を確認し終えたウェンさんが、顔を上げる。

「カレンさん、そっちの班の週報は大丈夫ですか?」

「はい。もう各班長からの確認と赤入れは返ってきているので、修正してリュート様に見せるだけです」

「だけって……半日仕事ですよ、それ」


ウェンさんの方が知識と経験があるため、出来ることとやっている事は私より遥かに多いが、日々の必須業務は担当班が違うだけでほぼ同じだ。

そのため、業務量もあとどれくらいかかるかもお互い分かってしまう。


ウェンさんの心配そうな視線に、どうやって納得してもらおうかと悩みながら口を開く。

「ええと……いまやってる差戻し依頼書付け終わったら、やります」

「こちらを手伝った後にやっていたら、本気で深夜までかかりますよ?先に自分の仕事をしてください」

「でも……」


言い淀む私に、ウェンさんが優しく笑う。

最初に小会議室に来た時に比べ、大分顔色と表情が良くなった。


「貴女のおかげで大分進みました。ありがとうございます。今日はこれくらいにしましょう」

「あ、あの、明日も手伝わせてくださいね?」

「ありがとうございます、でも、自分の仕事が終わってから来てくださいね?」


小会議室を後にし顧問室に戻ると、リュート様は紙の束片手に丸薬を齧っていた。

「戻りました」

「おかえり。ウェン大丈夫だった?」

「かなり大変そうでした。もう少し業務を頂きたいんですが……」


リュート様が紙の束を私に見せてくる。

「3班と5班から四半期報告来たよ。あと、例の保管庫の調査結果。」

「ありがとうございます!四半期報告書、お預かりします」

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