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22-3

3班長と一緒にブノワさんのところに行き、そのまま追加予算や部長への説明資料の段取りを相談、次に各班情報連携用の統一書式を用意して……と慌ただしく動いていたら、声をかけられた。


「レーン!」

同期であり友人のリーリだ。手を振っている彼女の隣には、研究協力で定期的に技術部を訪れているクルーゼお姉様が立っていた。

お姉様は私に向かって優雅に笑む。


「カレン、ちょうどよかった。もう夕方だし、お仕事終わりよね?」

「お姉様?」

「お父様からお呼び出しです。一緒に家に帰りましょう?」

「……え、い、今ですか!?」

どうしよう、これから作った統一書式を各班に説明して、追加予算の試算と会議の議事録とそれらをとりまとめた報告書と……。


「どうしたの?カレン」

「い、いえ!あの……」


そっと小首をかしげる愛らしいお姉様に、なんと説明しようかと悩む。

相談したくてそっと隣を見たら、お姉様の説得を既に諦めたらしい3班長が、ものすごく遠い目をしていた。



「お姉様、急にどうされたんですか?」


馬車の中、お姉様に声をかける。

結局、この国の聖女たるお姉様の言葉を覆すことは誰にも出来なかった。

リュート様だけは最後まで文句を言っていたけれど、お姉様に「カレンを呼んでいるのはお父様なの。お父様にその文句、一言一句お伝えしていい?」と言われ、舌打ちを返していた。


大きな溜息がお姉様の小さな口から漏れる。

「あのねぇカレン。あの朴念仁の叙爵式、つまりあなた達の入籍予定日まであと2週間しかないのよ。わかっていて?」

「は、はい、わかってますけど……?」


お姉様がさらに呆れたような表情になり、腕を組む。

「あのね。式を挙げないで婚姻証明書に署名するだけなのは別にいいのよ。あなた達が決めたことだし。でも、それにしたって準備があるでしょう、準備が」

「準備といいましても……トゥルペ侯爵家の一室を借りて、サインするだけですよ?」

「知っているわ」


リュート様と相談して、式は挙げないことにした。

例の聖水再現の件で教会との関係が微妙なことやリュート様の軟禁のこともあるが、そもそも着飾るのも注視されるのもあまり得意ではない。

そのため叙爵式でリュート様の外出許可が下りている日に、そのままトゥルペ侯爵家――リュート様の養家の一室をお借りして、婚姻証明書へのサインを済ませてしまおうという話になった。

立会人署名はリュート様の義兄であるレオナルド様と、私の父にお願いすることになっている。


「ちなみにお父様と一緒にわたくしも行きますからね」

「え?」

「式ほどじゃなくても、見届け人に聖女がいれば少しはマシでしょう。とにかく!当日のお話と……私からひとつプレゼントがあるの。今日は付き合いなさい」


用件は理解したが、これは長丁場になるのでは……。

「あ、あの。お話の後、仕事に戻りたいのですが」


私の言葉に、お姉様はにっこりと微笑む。

「ルークも帰ってきてるの。入籍前にゆっくり話せるのは、今日くらいじゃなくて?」

確かに、弟のルークにはしばらく会っていない。

顔を見たのすら年始の魔術競技会以来なので実に10カ月ぶり、話すのは数年ぶりになる。


赤子の頃から面倒を見てきた可愛い弟と会えるというのは、抗えない魅力があった。

「うぅ、ルークとはお話ししたいですけど……」

でも、でも本当に仕事が……!

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