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20-1

「サンビタリアお疲れー!」

「風邪ひかないようにな~」

「はい、お疲れさまでした!」


古い水門の点検用術式の依頼が来ているため、今日は3班4班と市街地の旧区画での実地調査に行っていた。

泥水がかなり底にたまっており、現状確認のために全員泥だらけだ。


さすがにこの格好のまま顧問室に戻って残務処理を行うわけにはいかない。

寮部屋に戻って着替えていると、部屋をノックされた。


「レン!2班の先輩が、薬品洗浄分と一緒に洗濯出してくれるって!」

「わかった!ありがとう!」

声をかけに来たリーリがそのまま扉の外で待ってくれていたので、2人で先輩のもとへ向かう。


「リーリって気遣い屋さんね。教えてくれて本当にありがとう」

そう言って笑いかけると、きょとんとされた。


「そう?私よりレンの方が気遣い屋さんでしょ。上官にご飯持ってくなんて、普通しないよ?」

「うーん、私の場合は、気遣いじゃなくてやりたくてやらせてもらってるからなぁ……」

やっぱり普通じゃないよねと苦笑いを返すと、リーリがケラケラと笑う。


「あはは、そういうところ!だからリュート様も、レンの前だとリラックスしてるんだろうね」

「え……そう?リーリ達と研究について話してる時の方が楽しそうだけど……」


「……え?」


お互いに足を止め、顔を見合わせてしまう。

「……レン、本気で言ってる?」

「うん。……え、どうしたのリーリ?」


リーリの愕然とした表情に慌てていると、リーリが口を開く。

「レンといる時のリュート様って、レンから見たらどんな感じ?」

「えぇと……静か、かな。」


執務室でのリュート様を思い出す。

見てきたのも、思い出すのも、業務に真剣に取り組み机に向かう姿ばかりだ。

「お仕事に集中されてるし」

「世間話とかしないの?」

「本当にたまに、かなぁ。したとしても、リーリ達と話す時みたいな速さじゃなくて、ゆっくり、少しずつお話になるかな」


リーリ達研究者仲間と話す時のような勢いも、ゼフト部長やウェンさんのような旧知の仲の方と話す時のような気安さもない。

本当に静かに、ゆったりとお話になるし、話す内容も他愛もないものばっかりだ。


リーリが呆れたように言う。

「レン、それね。世の中では“安らいでる"って言うんだよ」

「えぇ……?」

そうかなぁ、仕事の片手間に話すから、ああなってるだけだと思うけど……。


そんな話をしていたら、制服を集めている2班の先輩のところに着いた。

私が制服を渡した瞬間、リーリが先輩に話しかける。


「大変です先輩。この子、リュート様に可愛がられてる自覚がないです」

「…………は!?マジで言ってる!?」


愕然としたまま、先輩が私の両肩をガシッと掴む。

可愛がられてる……?補佐官として認めては頂いてるけど……??


そんな事を思っていたら、先輩が神妙な顔で言う。

「サンビタリアちゃん、今度飲み会おいで」

「……飲み会?」

「リュート様から、聖女研究勝ち取ったら夜通し文献読みながら応接スペースで飲んでいいって許可もらってある」


その話を聞いた途端、リーリが目を輝かせる。

「え、なにそれ楽しそう。私も行っていいですか!?」

「おいでおいでー!リーリちゃんも頑張ったもんね!」


「ええと、でも、それって研究職の皆さんを労う会では……?」

おそるおそる聞いてしまう。話を聞いている限り、どうやら聖女研究に関わった人たちの打ち上げのようなものらしい。

事務方でなにもしてない私はお邪魔なのでは……。


「「そこからかー!」」

リーリと先輩が揃って大きな声を出す。


「あのね、差し込み業務地獄の中で、通常業務を粛々と進めてくれてる人がいないと、全てが雪崩れるの、わかる!?」

「レンたち事務方さんがいなかったら、私たちが作業に当てられる時間、どれだけ減ったと思ってるの!」

「え、と……」

「今回は1班・2班の打ち上げだから声かけてないけど、本当は部長側の補佐官だって呼びたいくらいなのにー!」

「ウェンさんたち居なかったら、全員過労死してましたね……」


2人の発言にぽかんとしてしまうが、真剣に言ってくれているのが分かる。


……私、役に立って、た?


研究職でもない、ただの事務方だけど、居てよかったと思ってもらえていたらしい。

意識せずぽろり、と涙が一筋だけ出てしまい驚いたが、先輩とリーリはもっと驚いたらしく、固まってしまった。


「ご、ごめんなさい。ちゃんとお役に立ててたんだって思ったら、安心しちゃって……」

そう言って笑うと、何故かリーリと先輩が真顔になる。


「先輩、リュート様のことぶん殴っていいですか」

「カチコミ行くか~」

「えぇ!?だ、だめですっ!」

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