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18-3

「……なに、どうしたの?」

リュート様から、不思議そうな声が聞こえる。

私から見えるのは後ろ姿だが、お茶を飲んでいらっしゃるようだった。


「……お前……飲めるように、なった、のか?」

レオナルド様の声が掠れていた。

お義兄様なだけあって、リュート様のご事情をご存知だったらしい。普通にお茶を飲んでいるリュート様に、大層驚かれたご様子だ。


言われてようやく、レオナルド様が何に驚かれたのか気付いたらしい。リュート様が答える。

「あぁ、うん」

一瞬、ほんの一瞬だけ、レオナルド様の顔がくしゃり、と泣き笑いのような表情を浮かべ、どっかりとソファに腰を沈める。


「そういう大事なことは……ちゃんと言え」

「……うん、ごめん」


仲の良いご兄弟だったんだな。

そう思いながら、今度こそ仕事に集中した。



しばらくしたら、ウェンさんがレオナルド様を迎えにいらした。

「レオン、お待たせしました。ゼフトがあきました」


ウェンさんとゼフト部長は、リュート様の少年期からのご友人だと聞いていたが、レオナルド様にとっても旧知の間柄のようだ。

レオナルド様はソファから立ち上がり、リュート様に声をかける。

「まったく、部長殿はお忙しいな。じゃあなリュート。また明日来る」

「うん。また明日」


レオナルド様とウェンさんをお見送りして、カップを片付けているとリュート様から声がかかる。

「……大丈夫?兄さんがごめんね」

「とんでもないことです!こちらこそ色々と失礼いたしました」


にこりと笑って伝えたはずなのだが、何故かリュート様は私をじっと見たままだ。

「今だけじゃない。最近のキミ、何かあった?」

「え?」

仰っている意味が分からず、首をかしげる。


仕事で大きなミスもしていないし、体調も悪くない。

リュート様を起こして、朝ごはんを一緒に食べられて、しかもしばらくはお姉様ともお会いできる。

ご心配されるようなこと、何も無いはずなのに……?


私が戸惑っているのが分かったのか、リュート様がそっと視線を外す。

「僕の気のせいなら、まぁ、いいけど」



翌朝、いつものようにサンドイッチをもって顧問室に向かう。

リュート様を起こす前に軽く並べていたら、後ろの扉が開いた。慌てて振り向くと、レオナルド様が目を見開いてこちらを見ている。

「……は?」


昨日は緊張してしまい、あまりうまく立ち回れなかった。

リュート様に恥をかかせないよう、今日こそ頑張らないと……!

「おはようございます。閣下。申し訳ございませんが、リュート様にお声がけしてまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか」


レオナルド様に一礼して、すぐに仮眠室へ向かう。

リュート様はいつもと違う物音に目が覚めてしまったのか、ベッドに寝転んだまま薄く目を開けて、ぼうっとしているようだった。


リュート様は基本的に寝起きがいいので、こういうぼんやりしている状態は珍しい。思わず軽く笑みながら膝をついて枕元に近づき、声をかける。

「おはようございます、リュート様。閣下がおみえですよ」

「……兄さん、きてるの?」

「はい」


「お前ら……」

すぐ後ろから声がする。レオナルド様が何とも言えない顔でこちらを見下ろしていた。

レオナルド様に気づいたリュート様が体を起こす。


「どうしたの兄さん、こんな朝から」

「朝の方がかえって時間を作りやすいかと思って来たんだが……まあいい、用件を言おう」


レオナルド様が頭をガシガシとかきながら話す。

「父上から、お前の様子を見て来いと言われていてな。ゼフトに許可は取った、今日一日邪魔するぞ」

「……父さんも兄さんも、何考えてるの?」

「大したことじゃない。ただ、それ次第で後の話の内容が変わるだけだ。流石に張り付いたりしないから安心しろ。そこの応接机で俺自身の執務をさせてくれればいい」


リュート様が私の方を向く。

「あそこ、使って大丈夫?」

「はい、今日は特に使用予定はございません」

「……兄さん、いても大丈夫?」

「!?っも、もちろんです!!」


想定外の質問に、動揺して心臓が跳ねる。

応接スペースの使用予定については分かるけど、レオナルド様が滞在されることについて、私の意向を確認されるとは思っていなかった。


リュート様は改めてレオナルド様の方を見る。

「うん。じゃあいいよ」

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