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「一応聞くけど、未遂?」
リュート様がぽつりと呟く。下を向いて表情は伺えないが、腕組みしている手に痛々しいほど力が入っていて、驚いてしまった。
お姉様は、途方に暮れたような顔をして、鼻で笑う。
「……未遂じゃなかったら、今頃私は聖女じゃなくて、悪女と呼ばれていたでしょうね」
お姉様の言葉の意味がいまいちよく分からなかったのだが、リュート様には通じたらしい。
大きく息を吐いて、肩の力を抜いていらした。
◇
「取り乱してごめんなさい」
クルーゼお姉様が私からそっと離れると、リュート様の方を向く。
「リュート様も、私の魔力を止めてくださってありがとう」
「……いや……僕の方こそ浅慮なことをした。すまなかった」
リュート様は視線をそらし、少し言い淀む。気まずそうだった。
お姉様はそんなリュート様を見ながらくすくすと笑う。
「本当よ、おかげで今日まで我慢してたのがぜーんぶ、おしまいになっちゃった」
お姉様は文句を言いながらも、晴れやかな顔をしている。
瑠璃色の綺麗な瞳が、改めて私の方を向く。お姉様が私の手をそっと握る。
「お姉様……?」
「カレン、大好き。大好きよ……ずっと、ちゃんと守ってあげられなくて、ごめんねぇっ」
「おねえ、さま……わたしもっ……」
目が熱い。
気が付けば、お姉様の目からも、私の目からも涙が溢れていた。お姉様と手をつなぎ、二人とも泣きながら、応接スペースで話す。
何年もずっと話せなかった時間を埋めるように、たくさん、たくさん話をした。
お互いに泣き過ぎて腫れてしまった目元を治癒魔術で治したら、お姉様がすごいと褒めてくださった。
こんな初歩的な術式で喜んでくださるなんて、なんだかくすぐったい。
「治癒魔術って初めて受けたけど、すごい繊細なのね……」
執務机で仕事を再開していたリュート様が、すかさず口を挟んできた。
「だから言ったでしょ。君より僕の補佐官の方がすごいって」
リュート様のとんでもない発言に驚くが、私より先に姉が口を開く
「あら、貴方は治癒魔術、使えるの?私の魔力を抑え込める程度には貴方も高出力タイプのようだけど?」
「彼女ほどうまくないけど使えるよ。君は、もう少し馬鹿火力に頼らない力の使い方覚えれば」
「馬鹿火力ですって!?さっきまで殊勝な態度だったくせに……」
まるで打ち合わせでしていたかのように言葉の応酬が続くのを見て、ぽかんとしてしまう。
お姉様はやっぱりすごい、リュート様とは数回しか会ったことないはずなのに、もう打ち解けている。
でもそれも、当然かもしれない。だってお二人には共通点が多い。気の合う部分も少なからずあるはずだ。
美しい容姿と桁外れの魔力量、恵まれた才知。歳も同い年のはず。
以前から少し思っていたけれど……やっぱりお姉様とリュート様って、すっごくお似合いなのかもしれない。




