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「カレンさん、来週ご飯食べに行きません?」

リーリが話しかけてくる。

夏の聖女研究発表会まであと3ヶ月ほど。

10班はかなりの追い込みが続いたため、来週、最低どこか一日は必ず定時で上がるよう、部長と班長からお達しがあったらしい。


「嬉しいけど……いいの?帰って休んだほうがいいんじゃない?」

心配になって思わず聞いてしまうと、リーリが微笑みながら緩く首を振る。

「いいんです、むしろ同期二人で一年祝いしたいなって!」


そうか、ここで……リュート様の傍で働き始めて、もう一年経つんだ。



約束の日当日、無事定時で上がれた私が第十研究室に行くと、リーリがニコニコしながら待っていた。


「カレンさん、お着替えしましょ!」

「……えぇ?」

「軍服で街に行くの、ちょっと違うじゃないですか!ほらほら」


そう言うと、研究室の隣にある仮眠室に押し込められる。


何とか着替え終わり、思わずリーリに尋ねる。


「へ、変じゃない……?」

「ぜんっぜん変じゃない!」

リーリが満面の笑みで答える。


ハイネックブラウスに、軍服のパンツ。その上からチュールレースの巻きスカート。

本当はちゃんとしたスカートを勧められたのだけれど、どうしても落ち着かなくて、この折衷案でなんとか許してもらった。


「カレンさん、背が高いから逆に映えますね、かっこいい……!」

褒められているのか一瞬迷うが、ここまで目をキラキラさせてくる友人を前に、必要以上に卑屈になる必要もないだろう。


「……ふふ、エスコートは任せてね?」

腐っても元護衛官。高貴な女性を護衛するために、その辺の心得はある。

くっついてくるリーリと一緒に街に出かけた。



街、といっても魔術院の敷地にほど近い、研究者や軍関係者も多く訪れるエリアに向かう。

個室がある食事処に向かうと、入り口で、魔道具によって灯されている柔らかな光が出迎えてくれた。


「一年お疲れさまでしたー!」

「お疲れ様」

お互いにあまりお酒は得意ではない。そのため飲んでいるのは果実水だ。

一年間どうだった、とか普段の10班の様子、お気に入りの食堂のメニューなど、おしゃべりが続く。


リーリはおしゃべりだが聞き上手でもあるので、気が付くと私もいろいろ話してしまう。

本当に良い子だな、と思う。


「……ねぇ、リーリ、ずっと気になってたんだけど」

「どうしました?」

リーリの明るさに、優しさに甘えて我儘を言ってみる。


「やっぱりそろそろ、敬語やめない……?その、せっかくの同期なんだし」

「……いいの?」

「うん」

「やったーーー!ありがとう!敬語外すタイミング失って困ってた!!」

いつも以上にニコニコと笑うリーリに、思い切って言ってよかったと胸を撫でおろす。


「あ、あの!もしよかったら、その……レンって呼んでいい、ですか?」

リーリからの提案に少し驚いたが、もちろん大歓迎だ。

愛称で呼びたいなんて、人生初なのでとても嬉しい。


それにしても、おそるおそる聞いてきたリーリがあまりに小動物じみていて、可愛くてつい破顔してしまう。

「あははっ、もちろん。嬉しいわ」

「……れ……」

「うん?」

「レンが口開けて笑ったー!可愛いっ!!!」


席を立ったリーリがそのまま腕にしがみついてくる。

そういえば、こんな風に笑ったのなんで幼い頃以来かもしれない。


リーリのような同期を……友人を持てて、本当によかった。

そんなことを考えながら、その日は食事を楽しんだ。


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