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短めのお話2つほど。
あれから半月ほど。
最近はもうすっかり暖かくなってきたな、と欠伸を噛み殺しながら目を覚ます。
春の兆し……というより、もうすっかり春だ。日中は暖かすぎて、軍服の上着を着たままだと暑く感じる日すらある。
いつもの朝の流れをこなし、技術部棟へ向かう。
リュート様は「好きなだけ世話していい」と仰ってくださったが、結局今まで通りで落ち着いている。
流石にがらりと生活を変えてはリュート様も困るだろうし、特に料理は私自身も練習がしたい。
今度、ウェンさんに教えてもらえることになったので、いつか食べてもらえるといいな、と思う。
顧問室について簡単に埃取りや拭き掃除、日報や諸連絡の確認を行って仮眠室の扉をノックする。
返事がないので中に入ると、案の定リュート様はぐっすり眠っていらっしゃった。
また、リュート様の寝顔を見ることができて嬉しい。
冗談抜きにこれだけで生きていける気がする。
相変わらずの端正な顔立ちに、ほう、と感嘆のため息がつい出てしまい、慌てて口を押さえる。
数秒見るだけなら自分で自分を許せたけれど、今のは流石に駄目だろう。
――私がここにいるのは、"補佐官"だからなのに。
これでは、以前リュート様をひどく傷つけた……行儀見習いの女性と何も変わらなくなってしまう。
たとえお慕いしていることがバレていても、絶対に表に出してはいけない。リュート様のご負担になることはしない、ご迷惑をおかけしない。
心の中で何回か唱えてから、リュート様に声をかける。
「おはようございます、リュート様。朝ですよ!」
唱えた甲斐もなく、リュート様を起こすたびに胸が高鳴る。
好きが、積もっていく。
――心で思うだけなら、許されるだろうか?
「おはよ、サンビタリア」
補佐官は私しかいないって、言ってくださった。
そんなリュート様の期待に、信頼に応えたい。
この、毎秒積もっていくような重たい"モノ"を、絶対に表に出してはいけない。
自分に恋愛感情を抱いている人間を傍に置く、それがリュート様にとってどれだけ負担なのか思い出せ。と自分に言い聞かせる。
私が感情を表に出すことは――リュート様からの信頼を裏切ることになる。
心の中で"好き"を必死にすり潰して火にくべる。そうして私は笑顔を作る。
「はい、おはようございます。本日も一日よろしくお願いいたします!」




